第6話 入学編

俺たちは今、学園の近くにある早稲田駅に行き、完全電力で動くリニアモータートレインーーー通称RMT。なんと時速200キロで走る。しかも値段的に安いーーーに乗って渋谷に来ている。

何故かと言うと親友である結衣崎 悠人に多くの貸しを作っていたのだが、そろそろその返済をしろと言われ、買い物に付き合っているためだ。

ついでに途中で会った空島 白を道連れにして。

そして、俺たちが来たのは東京都最大のショッピングモール、レギオンズだ。

トゲトゲしい名前だがキチンとした内装で店もイ◯ンやユメ◯ウンみたいに多くの店が集まり品揃えも良い為人気がある。

その為、何故このような名前にしたのかネット上でよく議論がされているとかいないとか。


「俺、初めてきたわ、でかいなここ」

「それが初めて来たやつのする感想かっ。もっとすげぇっ!みたいに驚けよ!それでもお前思春期真っ盛りの16歳か!?」

「そうだが?」

「……」

「は、ははは…」


滅茶苦茶デカイ!とか言って驚くと思ったのか?

俺の家(マンション)を思い出せよ。

50階だぞ?何百メートルあると思ってんだ。それに比べてこのレギオンズは20階……、うん、ショッピングモールにしてはデカすぎるな。

この店舗はイ◯ンとかゆ◯タウンとかと同列店の筈だが普通に規模がおかしい


「まぁ、そんな事はどうでも良いんだよ。で?何買うんだ?」

「最近気づいたんだが俺、野球用のしか運動着がない。学校のは貸し出し用だけど自分のがあった方が良いからな」

「じゃあ、私いらないんじゃ」

「………逃がさないぞ?」

「ひゃい……」


何逃げようとしてんだ。

逃すわけないだろうが。

でもファインプレーだったな。

服とかオシャレとか俺は全く気にしないから感想言えないし。


ん?

なんか耳元で釘を刺したら顔中真っ赤になってるな。


「熱でもあるんじゃ無いだろうな」ピトッ

「え?!」


んー、デコとデコを合わせてもよく分からんな。

母さんはよくこれで小数点第1位まで正確に温度が測れるよな。

普通に意味わからん。


「よく分からん。ユウト、どうしたら良い?」

「お前が離れれば良いと思うぞ」

コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクッ


なんで空島はそんなに高速で頷くかな。まぁ、どうでも良いけど。早く帰りたいし。

あ!こいつが体調を崩したら帰れるかも!?ここにはあの化け物級の回復能力を持った保険医とかいないし!


「空島、体調が悪くなったらすぐに言えよ?俺がおぶって返してやるからな!」

「あ、ありがとうございますぅぅぅぅぅ!」ボンっ

「おい、戦闘不能にしてどうするんだよ!」

「頭から煙が出てるけど知らん」


こいつの頭大丈夫か?人体からは普通、煙が出ないぞ。


「この娘どうしよっか?」

「引っ張って行けば良いだろ」

「そうだな」


入り口に突っ立ってるだけじゃしょうがないか。さっさといくぞー。

エレベーターにのって目的の服飾店が多くある15階についた頃に空島の意識が戻った。


「あ、ハクの意識が戻ったみたいだな」

「お、本当だ。空島、大丈夫か?この指何本に見える?」

「3本」

「……チッ」

「お前今舌打ちしただろ!」

「知らね」


あのまま体調不良で帰ったら俺も付き添いで家に送ったあとに早く帰る事が出来たのに!


「まぁ、今のは忘れてやる。あと、気になってたんだけど、なんで空島って呼んでるんだ?お前が相手を丁寧に扱うとか気持ち悪いんだけど」

「ああ、知ってるよ。だけど母さんがそう躾けたせいで相手から許可なく下の名前とかあだ名とか呼べねぇんだよ」

「じゃあ、許可取れば?」

「それもそうだな。なぁ、空島。下の名前で呼んでも良いか?」

「別に構いませんけど……」

「おお、ありがとうなハク」


やっぱ、空島よりハクって言う方が断然文字数少なくて楽だしな。

よし、あとは服選びだけだ。


「早く行こうぜ!」

「おう!」

「はい!」

「てか、歩き続けたからもう目の前だけどな」


さて、当の店を見てみると、オシャレな店というより、ちょっと高めの店って感じだな。


「さぁて、良い服見つかるといいなー!」

「私も一緒に見ます!」


なんか、この2人めちゃくちゃ楽しみにしてたみたいだな。

ん?

2人が?

まさかハクも着るとか言わないよな?

え?

まさかの2人見るパターンか?!

しくじった!

女は買い物とオシャレに目がないのを忘れてた!!


そうして、小一時間ほど2人の着せ替えショーが終わった。

しかも何故かギャラリーまで出来て俺も着替えさせられた。

まぁ、なんかタダで1着貰ったし水に流してやるか。

そんな騒々しく、楽しくもないがアルバイ代としてはまぁまぁな物を手に入れてげっそりとした気持ちでいると、今度は服屋の外から騒がしさを感じた


「なぁ、ユウト」

「なんだ?今小銭探してるところなんだが」

「いや、なんか外が騒がしいと思ってな」

「どうせギャラリーがまだ残ってんだろ」

「うーん、そうですかね?私も剣呑ってゆうんですか?そんな感じでトゲトゲしい雰囲気を感じます」

「やっぱ判断がつかんな。俺、ちょっと見てーーー」


会計をしているユウトに声を掛けてから様子を見に行こうと「見てくる」と伝えようとしたところ、その前にこの店舗の入り口の自動ドアが吹き飛んでしまった。

自動ドアって意外と高いんだけどなー。


「お前ら動くんじゃねぇぞ!」


爆発物でも使ったのか、煙が出ている入り口から銃を武装した男たちが5人現れた。


「よし、そのままおとなしく、逃げず、その場に座って言うことを聞け。少しでも妙な動きが見られたら撃つ。

このレギオンズの全ての場所に俺たちの仲間が配置されている。逃げようとしても無駄だ。仮に逃げれても他の場所に連絡して殺す」

「分かっていると思うが、この状況になっているのはお前達だけではない。他の奴らが動けばここにいる奴を殺すかもしれないし、動いた奴には当たっても当たらなくても一発撃つ。つまり、ここも例外ではなく危険だと言うことだ。だが、命令に従順なやつは狙わないから、言うことを聞くんだぞ?

わかったら拘束するから大人しくしていろ。それと拘束した後はこの階の中央フロアまで移動する」


そういうと、喋らなかった他の銃を持たない奴らが手錠を見せながら近くの利用者を拘束していった。


まあ、この規模のテロってことは組織的な犯罪なのは確実だとしても、中にある程度綿密な計画を練れる頭のいい奴がいそうだな。

アホなら集まってもここまで組織に忠実そうなメンバーが集まらないだろうし、波程度の頭ならこんなでかいショッピングモールを襲おうとも思わないだろうからな。

そこら辺の底辺犯罪組織って訳じゃなさそうだ。


「………暫く大人しくしてるぞ」

「………へーい」

「………はい」


まあ、動こうにも人質が多すぎて身動きが取れないしな。

あれ?

この拘束に使ってる金属、ハイメタルじゃねえか。

これ、レアメタル以上の価値があるだろうが。ハイメタル製の手錠で拘束されたやつは異能を行使できなくなるらしいし。

こんなのが用意できる奴らなんてなかなかいないぞ。

しかもたまたま此処だけって訳が無いと思うから、最低でも何百、数千個と用意してるはずだ。

活動資金が想像以上にある組織で、、とんでも無くでかい組織ってことは分かった。

まぁ、今はどうでも良いけどな。他人が死ぬとこは見たくないけど。


「おら、さっさと歩け」

「へーい」


ちょっとだらだらし過ぎて間接照明で頭を光らせているおっさんに怒られちった。


「なぁなぁ、あんたら相当な凄腕だろ?なんでこんな犯罪みたいなことしてんの?」


チャンスタイム!情報収集を始めよう!


「うるせぇ。黙って歩きやがれ。次警告するような事があったら撃つぞ」


ふーん、1発もらうつもりだったが、警告ありなのな。俺がガキだから優しいのかの判断がつかねぇが、テロ屋にしては優しいな。それでも命令に忠実なところを見ると、どこかの軍人か?


だか、話しすぎても周りに不安を与えちまうし、そうしたら無駄に撃たれるやつを作りかねねぇな。

俺やユウトならどうなでもなるだろうが、状況が悪くなるだろうし、聞き込みはむずそうだ。


周りの奴の様子も、俺が近くのおっさんに話しかけた瞬間、銃口を向けたり、視線で注意を引いたりしつつも、少し離れてるやつは逆に他の捕まった奴の動きに注意したりと、連携もヤベェ。

ただ、惜しいのはここに配置されたメンバーが5人で、捕まったやつが18人と言うことだな。

この人数差じゃ監視にも限界がある。が、逆に限界を知ってるからピリピリしてやがるのか。たまたまだったが、話しかけたおっさんの器に助けられた形だな。


そんな感じで様子見をしていると、エレベーターが近くにあるホールに着いた。

そこには100人いかないぐらいの人が集められていた。

ここはエレベーターが近くにある分、強度的な問題で窓のような外の様子が見えるものが無い。まぁ、見えたとしてもここは15階だし意味がないだろうけどな。


お、移動中全く喋らなかったユウトが話しかけていた。


「……おい、何くちゃくちゃ喋ってたんだ?」

「……情報を集めようとしたがこいつら想定以上に口が硬かった。しかも監視体制も高いし、相当連携が取れるぞ。」

「……ああ、しかもハイメタルなんて成金趣味なものまで用意してやがる。シロも演技ありがとうな。おかげで助かった」

「……いえ」


シロには俺たちが離れ離れにならない様に俺とユウトの袖を怖がる振りをしながら固く握っててもらっていた。おかげで情報交換が出来る。


「……注意しろ。こいつら相当な組織な上、かなりの訓練をつんでるようだ」

「……アイツらキビキビ動いていてウチの奴らと雰囲気似てたから薄々思ったいたが、やっぱりか」

「……女性に性的な視線も向けていませんでした」


よく見てるな。しかもその意味をわかって言っているんだろう。現代では世間的に性的問題は大きく取り上げられるから無意識にそう言うことに理性が働くようになっていく。だがテロ行為を行う奴らは理性が緩い奴らも少なくないだろうし、そう言う視線がないって事は理性的なテロ犯か、もしくはよく訓練されているかのどちらかだ。

しかし、俺たちは家庭が特殊だから仕方がないが、普通の高校生の筈のハクも怯えてもおかしくないのに冷静に周りを確認するなんて凄いな。まぁ何かしら事情があるだろう事は分かっていたから、そこまで驚く事は無かったが、より聴きたくなくなった。

おっと脱線したな。

そんなことよりもこれは確定的だな。アイツらは犯罪組織の真似をしてるどっかのでかいバックを背負った組織だ。俺はユウトと目を合わせ、アイサインでお互い頷きあった。

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