Chapter7 全ての単語はママに通ず

7-1 Vocabulary quiz【単語テスト】

 英語の授業で毎回のようにある英単語のミニテストで、僕とジェシーは点数を比べあっていた。ジェシーにとっては出てくる英単語は当然のように全部知っているものだったが、日本語の意味や漢字のほうが難しいからいい勝負になる。


「うーん、難しい単語ばっかりですね。今回は八点かあ」


「やった! 勝った! 僕は十点!」


 席は隣同士の為、僕はジェシーとお互いのテストを採点しあう。


「譲二の採点はとっても厳しいです。また漢字のミスですか」


 ジェシーの回答はほとんど合っていたのだが、微妙な漢字のミスを僕は指摘した。ジェシーは漢字が苦手だから、これもジェシーの為を思ってのことである。


「この前はちょっとのスペルミスで減点されたんだからお互い様だよ」


「いや、譲二はスペルを厳しく採点するように言いました。でも、私はそんな厳しい採点はお願いしていません。良い点が取りたいですし、少しくらいはオマケしませんか?」


「ダメダメ、日本人だって、こういう細かい点を指摘されながら漢字を覚えるんだからね」


「しょうがないですね……」


 ジェシーは悪態をつきながらも、しっかりとその漢字をノートに書き写していた。


*  *  *


「単語テストはずいぶん調子がいいみたいだな」


 英語の授業が終わって、昼休み、いつものように翔とラーメンを食べていると、自然と今日の英語の授業の話になる。


「別にやろうと思えば、大したことないものだしね。翔はどうなんだよ?」


 翔といえば学校の成績は文句無しというレベルで、単語テストの点数なんか聞くまでもないものだとは思うが、翔の言葉に合わせて聞いてみる。


「俺? 俺は五点だった」


「は?」


 僕はその点数は聞き間違いだろうと思わず聞き返してしまう。


「五点? 点数低すぎない?」


 英単語のミニテストは毎回授業の始めに十問を解く十点満点のテストだ。範囲もかなり限定されているため、ちょっと勉強していれば十点満点も難しくない。翔は元より成績優秀であり、このぐらいの単語テストは満点が当たり前というレベルで、いつもの翔の成績から考えると五点というのはありえない低さだ。


「そうだな」


 翔はあっけからんに言う。


「そうだな……って、せっかく英語を勉強しはじめたのにやる気あるのかよ。こうして、英語の勉強を始める前でもそれくらいとれてたぞ」


 単語テストの範囲は非常に狭く、以前の僕の付け焼刃の勉強でもそれなりの点はとれた。他にも文法や会話表現など覚えなきゃいけないことがたくさんあるのは確かだが、単語を覚えていなければどれも話にもならない。


「突き詰めて考えると、単語テストに意味があるのかって話だよ」

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