第7話 入学編
訓練を受けているだろう男達の動きを観察していたが、特に変化は無かった。
連絡をしていること以外は。
「2.4、そっちはどうだ?」
『5.3か、こっちは終わってるよ。そっちこそしくじってねぇよな』
「こっちは学園の生徒がいたが、全く反抗する様子がないから楽で良かったぜ。同じく早く終わった」
『それは上々、じゃあ予定通りでいくぞ』
「了解」
と言う暗号っぽい会話があった。
だが、俺はこいつらがそう簡単に情報を流すとは思っていないからこれはブラフだと思っている。
考えるだけ無駄だな。
まあ予定通りってのは合っていると思うが。
あ、同じ学園の制服を着た奴らがいた。
まぁ、近くだし確かにここに来てもおかしくはないが、運が悪かったな。
あと、なんか主人公っぽいものになったつもりなのかブラフに騙されて「ふっ、アホだなこいつら」みたいな顔していやがる。
目をギラギラさせているからどうやって奇襲するかでも考えてるんだろう。
ヤル気いっぱいだなー。
若いって事なんだろうなー。
ここに反抗する気がいっぱいあるからそっちを狙う奴が居ますよー!狙ってくださいねー!って言ってるようなものなのになー。
同じ学園にいて恥ずかし、くはないな。
知り合いじゃ無いから。
でも、やめた方がいいと思うけどなー
「今だっ!【風に好かれた鳥】!ショット!」
「【闇夜の森の狼】!」
何が未だなのか甚だ理解できないが、号令を出した奴が不可視の斬撃を放った。
そして隣のやつはおそらく肉体強化系の異能なんだろう。
拘束具を引きちぎる様な仕草をしている。
「…」
「なんで?!」
不可視の斬撃と言ってもハイメタルで邪魔をされているからしょぼいのしか出来ない。
だから本当に皮膚が薄く裂ける程度しか傷が出来ないんだよ。
そして肉体強化の奴は多少金属がカチャッて軽く金属が擦れる音がする程度で殆ど変わっていない。
身体強化系もハイメタルで強化率が下がっているのだろう
「こいつら、今異能を使ったよな?」
「お前、気づかなかったのか?」
「気づいてたなら何か反応しろよ!」
「どうせハイメタルで殆ど能力を封じられてるんだから何もしようが無いだろうが」
「そうだけどよう…」
「まぁ、気持ちは分かる。もう少しで終わるって時に殆ど無傷と言っても良いくらいだがそれでも傷つけられたら腹がたつよな」
「そう!そうなんだよ!この後の予定とかを考えてたからその気分がこんなチンケな傷のせいで台無しなんだよ!」
「分かる分かる。なら、こうすれば多少は晴れるだろう」バンッ
異能の使用に気づいていた方の男が風系の異能の奴の足に向かって小型小銃で発砲した。
「なっ?!」
「!?いてぇぇぇぇぇ!!!!!」
「きゃーーーーーーーー!!!!!」
「うわぁぁぉぁぁぁぁぁ!!!!!」
「本当に撃った!?」
「ヤベェぞおい!?」
足から血を流している奴はあまりの痛みに叫びながら転げ回り、周囲の囚われた人質(身内3人以外)が騒ぎ場は騒然となった。
あれが、いらん正義を振り翳そうとした思春期真っ盛さかざりの末路だな。
……俺も思春期か!?
ま、どうでも良いや。
それにしてもこのうるさいのなんとかならないかなぁ。
カモフラージュにはなるけど耳がキンキンして痛いんだよなぁ。
「………ハルト、そろそろか?」
「………大丈夫だと思うが1回しかチャンスは無いぞ。流石に面倒だ」
「………3秒後にスタートだ」
「………へーい」
早く帰ってだらだらしてぇ。
「……………3」
それにしてもこんなは足らなきゃダメな状況に落ちるなんて今日は厄日だ。
「……………2」
こんなことになるって知ってたら来なかったんだが、後のことを悔えないから後悔って言うんだろうな。
「……………1」
時間だ。
頑張りますか…
「……………0」
「はーい、ちゅうもーく!」
「おいガキ、お前も怪我しないうちにさっさと座れ」
「んー?怪我?誰が?あんたの間違いでしょうが!」
これだけ挑発したら多少は警戒してくれるかな?
さっきあれだけ喋ったから少しは怪しんでくれると思ーーー。
「はあ、これだから現実が見えてねぇガキってのは嫌いだ」パンッ
うわっ、躊躇なく撃ってきやがった!
しかも眉間を狙ってやがったぞ!
異能で髪の裏にある影を操るのが間に合って良かったー!
脳に刺さる前に影で払えたぜ!!
だけど反応が遅かったのか少し掠って血が出ちまった!
畜生めっ!
「?!異能で防ぐだと!ハイメタルの効果でほとんど使えねぇはずだぞ!?」
「だからいつもより遅いから怪我したんじゃないか。馬鹿たれめ」
「……お前、組織の奴か?」
何処の組織か言ってくれないと分からないじゃねぇか!
「ヒントはやったが?」
ヒントってか答えをそのままカンニングのごとくさっきの会話中に言ったがな
「チッ、ミスったか」
イエーーーイ!!
勘違いする方向に誘導できたぜーーーー!!!
「だがな、この戦力差でどうするつもりだ?」
「は?誰が全員潰すって?」
『は?』
「「……」」
『話が噛み合ってないぞ??』
んー?なんか違う話をしているような。
「お前は、そこに倒れている学生の足を打たれたことに対して偽善を働いたんじゃ無いのか?」
あ、そういえば今、俺って物語の主人公が民間人を傷つけられて怒った様にも見えるな。俺がそんな事する訳無いじゃん!
「ふざけんな!!日本の高校生が全員アニメとかラノベにハマってイカレた正義マン思考していると思ったら大間違いだぞ!」
「お、おう…」
そして俺はさっき情報収集しようとして失敗した男を指差した。
「しかもそこのあんた!1回俺と会話したんだからそこは、こんな自信で溢れた奴だったか?みたいに疑えよ!もう少しで頭に穴が空くところだったぞ!?危ないだろうが!!」
「はい…、すみませんでし……はっ!」
そこまで言って男は自身がテロを起こしていることを思い出したらしい。
謝ろうと頭を下げかけたのを強引に上げて睨みつけてきた。
「お前、巫山戯てんのか…?」
「は?何言ってんだ」
男は怒りでプルプルしていたが俺が否定したことで少しは落ち着いたらしい。
ただ待ってほしい。
この俺が真面目に働くなんてそんな無駄なことするわけが無いだろう。
「巫山戯てるに決まってるだろ」
「お前!」
「だって、俺の目的は時間稼ぎだぜ?」
『は?』
俺の目的を知ったテロリスト達は一瞬目を見開いて固まったあとすぐに我に帰って周りを見回した
すると、
「こいつのツレが居ないぞ!?」
「何ぃぃぃぃぃ!?!?!?」
「いつの間に……」
『俺たち(私たち)も連れて行けよ!』
やっと気付いたか。
他の
だけど、訂正するならユウトも逃したかったけど今回1番逃したかったのはハクだ。
今俺が目立つ様に行動して囮になった理由は2つある。
1つは外にここの状況説明、または応援を呼ぶこと。
これの説明は特にいらないだろう。
2つ目はハクをここから逃すこと。
何せ俺が無理矢理連れてきた様なものだからな。
そりゃあ、申し訳ないだろう。
しかも男に囲まれての買い物の上にこのテロだからなぁ。
本当、マジで可哀想になる。
「…もう二度とユウトと買い物になんて行かねぇ」
「おい、何言ってんだ」
「1人で決意を固めてただけだ」
「まぁ、いいが。結局この場での形勢は変わらなかったわけだ。で、この戦力の差はどうする?」
「ここにいる奴らなんてここで会っただけの関係だから、人質にはならないぞ?まぁ、俺の親友にならなったかもな」
「そんなもの無くったってお前なんかここにいる6人だけで十分だから関係ないな」
「これでもか?」
俺はハイメタルでできている手錠を自身のピッキングスキルで解除し、男たちの目の前に手錠をぶら下げて見せてやった。
「ちっ、今日はついてなかったみたいだな」
「お互いにな」
俺たちの間に剣呑な雰囲気が立ち込め始めた。
ここにいる客や学生が固唾を呑んで見守る中、最初に動いたのはテロリストだった。
「バースト!」
「燃えろ!」
「ふっ!」
まずは様子見なのか異能を発現して正面から風の塊が、下から炎の柱が、風の塊を追う様に走る下っ端ぽい男の3人が攻撃してきた。
「無駄だ」
俺は風の塊を影で叩き落として、そのまま炎の柱を押しつぶし、走ってきた男の影に当たるように伸ばした。
「うわっ」
「そんなのありかよ!」
「くそっ、動けねぇ!」
属性攻撃は全て対処可能な威力だった。
そして、俺は他の影に自分の影を触れさせて操ることでその影の持ち主を操ることが出来る。
だが、操るには自分と相手の意思の強さによって難易度が上がる為、動かさずにそのまま固定させた方が楽なのだ。
今回は敵の攻撃をわざと大きく潰すことで注意をそっちに向けれたから能力を使えたんだがな。
「そんなの効くかよ」
「ガキのくせにやるな。だが、全方位からの攻撃はどうだ」
俺が迎撃している間に囲まれた様だ。
全方位から様々な系統の攻撃が襲ってきた。それにしてもゴミみたいな攻撃だな。
こんな攻撃俺の影が通すわけーーー。
「おっさん光系統の異能者か」
「やはりこれなら効いたか」
「おっさんの頭が光るならともかく、光系統の異能なんて似合ってねぇよ」
「よーし、もう許さん!ハゲの底力見せてやる!!」
「いや、俺たちハゲてないし……」
「どっちかと言うとハゲてるのは5.4さんだけだよな?」
「たしかにそうだな」
「お前らを先にぶっ殺すぞ!?」
『うわー、やるぞー』
5.4ってたぶん隊長だよな?
隊長のくせに部下に弄られてやがる。
いいなー。
俺もあいつをもっと弄りたいのに。
しかし最後の棒読みがなかなかに煽ってる。あいつらとは気が合いそうだ。
「くそっ、いつもいつも弄りやがって!俺はハゲてるんじゃねぇ!これはスキンヘッドって言う髪型だ!」
『はいはい、そうですね』
「お前ら……。はぁ、もういい。まずはあのガキを倒すぞ」
その言葉で5.4を弄っていた部下たちは真面目な顔をしてこっちを見てきた。
「ですが、あいつはかなりやりますよ。どうしますか?」
「こうなったら全力しか無いだろうな」
「了解しました。敵をモンスターと思い迎撃するぞ!」
『はっ』
あ、隊長?のセリフを部下が取った
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