8-2 Objective evaluation【客観的な評価】
数週間後、冬休みの直前になって、模擬試験の結果が返ってきた。
教室でもらった模擬試験の結果を僕達はすぐに開かずに、放課後、マンガ研究部の部室で見せ合うことにしていた。
普段のマンガ研究部の活動は、マンガを読ことが中心で、たまに舞弥とジェシーがお互いのマンガ観をぶつけ合うというなんとものんびりしたものであった。
そんな活動で学校から許されるのかと疑問に思ったが、昔からある部活だし、部誌を定期的に出すくらいでなんとか認めてもらっているようだ。
今日のマンガ研究部はといえば、舞弥とジェシーは特に僕達のことを気にせずにマンガを読みふけっているなか、向かいあって座る僕と翔の間には、ピリピリとした緊張感が張りつめる。
「じゃあ、いっしょに開くぞ」
僕と翔は同時に模擬試験の結果を開く。
僕の英語の偏差値は67であった。
今までは偏差値50を越えることすらなかったから、それから比べると大躍進である。目標の偏差値70を越えることはできなかったが、十分な成果だろう。
今まで、英語を勉強している中で、英語の力が付いてきているという自信はあったが、こうして明確な数値で見ると、そのことを客観的に把握できるし、より自信もつく。
「それで、譲二はどうだったんだ?」
僕と同様に英語の成績を確認した翔だが、その出来は表情からはわからない。
「なんだよ、翔から言えよ」
「じゃあ、一緒に見せるか」
「OK」
お互いに成績表を交換しあって、確認した翔の英語の偏差値は70であった。
「よっし、俺の勝ちだな」
僕の偏差値68を確認した翔は、にんまりと笑って勝ち誇る。
「ちぇっ、でも、大した差じゃないだろう」
「勝ちは勝ちだよ」
「むかつくなぁ」
僕と違って、元々偏差値60くらいはあった翔とはスタート地点が違うから勝つのは難しかったのかもしれないが、やっぱり悔しい。
「二人とも楽しそうに競いあってるねぇ……。ふひひ……」
僕達の様子を見て、舞弥はなにやら含みのある笑顔を見せる。元々、洋書を読みこなす舞弥の英語の出来は翔よりもさらにいい。舞弥も僕らより英語の点数が高いことがうれしいのだろうか? でも、あの意味深な含み笑いの意味はそれだけではないような気もする。
ちなみに、舞弥は国語もかなり出来がいい。ただし、数学は悲惨な点数を叩き出している。
「日本人にはあんなものでも難しいんですね」
あんなもの呼ばわりするジェシーの英語はといえば、ほぼ満点である。英語のネイティブスピーカーにはその試験はよほど簡単だったらしく、間違えたのも漢字のミスがあったくらいで、英語という意味では実質満点だ。ただし、国語の点数は壊滅的であった。
「じゃあ、明日の昼はラーメン奢れよ」
あわよくば、そのことを翔が忘れていることを期待したが、当然のように念を押されてしまう。
「はいはい。わかったよ」
結果的に、翔に負けてしまったわけだが、過去の自分との比較で言えば、英語の偏差値の推移グラフは、驚くほどの急上昇カーブを描いていており、ラーメン一杯くらいは喜んでおごってやろうという気にもなった。
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