6-4 Manga society【マンガ研究部】

 週明けの放課後、ラーメン屋で約束していた通りに、ジェシーを連れて僕はマンガ研究部を訪れていた。


「ここがマンガ研究部の部室ですか……。なんだか、ドキドキしますね」


「ジェシーちゃんってマンガが好きだったんだね……」


 そこには、翔も同行している。翔には、僕とジェシーだけでもいいと言ったのだが、なぜか自分もついていくと譲らなかった。


「ショウくんは知らなかったですか? 自己紹介の時にも言ったはずですよ」


 ジェシーがちょっとむっとした表情で翔に当たる。僕の家に来た時からそうだが、ジェシーの日本観的には、日本男子はマンガが好きなのは当たり前だと思っているようで、翔がマンガについて無頓着なことに気を損ねる。


「そうだったっけ? ごめん、よく覚えてなくて」


 家でも毎日ジェシーと接している僕からすれば、ジェシーがマンガを好きなのは当たり前のことであるが、学校でしかジェシーと会っていない翔からすれば意外な一面だろう。


 まず自己紹介の時点では、日本の一般的な高校では奇抜とすらいえる容姿端麗さが目を引いただろうし、その後の学校の活動を見ても、国語(日本語)の致命的な弱さを除けば頭脳明晰、あらゆる運動部に勧誘されるスポーツ万能さだけが目を引く。

 

 自己紹介を聞いていなければ、ジェシーがオタク気質を持つことを夢にも思わないだろう。


「そうですか……、ちょっと残念です」


 学校では見えづらい一面ではあるが、そのオタク的な面こそジェシーがもっとも他の人にも知ってほしいところなのだろう。


「いや、でもマンガが好きなのはいいことだと思うよ! しかも、それがきっかけで日本語ができるようになるなんてすごいじゃん! そのジェシーの姿に感銘を受けたから、俺だってここに着いてきたんだしさ」


 ジェシーの一言を受けて、翔は必要以上に強く自己弁明をする。ジェシーは本気で怒っているわけじゃないし、翔もそこまで焦る必要はないのだろうと思う。


 なんとなく、この翔のジェシーに対する態度の違和感は、愛がジェシーといる時に不機嫌になるものと似ている気がする。


 僕らは外国人とのコミュニケーションは不慣れだし、いろいろと気を使うのだろう。


「それは……、どうもありがとうございます」


 ジェシーはいつも通りに丁寧にお礼を言う。


「ええっと……、じゃあノックするよ」


 部室棟で、これ以上おしゃべりしていたら他の部活から苦情が出てきそうだし、今日の本題であるマンガ研究部の戸を叩く。

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