第69話

 佑麻はなぜか灼熱の砂漠を歩いていた。


 どこかへ行かなければと焦っていたが、そのどこかがわからない。歩いて、歩いて、ついに体の水分を使い果たし、砂丘の底に転げ落ちた。薄く目を開けると、衰えを知らぬ太陽が容赦なく佑麻を照りつける。

 水が欲しい。しかし、こんな砂漠には一滴の水もあるわけがなかった。日差しの中から、ふたりのエンジェルが舞い降りてきた。ああ、いよいよ自分もお終いかと観念した時に、エンジェルの肩に水筒が掛かっているのを発見する。


「その水を下さい!」


 最後に残った力を振り絞って叫ぶ。しかしエンジェル達は、佑麻が言っている言葉がわからないようだった。


「お前らエイリアンか? その水をくれと言っているのが、わからないのか!」


 しかし、やはりエンジェルは首を傾げて、佑麻を不思議そうに見ているだけだ。

ああ、言葉が通じればあの水が飲めるのに…。そう思いながらも意識が遠のいていった。

 その時、突然どこからかメリー・ローズが現れた。メリーが佑麻に微笑みかける。そうだ、彼女はエンジェルと話せるのだ。


「メリー、エンジェルにその水を飲ませてくれと言ってくれ」


 彼女は笑顔でうなずくと、佑麻では理解できない言葉でエンジェル達に話しかけた。

 ようやく理解したのか、エンジェル達は、佑麻に水筒を差し出す。佑麻は、喉を鳴らして一気に水筒の水を飲み干した。

 やがて力を取り戻した佑麻が立ち上がる。みると、メリー・ローズが彼の進む方向を指差していた。


「そっちにいったい何があるんだ、メリー」


彼女は佑麻の問いかけには答えようとせずに、エンジェル達とおしゃべりしながら、天空へと登っていく。


「教えてくれ、メリー!」


 そう叫んだ自分の声に驚いて、佑麻は目を覚ました。今度は、彼は留置場に居た。

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