第76話

 ジョンのオフィスでは、先程からシニアマネージャーからの営業報告がおこなわれていた。


 シニアマネージャー達は、今日は朝からジョンの機嫌がすこぶる悪いと秘書から耳打ちされていたので、報告には細心の注意を払ったが、ジョンはそれでも報告内容の不備を鋭く、いや執拗に指摘した。


 ジョンの不機嫌の理由は麻貴だった。パレスでの朝食の時に、佑麻の安否の確認は出来たので、自分は飛行機のチケットが取れ次第帰国すると、急に切り出してきたのだ。別に何を期待していたわけではないが、彼女の感謝の言葉を聞いているうちに、ジョンの心にのどに刺さった骨のような異物感が生まれ、それが彼をイライラさせたのだ。


 ジョンはシニアマネージャー達に、営業報告書のやり直しを命じたあと、インターフォンを通じて秘書へドナ達を呼ぶように言った。

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