第20話
外へ出たドナの手首を取ったのは、追ってきた佑麻だった。
「Wait a second, Donna !(ちょっとまって、ドナ!)」
「触らないで!」
ドナは彼の手を振り払う。
「待ってくれよ」
佑麻がまた片腕をとる。
「いやよ。もう、帰るんだから」
しかし、今度は両腕を取られてドナは身動きできなくなっていた。彼女は佑麻の目を睨みつけた。自然と涙が溢れてきた。
「なぜ私を誘ったの?わたしは自分のすべての勇気を振り絞ってついてきたのよ」
ドナの涙を見ながらも、佑麻は何も答えなかった。
「私がそばにいるのが恥ずかしいなら、誘わなければよかったのよ」
「わかったよ、ドナ。家まで送って行くよ。だから、頼むから車に乗ってくれ」
シートのドナは、佑麻にそっぽを向くように外を眺めていたが、涙で目が曇り何も見えていなかった。
たったひとりで日本人だけのパーティーへ出席することに、怖れがなかったわけではない。しかし一方では、佑麻に承諾の返事を伝えて以来、わくわくしながら今夜を迎えたのも事実だ。自分は佑麻に何を期待していたのだろう。今なんでこんなに悲しくなるのか、自分でもよくわからなかった。
「Donna, we are here.(ドナ。着いたよ)」
佑麻に助手席のドアを開けられて、ドナは我に返った。外気がドナの頬にあたる。しかしそこは彼女の家の前ではなかった。
「ここはどこ?」
不安になったドナの手を取って、佑麻が言った。
「家に帰る前に見せたいのもがあるんだ。少しでいいから、僕につきあってくれないか」
この後に及んで、佑麻は自分に何を見せるつもりなのか。
しかし、こんな見知らぬところからひとりで帰ることもできず、ドナは仕方なくついていった。
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