第75話

 マカティ・シティのジョンの会社のロビーに、ドナと佑麻、そして麻貴がいた。


 ドナと佑麻はジョンに先日のお礼を言いに来たのだが、佑麻にせがまれて、麻貴はそれのお付き合いでやってきた。久しぶりの都市部へのお出かけとあって、ドナはスカート、佑麻は白いワイシャツとスラックスという出で立ちで来たが、麻貴は相変わらず軽快なデニムパンツ姿だ。


「ねえ、麻貴。ジョンの会社ってすごいな。何の会社なんだ?」


 佑麻が、豪華なロビーを見回しながら言った。


「ジョリービーっていうお店をやっているらしいんだけど…」


 麻貴の返事にドナが割って入る。


「この会社は、ジョリビー・フード・コーポレーションといって、ジョリービーというフィリピンで最大のファーストフードチェーン店を運営しているの。国内では約1300店舗、外国にも約170店舗あるのよ。あの世界のマクドナルドでさえも、この国では2番手なのは驚きでしょ。それに、ジョリービーの他にも、ピザのGreenwich(グリーンウィッチ)、中華料理のChowking(チャウキング)、ケーキ専門店のRed Ribbon(レッドリボン)、焼き鳥のMang Inasal(マン・イナサル)、それにフィリピンでのDelifrance(デリフランス/ベーカリー)のフランチャイズも運営していて、数えきれないくらいの店舗があるのよ」

「へー、すごいな。…で麻貴、ジョンは、この会社で何やってるの?」

「日本で言う取締役マーケティング室長ってところかしら。彼のお父さんがCEOで、おじいさんが会社の創立者よ」

「そんなすごい人たちとどうやってお友達になったんですか?」


 ドナの問いに麻貴は言葉を濁す。


「まあ、いろいろあって…。ところで、なんでジョリービーという名前にしたか知ってる?」


 麻貴のクイズの答えを聞かぬうちに、秘書がドナ達を呼びに来た。

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