第79話

「そうか、そんな態度をあの子は取ったのか」


 麻貴の話を聞いたトニー(創業者・ジョンの祖父)は笑いながら言った。


「あいつは、ミス・マキに出会ってから、どんどん人間らしくなっていくな。それで、ミス・マキは、なんとかその友達に協力してあげたいのだね?」

「ええ、彼らがやろうとしていることは、意義のあることだから…」

「ミス・マキは本当にいいお嬢さんだ…。だが残念ながら、わしも引退した身だから、会社のことで息子や孫に命令することはできないね」

「そうですか…」

「しかし、孫のジョンを説得する方法なら教えられないこともないが…」

「ぜひ、教えてください」

「それは、ミス・マキに一役買ってもらわなけれはならないよ。昔、妻に学校を建てるカネを出せと言われたことがある。そんなことに金は出せないと断ると、この方法でこのわしからまんまと金を引き出しおった。しかも、その学校にはわしではなく妻の名前がついておる…」


 麻貴は思わず噴き出した。


「はい、私のできることでしたらなんでもします」

「質問なしで、わしの言うとおりにできるかい?」

「はい、信頼しています。」

「ならば、早速準備に取り掛かろう」


 トニーは奥の部屋に消えると、しばらくしておめかしして出てきた。部屋着を見慣れている麻貴は、身なりを整えたトニーに普段にない品と威厳を感じて、少し気後れした。


「さあ、ミス・マキ。これからわしとデートをしよう。車いすを押しておくれ」

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