第2話【放課後、用が無いんだからわたしは学校から帰る】

 仁科美愛は呆れていた。呆れながら家路を急いでいた。




『高二女子・仁科美愛(にしな・みあ)から見える光景』


 帰りながら自己嫌悪。少ない——というか唯一の友だちにどこまでつき合うか、という問題を抱えさせられた。


 そのわたしの唯一の友だちは、わたしの言うことになかなか耳を貸さず好きなことだけをして生きている。だからわたしに声を掛けてくれたことも好きでそうしてくれたと想えるのだけど。

 けどつき合いきれないことも平気でやる。わたしの忠告なんてどこ吹く風。そうした感情がわたしを速く歩かせているのかも——


 まったく何が『見て見てーグランドに爪楊枝』だか。まったく今年いったい何歳なのっ?

 それはきっと誰かのいたずらなんだろう。グランドに変なもの突き刺して。

 そんなものを面白がって『引き抜こう』なんて。

 その様子をその誰かが隠れて見てたりして動画を撮られていたりして笑い物にされていたりしたらどうするの⁉

 そう言っても〝みーしゃ〟にはまるで効かなかった。


 だいたいあんな誰が触ったのか分からないようなものを『文化祭の小道具として使えるよ』なんて言うなんて。いつまで子どもみたいなこと続けるつもりなの?


 だけどあんな物を先に見つけちゃったのはわたし。なんでわたしがあれを見つけちゃったんだろう? まっすぐ校門へと歩いていたらグランドのことなんて分かるはずなかったのに。

 それを見た瞬間に感じた。一刻も早くそこを離れなければという音の無い声が追ってくるような。とても嫌な予感がしてるのに〝みーしゃ〟って鈍感なの?

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