Chapter4 金欠サバイバル

4-1 English books【英語の本】

 登校初日でもあったし、放課後はジェシーと一緒に帰る予定になっていたのだが、ジェシーはあらゆる部活動からの激しい勧誘にあっていた。


 ジェシーの運動神経の良さはあのバスケットボールの授業からあっという間に全校中に広まっていたようだ。


 各運動部は互いに一歩も譲らず、ジェシーに決断を促してもどうせならいろいろ見てみたいと言うもので、最終的に各部代表のじゃんけんの激闘の末に、ジェシーはバレー部の体験をすることになった。


 僕は、ジェシーが帰り道を分かるか心配だから残ると言ったのだが、女子達が「私達が送るから大丈夫」と言うので、何も用事が無いのに学校に残るわけにもいかず帰ることになった。


 どうやら、ジェシーファンクラブは、初日から男子だけでなく女子にも会員を増やしているらしい。


 ということで他にやることもないし、英語を本気で勉強することを決めたら、善は急げと、僕と翔は近くにある大きな書店まで来ていた。


 そこには、英語そのもので書かれた洋書から、英語関連の雑誌、英語に関するハウツー本や啓発本、参考書や問題集と種類は様々あり、その対象も高校生や中学生の学生向けの本はもちろん、社会人向けの本から、まだ日本語もおぼつかない幼児向けの本まで実に様々だ。


 本屋を一通り見て回った後、僕らは高校の英語の参考書のコーナーの前にいた。そこなら本の種類も多かったし、何より現在進行形でやっているところなのだから、本も選びやすいかと思ったがなかなかそうもいかなかった。


「山ほど、本があるな……」


 僕はその本の量にただ圧倒される。


「ほんとにそうだな……」


 翔は本棚から適当にとった本をパラパラとめくりながら呟く。ページに目が向いてはいるが、そこまで集中的に読んでいるようには見えない。


 あまりに大量にある本にどれをとればいいのかすら分からない。一応、学生の身分として参考書の物色をした経験はあったが、ここまで明確な目的を持って、本を見に来たのは初めてだ。


 いくつかの参考書を組み合わせて、それを効果的に使用することができれば、英語ができるようになる道はあるのだろうが、その正解の道はさっぱりわからない。


「翔は、どれを選べばいいと思う?」


 とはいえ、ずっと本棚とにらめっこをしていても埒があかないから、僕も翔と同様に、適当に目についた本を手に取りながら、翔の意見を求める。


「全くわからん」


 勉強が結構できて、英語の成績もそれなりにはよい翔ですら、大した見当はつかないらしい。

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