第49話【いま再び〝勇者の剣〟を手に取る】

『高二女子・仁科美愛から見える光景』


 剣の柄に手を掛けた瞬間に深い穴の底から響いてくるような人々の声が耳に届いた。


 “驚いた。コイツはこの剣を一度握ったことのある人間だ”

 “我らの仲間になることもなく、なぜまだ生きていられるのか?”


 びっくりして思わず手を放してしまった。

 簡単に手が離れちゃった? そうか地面に刺さっている間は『みーしゃ』だって簡単に手を放していた。でもなんなの? さっきの声は。


「急いで! もうすぐ魔王が来る」すぐ横にいる立体映像のふたり、どちらが喋っているのかよく分からないけどわたしに話しかけてくる。


「分かってる!」

 もう一度剣の柄に手を掛け思いっきり引っ張る。思わず後ろへと倒れそうになる。勢い余った。〝みーしゃ〟が引っ張ってた時はどんなに思いっきり引っ張ってもぜんぜん抜けそうに無かったのにあっさりと地面から抜けてしまった。次の瞬間わたしには見えた。黒い人影がふたり、グラウンドの上にいることに。


「仁科さん?」暗くて顔はよく見えない。けどわたしに届いたその声は聞き覚えのある声。


「水神くんっ、それに魔王……?」

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