Chapter3 じゃあ、半年で英語やってみるか!
3-1 School uniform【制服】
翌朝、夏休みが明けて、最初の登校日である。
ということは、ジェシーも高校に行くわけで、制服を用意しないといけない。一体、昨日の今日で高校の制服なんてどう準備したらいいんだよと思っていたが、ジェシーの制服はご丁寧になことに、ジェシーの部屋の洋服ダンスの中に既に用意してあった。
サイズもぴったりで、両親が帰郷していた時に準備していたものだったらしい。そんなものを準備する暇があるのなら、僕と愛にもジェシーのことを伝えておけと思ったが、そんなことを今更蒸し返してもどうしようもない。
制服はあっても、さすがにその着方はジェシーには分からなかった為、愛が着替えを手伝ってあげていた。僕は既に制服に着替え終わって、ジェシー達を待っているところだ。ジェシー達が着替えに行ってから十分程経って居間のトビラが開く。
楽しそうに金色のポニーテールを振りかざすジェシーが、勢いよく居間に入ってくる。
「師匠、私の制服姿、どうですか? 」
ジェシーは僕を見るなりクルリと回って、その制服を見せびらかし、僕の感想を求めてきた。
「すごく……、かわいいよ……」
昨日見た私服姿も、パジャマ姿もよかったが、ジェシーの制服姿もこれまたよい。これだけの美人であるのだから、何を着ても似合うだろうおと思っていたが、想像以上であった。
夏服ということで上は白いシャツ一枚であったが、白いシャツにジェシーの白い肌と明るい金髪はよく映える。お互いの明るさが相乗効果をもってより高め合い、輝きあっているようだ。ゆるく絞められたネクタイが、大きな二つのおっぱいの中心に垂れ下がり、影を作って、その膨らみをより強調する。
心なしかポニーテールも昨日よりびっしり決まっているように見える。
メガネは、今日は掛けていない。おそらく、愛がつけないように言ったのだろう。
学校に行けば同じ制服を着ている女の子はいくらでもいるし、見慣れているはずなのに、ジェシーが着ればこうまで違うのかと驚きを隠せない。
「うーん、憧れの制服姿。日本に来た甲斐がありました……」
ジェシーも、自分自身の制服姿に満足しているようで、目にうっすら涙を浮かべて感動している。アメリカのほとんどの学校は私服だと思うし、ジェシーもおそらくはそうだったのだろうと思うけど、ここまで制服に感動されるとなんだか面白く思えてしまう 。
「お兄、何見惚れているの?」
ジェシーの後ろから出てきた愛が僕のことをじとっした目で見つめる。愛も中学校の制服に着替えていたが、こちらは見慣れた姿だったし、特にどうということもない。
「いや、見惚れているとかじゃなくて、女の子の容姿を褒めるのは社交辞令としてですね……」
まさか、「この服装がどうですか?」と言われて、「ダメですね」と返すわけにもいくまい。
「私がお兄と何年付き合っていると思っているの? そのでれっとした表情を見れば、お兄の考えることなんかなんだって分かるんだからね!」
「うぐっ」
社交辞令的なところもあったとはいえ、そういう邪な気持ちのほうがはるかに大きかったことは間違いなく、僕は愛に何も言い返すことはできない。
「ジェシーもあまりいい気にならないことね……。お兄は、金髪の洋物、巨乳物、ロリ物、JK物、メガネ物辺りが趣味なんだからね……! あんたなんか、あんたなんか……」
愛は、ジェシーのことを責めようとしていたはずが、その言葉はすぐに尻すぼみになってしまう。愛の目の前にいるジェシーは、まさに、金髪で、巨乳で、ロリで、JKで、今は掛けていないがメガネであったから、まさに愛の言葉通りであった。
一方の愛は、黒髪で、貧乳で、中学生のわりに大人っぽく、JCで、メガネは掛けていない。
「というか、なんで、愛がそんなことを知っているんだよ?」
大体の僕の秘蔵のコレクションを抑えた愛の物言いではあったが、普段は真面目で下ネタみたいな話は絶対にしな愛が堂々と僕のコレクションの話をしだしたことに気が動転してしまう。
「私はお兄のことならなんでも知っています!」
「なんでも知っているの!?」
その類の隠し場所は、誰にも見つからないように細心の注意を払っていたはずなのに、どうして愛には知られているのかさっぱりわからない。しかし、そのコレクションの傾向はぴたりと当たっているわけで、愛には全てを見透かされるような気分になる。
「大体、なんでJK物なの? JC物にしときなさいよ」
「いや、JC物のほうが、JK物よりまずいでしょう」
「お兄は、JKと同世代だから、JK物じゃ普通すぎるじゃん。若い子がいいって思うのなら、お兄から見たらJC物を好まないとおかしいでしょう?」
「いや、どっちもダメだろ」
JK物を持っている身としては矛盾していること甚だしいが、愛には変な考えを持ってほしくない。
「ああ、もう! うるさいわね。とにかくJC物がいいの!」
なぜ、愛はそこまでJC物にこだわるのだろうか? 昨日に続いて、愛の様子は普段と違って、僕もどうしたらいいのかわからない。
愛がこう言うのならJC物を手に入れて来ればいいと思うかもしれないが、めったにそんなものは手に入らない。その上、JC物を手に入れればそれでよしとも限らないのだ。
愛もしっかりしているようで、女の子であるから感情的に動くところがある。だから、この怒りは何かしらの感情をぶつける行為であるところまでは、長い付き合いである僕は分かるのだが、一体何が愛の感情に火を付けているのかがさっぱりわからない。
「うーん、オレがベッドの下を見た時には、何も見つからなかったのに、どこにあったのでしょう? 」
ジェシーは日本語の特殊ワード達には、特に触れることはなく、何故かそのことに不満げである。
「ぽっと出のあんたが、私よりお兄のことを知っているわけがないでしょう?」
そして、愛は何故か得意気である。
「ジェシー、オレじゃなくてワタシ!」
昨日のことがあったから、僕はジェシーの一人称が気に掛かる。
「師匠も厳しいですね。学校ではワタシってちゃんと使います」
ジェシーはそう言うが、今からの学校のことが早くも心配になる。
「とにかく、それら一つ一つがよくても、全部突っ込んだらゲテモノと一緒。それぞれがおいしくても、牛親子ネギトロうなカツカレー海鮮天丼なんか誰も食べないでしょう?」
ジェシーに話しかけると、今度は愛が割り込んでくる。投稿初日のジェシーもそうだが、この豹変ぶりを見ると、愛のことも心配になってくる。
「ワタシにはそれもおいしそうに思えますけどね……」
ジェシーの一人称が『ワタシ』に変わったことにはほっとするが、それをおいしそうだというジェシーの感性には耳を疑う。僕からしても暗号みたいに聞こえた料理名をジェシーがちゃんと把握したのかも定かでない。
「へえ? なら、今日の夕飯はそのスペシャル丼にしてあげようか?」
愛もそのジェシーの言葉に乗ってくるとは思っていなかった。
いくら、愛の料理の腕がよくても牛親子なんとかかんとか天丼では収拾がつくとは思えない。
「いいですよ。愛の作ったお味噌汁も茶碗蒸しも今日の朝ご飯も最高でした。今日の夜も楽しみですね」
ジェシーが愛の料理の腕を過大評価しているのか、日本っぽさがあればなんでもよく思ってしまうのか僕には分からない。
「いや、でもそれは……」
しかし、愛がそんなものを作ってしまったら僕もそれの犠牲者になってしまうわけで、異議を唱えようとする。
「そんなに心配しないでも大丈夫ですよ。愛が作る夕飯なら何も問題はありません」
それでも、ジェシーがあまりに自信満々に言うので、それ以上の否定の言葉は出せなかった。
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