第3話 サイコ・バンド
「おはようございます、“
列に並んで二時間ほど経過したところで、やっと焔の順番が回ってきた。
“
そして、当時の混乱によって戸籍情報や個人情報は喪失し、現在では“
焔は女性職員の説明を聞きながら、これから共に生きていくことになる“
(名前……神無 焔っと、年齢は一六、性別は男)
“
「登録事項は以上です。最後に“
焔は言われるままに“
“
~~~~~
名前:神無 焔
年齢:一六
性別:男
HP(ヘルス・プロテクション):一〇〇〇
STR(攻撃):C
DEF(防御):C
AGI(敏捷):B
DEX(精度):S
INT(知性):B
CHR(運) :C
~~~~~~
これが焔の基本ステータスだった。女性職員の説明によれば、“
CHR(運)に関してはランダムで選ばれるそうだが、焔のステータスはどう見ても平凡……唯一高評価と呼べるのはDEX(精度)だけだったが、Sであってもまだ最大値ではないそうだ。
HP(ヘルス・プロテクション)は体の周りに発生するバリアのようなもので、これがゼロになると
各ステータスはCHR以外なら鍛え上げることも可能だが、最初の判定基準値をいくつも飛び越えて成長することは殆どない。
逆に——年齢を重ねていくと低下することさえあり、若いうちにどれだけ体を鍛え、知識を蓄え、経験を積むことが出来るかが重要となる。
焔は自分の手先が器用だと自覚はしていたが、何とも言い難い平凡さにため息が出そうになった。
(それもそうだな)
と焔は考えながら、区役所を出て集合場所となった空き店舗へ向かった。
******
「ステータスを見せ合おう!」
神無荘への帰り道、周囲の新成人たちがステータスを見せ合う姿に綯華の我慢は限界へと達していた。
「神無荘に戻ってからだ」
四人とも何事もなく“
しかし、それが済めば今度はサイコを生み出そう! とエスカレートするのは目に見えている。
綯華以外の焔、虎太郎、乃蒼、仁子の四人が口を揃えて「神無荘に戻ってから——」と
だが、それを
「暇だねぇ~、そうだ! ステータスを見せ合おう!」
「と、綯華ちゃん、神無荘に帰ってからにしよ?」
満面の笑みでそう言う綯華の提案を、虎太郎が却下した。
「あの人も新成人なんだねぇ~あっ、あっちの人はあたしの前の番だった人だ。STR(攻撃)にSがあって喜んでいたよ! そうだ、あたし達のステータスも確認してみよう!」
「綯華さん、もうすぐ神無荘に着きますよ。それまで我慢です」
今度は乃蒼が止める。綯華は思ったことをすぐ口にするところがあるのだが、我儘を言っても焔たち家族に
こうして何度窘められても提案することをやめないが、それをバッサリ切り捨てるのは四人にとって当たり前の——いつものやり取りでしかないのだ。
仁子はそんな四人の様子を微笑みながら静かに見守っていた。
神無荘が近づくにつれ、綯華のソワソワと何度も“
そして神無荘が視界に入ったところで、ついに綯華はロケットが発射されたように一目散で駆け出し、玄関ポーチで振り返って仁王立ちとなる。
「神無の門は天下の険! ここを通りたくば、ステータスを見せ合うのだ!」
ババァーン! と効果音の一つでも聞こえてきそうな威勢のいい声と共に、綯華は印籠を見せつけるかのように左手の先にステータス画面を浮かべ、満面の笑みで焔たちを待ち構えた。
~~~~~
名前:神無 綯華
年齢:一六
性別:女
HP(ヘルス・プロテクション):一三〇〇
STR(攻撃):A
DEF(防御):B
AGI(敏捷):A
DEX(精度):C
INT(知性):C
CHR(運) :S
~~~~~~
「ほらよ」
と、まずは焔が自分のステータス画面を見せてやりながら神無荘の敷地を跨いでいく。その時に焔も綯華のステータスをチェックしたのだが、一目見て——あぁ、綯華だな。と、そんな感想しか出てこない基準値であった。
焔に続いて虎太郎が、最後に乃蒼が見せ合っていく。
~~~~~
名前:神無 虎太郎
年齢:一六
性別:男
HP(ヘルス・プロテクション):二〇〇〇
STR(攻撃):S
DEF(防御):A
AGI(敏捷):D
DEX(精度):D
INT(知性):D
CHR(運) :C
~~~~~~
名前:神無 乃蒼
年齢:一六
性別:女
HP(ヘルス・プロテクション):八〇〇
STR(攻撃):C
DEF(防御):B
AGI(敏捷):C
DEX(精度):A
INT(知性):S
CHR(運) :B
~~~~~~
これが、これからパーティを組んでサイクロプスとして活動していく四人のステータスだった。
「虎太郎のSTRはSッ! 乃蒼はやっぱり頭がいい! そして焔、君はいつもいつも平凡だねぇ~」
神無荘に戻ったあと、遅めの昼食——といっても、現代の主食は“
焔はDEX(精度)がSでAGI(敏捷)とINT(知性)がB、その他は目を見張るようなステータスではない。綯華に“平凡”と言われてもしょうがない——そう認めているからこそ、何も反論せずに黙って味のしない食事を続けていた。
「あ、あとはサイコに何が出るか……だね」
「そうです。それによってパーティの構成を考えなければいけません」
「よぉーし、じゃぁ早速確認——」
「綯華ちゃん、神無荘の中ではサイコを出すの禁止。それに、講習会できちんと教わってから使わないとダメよ」
勢いよく立ち上がった綯華だったが、お茶を運んできた仁子によってその提案は即座に却下された。
「そんな~」
全身の力が抜けていくようにへたり込む綯華だったが、焔・虎太郎・乃蒼の三人は明日の朝一で講習会に行くことになるだろうなと、この後の綯華の行動を正確に予測して思わずため息をついた。
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