第27話【事件発生二十四時間。今日の夜、わたし達はどこへ行こう?】
『高二女子・仁科美愛から見える光景』
昼休みが終わり午後の授業がもう始まるころ。そんな面談室の中、わたしと〝みーしゃ〟は村垣先生から不思議な質問をされていた。
「昨日の昼にふたりでグランドの真ん中にいたか?」と。
先生も確か教室でお弁当を食べていたはずだったけど……答えはもちろんふたりとも「いません」。その昼にグラウンドの真ん中にいた〝二人組の女子〟がいわゆる『重要参考人』ってことらしい。その三時間後くらいにグラウンドの真ん中にいたのが、わたしと〝みーしゃ〟……
もしかしてわたし達が犯人……って疑われた?
「これは事態が進展したと言っていいんだよな?」先生が警官の人に問う。
「もちろんです」警官の人はそう答えた。
「これは先生達に確認する必要のある情報ですからね」さらにそう付け加えた。
「今日の放課後には全てのクラスの結果が出る」先生は言った。
「昨日の昼食の時間に自分が担任を務めるクラスの女子生徒がふたり、教室からいなくなっていないかどうかがね」と警官の人が合わせた。今さっきの不思議な質問を全校生徒にしてみてその二人の正体を突き止めようってことみたい。
「それにしちゃ浮かない顔だな」先生が口にする。
「そりゃそうです。我々が探しているのはここにある奇怪な剣の元の持ち主です。そいつは間違いなく普通じゃない。でもこの学校の生徒というのは言わば普通の人でしょう? だったら該当者ナシというところに落ち着かざるを得なくなるオチです。もっとも何かがこの学校の生徒に化けていれば話しは別ですがね」警官の人が答えた。
「オイ、可能性を一つずつ潰すのも捜査だろうが。確かめなくていいとはしないんだろう?」先生が嗜めた。警官の人は苦笑いをしながら「ですね」と言った。
そういう意味で少しずつは進んでいるのかもしれない。ただ事態を動かす決定的な情報はこの先も得られる雰囲気は無さそう。でも先生によるとこの昼休み、一年二組の教室が蜂の巣をつついたような騒ぎになったというから……ホームルームで何かが分かる?
放課後になった。いや、『なってしまった』って言うのが適当か。
「まいったな」警官の人はたぶん本音を口にしてしまっていた。
これはある意味わたし的には予想通りだった。昨日の昼、『仲良しふたり組の女子(?)』が教室からいなくなっていた、というようなクラスは一つも無かった。欠席者の中にもそうした該当者は存在しなかった。
だけどもっと嫌なことになっている……
警官の人の当初の考え通り何者かがこの学校の生徒に化けていたことがほぼ確定した。ただ不幸中の幸いは生徒のうち誰かがいなくなり、そのいなくなった生徒と何者かが入れ替わっているという類の事件に発展する余地が無いことは明らかになった。
外から侵入した謎の二人がこの学校の制服のようなものを着てこの学校の生徒のふりをしている。
しかしここから後は——?
「どうするんだよ、もう放課後だ」先生が警官の人を詰問する。
「厳密には今日が終わるにはまだまだ間がありますが」警官の人が答えた。
「今夜のことだ! 何日もこんなところに泊まれるか!」
「学校は泊まる所じゃありませんしね。しかし警察署には泊まらせたくないのでしょう?」
「そこで、だ、私に考えがある」
「ぜひ」
「深見を病院で診てもらうんだ。この剣と手を離すことができるかどうか」
ふたりが〝みーしゃ〟の方を見る。
「わたし、切られちゃうのかな」と〝みーしゃ〟が極度に脅えたように言う。人を斬りかねない凶器を手放せないばかりに病院で切られることを怖れていた。
「方向性が違いましたね。つまりこの剣を地面に突き立てた者を探すのは諦めたという風じゃないですか」警官の人は言った。
わたしにはなにも良い考えが浮かばない。できることはただ黙って〝みーしゃ〟の傍に座り続けていることだけ。時計を見上げる。今さら後悔しても遅い。二十四時間が経とうとしていた。
あれから一日なんだ。昨日、あんな事してなければ……
日がどんどん低くなり夕方を臭わせる光線に。
今夜、わたし達はどこへ行くんだろう……膠着状態のまま時間だけが流れ続ける。
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