其の二、パラレルを制せ!

 前述の通り、もう一つ、初心者における壁といえば前述した「パラレル問題」だ。

 それがパラレル問題だと気づけても、結局何を答えるのか聞いてしまっていては、経験者には勝てない。

 パラレルとは、「何が対比され、何を答えるのか」その究極系だと思っている。

 ここでは、そんな「パラレルの極意」を「自称パラレルマスター」の私が伝授しよう。



 0.パラレルの見分け方

 パラレルの極意を教える前に、パラレル問題の見分け方を教えよう。

 まず、読み合わせ形式(人が問題を読む形式)なら、対比する部分にアクセントがつくので、それさえ知っていれば明白だ。

「世界で一番⤴︎高い山は〜」と読まれたら、二番目に高いK2と回答すれば良いのだから。


 しかし、文章形式ならどうだろう。

 アクセントは目に見えない。

 そんな時は、問題の「アタマの形」で判断しよう。

 アタマは私が勝手に命名したのだが、問の一番最初の導入部分のこと。その「形」つまり語順や助詞でパラレルか否かが決まると言っても過言ではない。


「サッカーの一チームの人数は何人でしょう?」


「サッカーは、一チーム11人で行いますが、フットサルは、一チーム何人で行うでしょう?」


 この二つの問題。

 聞きたいものが違うので、問題文の助詞や語順が変わっていることに気がつくだろうか?

 この主語に着く格助詞の「は」がかなり重要なのだ。

 上の場合、サッカーの一チームの人数「は」と聞いているので、サッカーそのものというより、サッカーの一チームの人数が重要であるとわかるので、そのまま答えれば良い。

 下の場合、サッカー「は」と聞いているので、サッカーであることが重要だと聞いている。

 ここで大切なのが、サッカーを強調したのだからサッカー以外を聞くのだろうと考えることだ。

 そうなれば、サッカーと対比されるスポーツといえばもちろんフットサルなので、フットサルの一チームの人数を答えれば良い。


 これによって、下の問題を「サッカーは、一チーム/」で押し、5人と答えることができるというカラクリである。



 1.「一番」と、「最も」

 パラレルが区別できたら、次は何を対比するかの読みが大切。そこで、まずはこちらから。

 パラレルの基本中の基本だ。


 ここである例を見てみよう。

「日本で、一番高い山は/

「日本で、最も高い山は/」

 /は、そこでボタンが押されたことを示す記号。ここで、一度答えを考えてみて欲しい。

 ここまで読んでいれば、答えが富士山でないことは何となく察しがつくだろう。

(答えが富士山の場合は、「日本では最も標高の高い、静岡県と山梨県にまたがる山は何でしょう?」という具合に、山という言葉がかなり後半に出てくることが多い)


 答えは、上が「北岳」

 下が「弁天山」だ。

(下は正確な定義がないので、基本は聞かれない)

 北岳は日本で2番目に高い山、弁天山は日本で最も低いとされている山だ。

 勘のいい人ならもう分かっただろう。


 2番目を聞くときはフリ(〜ですがの前の部分)が「一番」で最も低いものを聞くときはフリが「最も」なのだ。

 つまり、「順番」が対比されるか、「程度」が対比されるかで答えは異なってくるのだ。


 では、練習問題。但し、答えが分からなくても、何を聞いているのかがあっていれば正解として良いだろう。


「アルファベットで、一番始/」

「アルファベットで、最初/」








 答え:

 上がB(2番目)

 下がZ(一番最後)



 正解できただろうか?


 参考までに言っておくが、答えがAの場合は、「アルファベットの〜」もしくは「アルファベットでは〜」というアタマになる。

「〜で、」というのも重要な助詞で、この場合「アルファベットという枠組みの中で質問しますよ〜」というニュアンスを含んでいるので、単純に一番始めの文字を聞くという可能性は考えにくいというのが伝わるだろうか?


 では、第二問


「現存の哺乳類で、最も大きい/」

「世界で一番大きな哺乳類は/」

「世界一大きな哺乳類で、/」












 答え:

 上がキティブタバナコウモリ(世界最小とギネスに登録されている哺乳類)。


 真ん中がナガスクジラ(二番めに大きい哺乳類)。


 下がシロナガスクジラ(パラレルではない)



 これが正解できたら、このパートは完璧だ。

 パラレルマスターに一歩近づいたな。




 2.フリの言葉に注目せよ

 パラレルのもう一つのパターンがこんな問題だ。

「英語で、『dragonfly』といえば、トンボのことですが、『firefly』といえば何でしょう?」

 これは、私が最も好きな問題の一つだ。

 美しい。


 答えはホタルなのだが、「〜fly」、さらには虫であるという部分で見事に対比がなされている。

 さらにいうと、ドラゴンとファイアも何となくイメージが近い部分があり、とても良くできた美しすぎる問題だ。


 このパートでは、このような言葉遊び的な観点から作られたパラレルについてまとめていく。


 例えば、

「日本の都道府県で、『茨城市』があるのは、茨城県ですが、『茨木市』があるのはどこでしょう?」


 この問題文には三つのポイントがある。


 まず一つ目は、前述した助詞の「〜で、」だ。これによって十中八九パラレルであると判断できる。


 二つ目は、茨城市。茨城市が茨城県にあるのは、小学生にでも想像できるほどかなり自明だ。

 つまり、それをわざわざ問いにはしないので、茨城市ではないどこかを聞いてくるのだと分かる。


 そして三つ目は、茨城市とよく名前の似た茨木市があるということ。

 これは問題のポイントではない気もするが、茨城市でないなら何を聞くのだろうと考えた際に、茨木市が頭に浮かぶ。

 そうすれば、『茨城市』が読まれた段階で、『大阪府』と答えることができる。


 つまり、似た言葉や対比されるもの、連想されるものを探せば自ずと答えは見えてくるのだ。


 とりあえず、練習問題。こういうのは慣れが大事。


「漢字で、『海豚』といえば/」










 答え:フグ(河豚)

 これは海と河を対比させた問題。

 あの段階で押すのはかなりリスキーだが大体フグが正解だ。

 別解としては「海馬」と書くタツノオトシゴやセイウチなどもあるが、これでは回答が一つにならないので、少しナンセンス。ただし、発想は及第点だ。

「海猫」や、「海牛」と答えた人はもう少し頭を柔らかくしよう。かなりナンセンスだ。



 第二問


「ルパン三世を追いかけるのは/」












 答え:ガニマール警部(ルブランの小説『アルセーヌ・ルパン』シリーズで、主人公のアルセーヌ・ルパンを追いかけるキャラクター)


 これが分かったらもう何も言うことはない。

 天才的なセンスの持ち主だ。

 ルパン三世がアルセーヌ・ルパンの子孫だと知っているかどうかにも関わっている。


 ついでに、「ルパン三世を追いかけるのは〜」というように固有名詞に対して何の説明もなされていないまま問題が進むということもパラレルの特徴なので、覚えておくと良い。


 それでは、次が最後のパートだ。


 3.パラレルにならないパターン

 ここまでは、「こういう問題はパラレルの可能性が高い」という例を挙げたが、最後に「こういう問題はパラレルではない」という例を挙げよう。


 まずは、前述したことの逆説だが、「アタマが長い」または「アタマが説明文」の問題だ。

 例えば、先程の問題だと

「日本のアニメ『ルパン三世』で、主人公のルパンを追いかける/」

 という形だったとする。


 この場合、アタマは『ルパン三世』という固有名詞に対する「日本のアニメ」という説明や、その主人公がルパンであるということなど、『ルパン三世』に関する詳細が書かれている。

 このようにアタマが長かったり、説明的なものはパラレルではないと言える。

 理由としては、純粋に美しくないからだ。


 例えば、その問題がパラレルだったとしたならこんな問題文になる。


「日本のアニメ『ルパン三世』で、主人公のルパンを追いかけるのは銭形警部ですが、ルブランの小説『アルセーヌ・ルパン』シリーズで、主人公のルパンを追いかけるのは誰でしょう?」


 長ったらしく、非常にややこしい問題だ。読み合いでこんなものが出たら会場中が大パニックである。

 クイズの文章は可能な限り、簡素でなおかつ限りなく唯一の答えが出るというセオリーで成り立つ。

 つまり、それを逆手に取れば、このようなアタマの大きな問題はパラレルに出来ないのだ。


 そして、もう一つのパターンが、「ズバリ」というアタマを持つ問題だ。


 最も有名なのがこれ

「ズバリ、パンダの尻尾は何色でしょう?」

 2択というのはクイズプレイヤーにおける最大の難問なのだが、答えはズバリ、白である。


 ズバリ、というアタマにはストレートな出題が不可欠だ。

「ズバリ、〇〇は△△ですが、□□は何でしょう?」

 という問題文には、少し違和感というか矛盾を感じていただけるだろう。


 以上でパラレルの極意は終了だ。

 ご苦労だった。

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