第4話:冒険者見習いアルカナタス

 私とエルドは森林を抜けてマルクという村の関門まで来ていた。


 関門は木造で作られており、私の祠と比べれば簡易に出来ていたが木と木を繋ぐ桁と梁と言われる部分に関しては細かな細工が施されており、とても感心した。更に関門を横に繋ぐように石積みが村を円状に囲いとても芸術的だった。


『そろそろ、マルクに入る関門を通るよ。アルカナタス。』


『ああ、そうだな。準備をしておこう!!』


 すると、関門の前に立っていた左右の人族の男が槍と言われる武器を両手で持ち私とエルドを阻んできた。


『止まれ!! そこにいる怪しい者!!』


『どのような用件でマルクへ来た!!』


『私はエルド! アルカ=エルドと言いい、各地の問題ごとを解決しながら旅をしている者です。』


『まさか、あの有名な流離の冒険者か!?』


 どうやら、私が予想していた通り人族の中でもエルドは広く名が知られているようだ。


 エルドは首に身につけていた小さな黄金の板のようなものを右の人族の男に差し出した。


『たしかに、これは本物のようだな!!これを返そう!!』


『よし!! お前は通っていいぞ!! 流離の冒険者の横にいるその者は何者だ!!』


『彼女は私と共に旅をする冒険者見習いです。』


 そのような設定は聞いていないぞエルド!!お主の冒険者見習い? 笑わせるな!! 私は退屈しのぎに旅をしているに過ぎない。まぁ都合上その方が良いと判断したのだろうが後で話し合いが必要だな!!


『よし!! お前も通っていいぞ!!』


『左の者よ、感謝する!!』


 こうして無事に私とエルドは関門を通過することが出来た。


 マルクに入ると私とエルドが歩く通りを中心とした左右に古い木造建築が建ち並んでいた。この通りを真っ直ぐ進んだ所に冒険者が集うギルドという場所が設けられていて、そこで依頼の受付を行うとエルドが教えてくれた。


 ギルドは各村や町に設けられていて旅をしながらでも依頼を受けることが可能らしい。先程、エルドが関門の人族の男に見せた小さな黄金の板は冒険者の証、ジルと言われるものでジルには白、銅、銀、金とランク分けがされており、エルドは一番上の金に属しているらしい。


 私とエルドは一度旅の疲れを癒すためギルドの隣に設けられている宿屋という場所で部屋を借り受けて休息をとっていた。部屋には照明と言われる光源と綿花や絹で作られたベットというものが2つ設置されていた。


 そして、私はエルドに関門で見習い冒険者扱いされたことについて問いた。


『エルド。関門でお主が言っていた冒険者見習いとはどういうつもりだ。』


『ごめん、ごめん。アルカナタス。ああでもしなきゃ通してくれないと思ってね。』


 まったく、あれでは遠回しに私がエルドよりも下に見られていると思うではないか。


『所で休息をとった後に何処へ向かうつもりだ?やはりギルドか?』


『そのつもりだよ。そして、ギルドでアルカナタスの冒険者登録を済ませないといけないからね。』


 確かに、関門で一々説明するのは面倒だ。ここのギルドで冒険者登録を済ませ白ジルを受け取った方が今後の旅を見据えて効率的か。


『了解した。ところでお前が口にしているそれは何だ?』


 エルドは私と会話をしながら茶色の棒状のものを食していた。


『これはペルドと言って麦で作られた食べ物だよ。下の宿屋の受付で2本買っておいたから1本いる? アルカナタス?』


『1本貰うことにしよう。』


 エルドからペルドを受け取り恐る恐る口にしてみた。ポキっと音を立てて口で噛み砕くとカリカリと音を立てた。甘味があり、口内で香ばしい香りが口を通って鼻から突き抜ける。飲み込むと質量に似合わず満腹感が得られた。


『ペルド〜〜!!はぁ〜〜。は!! 思わず理性を失いかけた!! しかし、これは、旨い!! この独特の風味が食欲をそそらせる。食した音もまた良い!!』


『そう言ってくれてよかったよ。モンスターのアルカナタスの口に合うかどうか迷ったのだけど予備に1つ買っておいて良かった。』


『無駄な気を使わせたな。これからは人族の食物も食すことにする。私の分の食物もこれから頼むぞ、ペルドではなくエルド!!』


『了解!! 私とアルカナタスがこれを食べ終えたら一度ギルドへ向かいましょう!』


 私とエルドがペルドを食した後、隣にあるギルドへ向かって行ったのだった……。


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