第4話

 ドナの家の前にタクシーが着く。


 玄関の前では、先程から心配そうに叔母夫婦がドナを待っていた。タクシーからドナを抱きかかえて青年が出てきた。ブラウスの一部が裂けたドナの身なりを見て、叔母夫婦は驚き、そして青年を睨みつける。

 叔父が奪うようにドナを受け取ると、何も言わずに家の中へ運んでいった。ノルミンダは青年の前に立ちはだかった。


「ドナの携帯電話に出たのはあなた?」

「…はい」

「あなたは誰?」


 青年は下を向いて答えなかった。


「ドナに何があったの?」


 青年はクラブハウスであった一部始終を話した。そして、ドナのブラウスの一部は裂けているが、それ以外は、朝に家を出てきた時と同じ彼女そのものであると言葉を締めくくる。


 いきなりノルミンダは、青年の顔に平手打ちをくれた。


「ドナにお酒を飲ませてどうしようとしたの。ドナがフィリピーナだから、馬鹿にしているの」

 ノルミンダは興奮してそう言い放つと、青年の鼻先で荒々しく玄関を閉めた。青年はひとり取り残され、しばらくは動けずにいた。

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