第26話

「Donna, have you finish a report ?(ドナ、レポート制作はどう?」


 講義の合間のランチタイム。マクドナルドでクラスメイトが話しかけてきた。

 世界共通規格のマクドナルドは料金の安さもあいまって、留学生たちにとってはとても落ち着く場所になる。ドナは、大好きなてりやきバーガーをほおばりながら答えた。


「順調よ。病院にもヒアリングにいってきたし」

「ふぅん。たしかその病院って彼の家の病院よね」

「ええ。佑麻のお父さんとお兄さんがドクターなの」

「…ねぇ、ここは考えどころだと思わない?」

「What ?(なに?)」

「このまま帰って看護師になったって、働き口もそうないし、あってもきつくて賃金も低いでしょ」

「So what ?(だから?)」

「日本のドクターのワイフとしてセレブになるという手もあるんじゃない?」

「Come on…(やめてよ…)」

「考えてごらんなさいよ。その方が沢山のお金を家族に仕送りできるでしょ」

「でも、私だってやりたいことあるし、帰ってやらなければならないこともあるし…。仮にそれが正解だとしても、結婚なんてそう簡単にできないわよ」

「Why ?(どうして?)」

「彼の気持ちもあるし、お互いの家族のこともあるし…」

「大丈夫。一発で解決できる簡単な方法があるのよ」

「What do you mean ?(どうするの?)」

「妊娠しちゃうの」


 大きなおなかを抱えたドナに、ベビー用品を山のように抱えた佑麻が常夏の日差しに汗だくになって日傘を指しだす。

 ドナはそんな二人の姿を想像して思わず吹き出した。


「ハハハ! I can’t do that!!!(そんなの無理に決まってるわ)」

「どうしてよ。まさか赤ちゃんのつくり方知らないなんて言わせないわよ」


 妊娠するなんて処女のドナには全く実感がわかない。ドラマかコミックの中での話だとしか思えないのだ。

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