第19話

 しばらく踊り、ドナの額も汗ばんできた。ダニエルにお願いして涼しい場所へ移って休んだ。


 小さな扇子で首元に風を起こしながら、佑麻を探す。佑麻がこちらを見ていた。ようやく彼もドナと過ごせる余裕ができたようだ。

 ダニエルに挨拶して、彼女は笑顔になって小走りに彼のもとへ。すると、そんな彼女を見つめていたにもかかわらず、彼は近づいてくるドナに背を向けたのである。それでやっとドナは、ここへ自分を連れてきたことを彼が後悔していることを悟った。

 ドナはついに切れた。口を一文字にしてしばらく怒りに耐えていたが、決心するとパーティーの音響係に曲をリクエストし、猛々しい足取りで、ダンスフロアのセンターに位置すると、アップにしていた髪をほどいた。

 やがて、強烈な重低音とともに、レディー・ガガのナンバーが響き渡る。

 すると、ドナがティーンらしからぬセクシーなダンスを踊り始めたのだ。乱れる黒髪に、あやしく燃える瞳と誘う唇が見え隠れする。服の上からでもわかる若々しく張り出した乳房。別の生き物のように柔軟にくねる腰。それらが、激しいビートとともに躍動する。

 女性達のしかめ面とは裏腹に、ホールの男たちは熱狂した。そして、曲の終りとともにピタッと決めたポーズで、佑麻を指差しドナは叫ぶ。


「Hey everybody !!  What is the name of this man who brings me here? That supposes to be my dance partner!!! (どなたか、私のダンスパートナーが誰だった教えてくれないかしら)」


 彼女の一声で、ホールの全員が佑麻を見た。

 彼はぎょっとして硬直する。そして、そんな彼を残し、ドナはまっすぐ顎をあげて、両肩を振りながらホールの出口へと進んで行った。

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