第36話
ゆっくりと食後の休憩を取ったのち、二人は車を飛ばして、いよいよ目的地のワイナリーに到着した。
来場者は一度広場に集合させられて、ガイドから簡単な説明を受ける。早口の日本語なので、佑麻はドナに逐一説明し直した。説明のあとは、ガイドツアーのスタート。ワイン作りの歴史館から、昔の貯蔵庫、ぶどう果樹園、そしてワイン醸造の化学ラボラトリーと続く。
もともとドナはワイン好きだったので、どれも興味深く見学していた。最後は彼女お待ちかねのテイスティング。多くの種類のどれもが無料なので、ドナはワングラスずつすべての種類のワインをテイストし始める。
「おい、飲み過ぎじゃないか。And yet, you’re under age and not allowed to drink alcohol.(しかもドナはまだ未成年だろう)」
運転があるので飲めない佑麻がすねて言った。
「残念ながら、日本と違ってフィリピーナは、16歳で人生を考え、18歳で成人するの。So you don’t have to bother.(構わないでくれる)」
赤からロゼへ、ロゼから白へ、さらにピーチワインから梨のワインへとドナは飲み進む。その時点でだいぶ様子が怪しくなっていたが、テイストから選んだ1本を買い求めると、店先のガーデンテーブルで腰を据えて飲み始めた。
佑麻は、仕方がないのでブドウアイスを舐めながら、ワインで変貌していくドナの様子を恐る恐る見守っていた。
「おい!ユウマ、うっぷ。Can I ask you something?(ちょっと聞かせてくれるかしら?)」
「Donna, Put a grass on a table.(ドナ、そろそろ飲むのをやめとこうな)あとは家に帰ってからにしよう。もうだいぶ酔ってるから」
佑麻がワイングラスを取り上げようとするが、ドナは聞き入れない。
「Shut up!! (うるさいわね)折角気持よく飲んでいるんだから、放っておいてよ」
ドナはグラスにワインを注ぎ足す。
「Wait, I was just saying something… (だから、ええっと…なんだっけ)…そうそう、聞きたいことがあるのよ」
「なに?」
「あなたが前に言っていた… What do you by “ore-no-onna”? (" オレノオンナ"ってどういう意味なの?)」
「Did I say that ?(そんなこと言ったっけなぁ。記憶にないな。)」
「嘘を言ってはいけません」
「…要するにまあ、"She is mine"ってとこかな。」
「teka lang…sandali. (ちょっとまって!)佑麻。私がいつあなたのものになったのよ。」
「だから、それは言葉のあやだって…」
「Nobody owned me. And nobody will. Even you!
(私は絶対お前のものじゃないからな、わかったか)」
「わかってるよ。あの時はそうでも言わないとドナを守れなかったから…」
「黙れ!みんなの前でそんなこと言っていたなんて。信じられない。Sabi ko na nga ba salbahe ka eh!!!(やっぱりお前は悪い奴だぁ)」
ドナは佑麻に掴みかかろうとしたが、ついに酔いが回ってテーブルにうつ伏せてしまった。
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