第18話

「Oh my , a beautiful lady standing alone. Are you with someone? ( まさか君はひとりでここへ来たわけじゃないよね?)」


 アメリカからの留学生であるダニエルが、ドナに話しかけてきた。


「ええ。でも友達は忙しくて、私にかまっている暇がないみたい」

「僕はダニエル」

「わたしはドナリィン。ところであなたのパートナーは?」

「最近こちらに来たのでまだ女性の友達はいないんだ」


 ダニエルは、久々に気兼ねなく英語が使える相手に会えた嬉しさで、ドナに盛んに話しかける。ドナにしても唯一の知り合いである佑麻に構ってもらえない以上、ダニエルと話すしかなかった。

 やがて、打ちとけたふたりの耳にビートのきいたクラブミュージックが流れてきた。ダニエルは、ドナをダンスに誘う。ドナは佑麻を目線で探したが、彼はまったくこちらに関心が無く、他の友達と楽しそうに話している。

 しかし、佑麻にしてみれば麻貴の拘束から逃れて、ドナのもとへ行こうとしたのだが、間が悪いことに、二人が流暢な英語で楽しそうに会話していたから、入りずらくてもとの集団に戻ってしまっていたのだ。


 パーティーに誘っておきながら、自分は佑麻からいつまで放っておかれるのだろう。ドナはダンスする気分ではなかったが、気を使ってくれる紳士のダニエルの誘いを断る非礼もできないので、ふたりでダンスフロアへ出た。


 実のところ、おもちゃの少ないフィリピンの女の子達にとって、小さいころから親しんでいる遊びは歌と踊りだ。ほとんどの女の子は、テレビで踊るキュートなダンサーや美しいシンガー達に憧れる。見よう見まねで、歌ったり踊ったりしているうちに、自然にダンスが身についてしまうのだ。

 例にもれず踊り始めたドナは、周りの視線を集めるに十分な腕前であった。

 上半身で踊るアジア女性に比べて、ラテン系は腰で踊る。キュートでしかも適度にセクシー。日本人の女子大生とはレベルが違う。実は佑麻も、そんな彼女の踊る姿を遠くから見つめていたひとりでもあった。

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