第5話
窓から差し込む日の眩しさで、ドナが目を覚ました。
起き上がろうとするが、頭が割れそうに痛い。とりあえずそこが自分のベッドであることを確認すると、安心してまた横になる。
彼女は途切れがちな昨夜の記憶をたどった。怖い目にあったと記憶にはあるが、そのことよりもなぜか、タクシーに乗せるために自分を軽々と抱きかかえた逞しい腕と、その時頬に当たったリングの冷たさだけが、鮮明に体感として残っている。
あの時、別な男が言った「オレノオンナ」その意味は何だったのだろう。痛む頭を揺らさないように、やっとの思いでリビングに降りたが、ドナを叔母が待ちかまえていて容赦のないお説教を開始する。
ドナが頭痛ときついお説教の千本ノックに耐えている一方で、玄関先では一人の青年が、小さな花束を手にドナの家の呼び鈴を睨みつけていた。
突然玄関が開き、驚いた青年が身を隠す。
大学の講義に遅れるからと理由を付けて、叔母から解放されたドナが、勢いよく飛び出してきた。年齢にそぐわない程の可愛らしい少女走りで、先を急ぐ。
彼は慌てて自分のバイクにまたがり、後を追った。
ドナは、近くのバス停からバスに乗り、彼女が通う大学前で降りる。途中で出会った学友と笑いながら語らい、そして校門の奥へと消えて行った。
青年はいつまでもドナの後ろ姿を見送っていた。
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