第11話~水晶だけが知っている?
「お待たせ!」
ディルクの声に、二人は振り向いた。
レネは少し落ち着いた様子だ。
「どうだった。成功した?」
「いや、それが……。これしかなくてさ。お手上げて戻って来た」
ディルクは、リズが持つ直径二十センチ程の水晶を指さし、すまなそうに言った。
光っていた正体が水晶だった事しかわからなかった。
「え? 水晶だけ? 魔法陣とかなかった? 後、文献とかさ」
二人は、揃って首を横に振った。
「じゃ、ここじゃないって事?」
ジェスは、二人の話を聞いて頭を抱え込む。これで終わりだと思っていた分、ショックが大きかった。
「あのね、ジェス。私、これに触れた時に魔女と妖鬼だと思われる人達の夢みたいのを見たの……」
「魔女と妖鬼?」
リズの話にジェスは顔を上げる。
「多分だけど……。会話からしてそうかなって」
「どんな会話していたの?」
「不老不死がどうとか……」
「「「不老不死!?」」」
リズの答えに三人は声を揃える。
「え、ちょっと待って。不老不死って、妖鬼って人間だったの?」
ジェスの問いに、リズはこくんと頷く。
「じゃ、不老不死が成功したって事なのか……」
「ううん。違うみたい。よくわかんないけど身体は朽ちるようで、能力を魂ごと移動させる術みたい……」
「え! もしかして、それが妖鬼の正体なの?」
ジェスは呟いた。
「マジかよ!」
ディルクもリスの横で呟いていた。
「ここであってたのかも。ただそれが、リズだけにしか見えないのならリズの疑いを晴らす事ができないよ。ディルク、ちょっとその水晶に触れてみて」
「え! オレが!」
まだ、祠の中から出ていなかった為、隣にいるディルクに頼んだのである。
「え、でもな……」
「早くしろって!」
躊躇するディルクをジェスはせかした。
「わかったよ。えい!」
リズが持っている水晶に、ディルクはペタっと右手で触れた。
「………」
「どう? なんか見えたり聞こえたりする?」
「いや、別に……」
ジェスの質問に答えると、更にペタペタと触れてみる。
「やっぱりそうなのか。よくわからないけど、リズにしか見えない事をマティアスクさんは知っていたんだ。でも僕達じゃ、これからどうしたらいいかわからない……」
「あ、そういえば、これ。妖鬼の方が作った水晶だよ」
「は? 何だって!」
それを聞きディルクは、ばっと水晶から手を離した。
「それ本当? じゃ、ここから持ち出すのは危険かも。ところで、妖鬼はそれを何の為に作ったかわかる?」
「確か。身体に取り憑くまでの間、この中に入っている為みたい」
「その中に? なぜわざわざその中に……」
「魔力がないところだと、ずっと形を保てなくて消滅するみたい。でも、この水晶の中だとずっと留まれるって」
リズのその答えに皆は驚いた。
「じゃ、妖鬼ってもしかして今までこの中にいたって事か?」
ディルクが驚いて言うと、ジェスは首を横に振った。
「それはないと思う。鈴って魔女が作った物なんだよね? だとしたらこの祠の結界も魔女が施したと考えた方が自然だよ。そこから出られたとは考えづらい。ただ、なぜそんなものをここに保管したのか。別に過去の映像を見せるだけなら、その水晶じゃなくてもいいはずだし。他に何か意味があるのかもしれない」
ディルクの意見を否定し、ジェスは首をひねった。
「あのね。最後に魔女が言っていたんだけど。何度でも封印してあなたを助けてあげるって……」
「……もしかして、そのあなたって妖鬼の事?」
恐る恐る問いかけたジェスに、リズは小さく頷いた。それを見たジェスは、ガックシと肩を落とす。
「何それ……。僕達もしかして二人の色恋沙汰に巻き込まれてこんな目に会ってるっていうのか? 愛する相手の遺品だから大切に保管して……」
「は? なんだよそれ! オレ達魔女に騙されていたのかよ! ……なんか、ムカついて来た! これ、壊しちゃってよくねぇ?」
「待てって! これは僕の考えであって、そうだと限らないし!」
ジェスは、慌てて叫んだ。
「あっそ。で、どうすんだよ、これから。もう、打つ手なくないか?」
「いや、水晶はともかく、マティアスクさんは、リズが見た内容から何かを知ろうとしたんだと思う。それさえわかれば……」
ディルクの言葉にジェスはそう返し、難しい顔つきになる。
「弱点なんじゃない……」
ぽつりとレネが呟いた。
「そうだよね! ありがとうレネ!」
皆がどうなんだと、リズを見る。
「うーん。特に弱点の話は……」
「弱点って、さっき言っていた魔力がない所では消滅してしまうってやつじゃないか?」
「そうなのかな? ねぇ、リズ。覚えている範囲でいいんだけど、見た夢を最初から順立てて話してもらっていいかな?」
「わかったわ」
ジェスの提案にリズは頷くと、見た夢を鮮明に思い出そうと目を閉じた。
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