第118話 新たなスポーツで勝ちたい

 みんな百科事典の動画を見てるだけでも、楽しいらしい。


 あとは生活に役立つ知識を俺は伝えている。余計なうんちくはいらない。


 ただ物理の公式などは、物作りにはかかせない重用な学問である。


 強度計算は特に重用で適当に作ったら、すぐに壊れて大事故を引き起こすだろう。


 作る物が大きく複雑であればあるほど、緻密ちみつな計算が必要になる。

 物作りには王道もチートもない。


 俺の場合はノートパソコンの計算ソフトを使い、値を入力すれば答えは表示されるので楽だ。


 中には公式を丸暗記し、暗算で答えを出す強者つわものもいる。


「答えは512810ですね。海彦様」


「ああ、あってる。間違いない雅さん……」


 ……人間コンピュータは例外です。普通はかなり時間がかかります。


 卓上計算機の手持ちは少なく、職人だけに貸し出しており流石に全員分はない。


 そこで算盤そろばんを作ってもらい、計算機代わりに使うことにする。


 材料になる木や竹はそこら中にあり、数学にハマる者もかなり出る。

 やはり面白いのだ。

 あとはチャールズさんに、計算機を作ってもらうしかないな。



 そして俺のすることは、いつものようにバレーボールを教えることだった。


 スポーツを通して、獣人と人魚との親交も深まる。


「これは面白い!」


「たっのしぃー!」


 ボール遊びにみんな夢中になる。誰もが退屈してたので、体を動かすのは大好きなのだ。


 獣人は素早く動き、ボールを拾いまくり落とさない。


 人魚は二本足になっても、尾ひれのバネがあり高く飛ぶ。スパイクも強烈だ。


 俺はバレーの伝道師……そして敗北者ルーザー、しくしく……。


 まだだ! ボール遊びは他にもある。新たなスポーツで勝負だ!


「なになに、勇者の兄ちゃん!?」


「ドッジボールといって、ボールをぶつけ合うゲームをするぞ!」


「へー! やろう、やろう!」


 獣人の子供達と俺は勝負する。ドッジボールは経験が物を言う。


 身体能力差が、実力の決定的差ではないということを、教えてやる!


 ましてや子供相手に負けはせん! 


 ……ものの数秒で俺はアウトになりました。


 もうおとなしく審判をやります。子供達は、ものすごく喜んで遊んでいた。


 スポーツは良い訓練になって、誰もが力がついたのを実感していた。


 地球の現代トレーニングを取り入れれば、亜人達は更に強くなる。


 のちにヘスペリス全土で、部族対抗バレーボール大会が開かれることになる。


 

 俺は子供達から離れて、気晴らしにあちこちに顔を出す。みんなの様子見だ。


 バキバキと、木が折れて倒れる音が聞こえてきた。やったのはアマラ。


 新たな武器を両手にはめて使っていて、爪のグローブよりも威力が段違いである。


「リンダありがとう。これならフタバ竜を倒せる!」


「うん。どこか問題があったら言っとくれ、すぐに改良するわ」


「分かった」


 作ったのはリンダ。もらったアマラは満足して、武器を大事にしていた。

 俺もリンダに用があったので、話しかける。


「それでアレ・・は作れそうか? ここだと金型は作れないから、きついと思うが……」


「もう、作ったよ海彦。試作品だけど」


「おお、流石に仕事が早い!」


「構造は簡単だし数個だけだから、砂型で作った。ドリスが協力してくれたお陰だわさ。土精霊ノームでの型作りは、精度が高くて素晴らしいわ」


わらわもドワーフの端くれ、物作りは得意じゃ!」


「二人ともありがとう。それで直ぐに試せるか?」


「クルーザーに積んで準備はしてあるよ。いつでもやれるわさ」


「よし、じゃーみんなを呼んでくる。とにかく実物を見ないと、映像だけでは威力は分からないからな。リンダとドリスは準備をしておいてくれ」


「あいよ」


 俺は手分けして、手の開いている者を集めてもらった。


 今から行うのは新型兵器実験である。


 発射動力は蒸気機関を使うので、クルーザーの近くに集まってもらう。


「わくわく」


「ざわざわ」


 皆興味津々である。ボウ銃の時と同じく、ヘスペリス初のお披露目。


 俺達は新たな兵器の威力を、目の当たりにすることになる。


 発射準備が完了してリンダがうなずいた所で、俺は手を振り降ろし合図した……。

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