第104話 過激な水着は渡さない
俺達がアルザスに来てから、三週間になろうとしていた。
異界人探しに、あちこち聞き込みをしてみたが手掛かりはない。
ココにはいないのだろうと思い、俺はあきらめる。
「まあ、そんなもんだよな……そろそろ別な場所に行ってみるか」
「そんなことはおっしゃらず、ずっとアルザスにいてください」
「いや雅さん。そういうわけにもいかないので……」
俺達はセレネ湖の砂浜に水遊びにきていた。かなり広い砂浜である。
ここは遠浅で、湖に波は少なく離岸流も起きないので安全に泳げる。
それでも遊泳者に目を光らせてしまうのは、ライフセイバーの性だ。
クルーザーは近くに停めてある。
船の倉庫からビーチボールや浮き輪、エアフロートなどの道具を出して遊びに使っている。
雅はビーチパラソルやデッキチェアを自前で持ってきており、ミシェルと一緒に砂浜に設置していた。
砂浜は貸し切りリゾート状態で、俺達以外に誰もいない。
女性水着はクルーザーにたくさんあったので、みんなに好きな物を選んでもらったのだが……
「Vネックだわさ!」
「マイクロビキニよん!」
「このヒモがいいですね!」
「却下! せめてハイレグにしろ!」
リンダ・ハイドラ・雅の三人が、過激なエロ水着を着ようとしたので取り上げた。
さらに目の前で着替えようとしたので、俺はクルーザーから慌てて出て行く。
やめんかい! おんどりゃあー! なにしてけつかんねん!
おとなしめの物でも女達はスタイルがよいので、水着を着るとエロさは増す。
見せつけられる俺はたまらん。なるべく意識しないようにするしかなかった。
サンオイル塗りの順番でもめた後で、俺は泳いだ。やはり水泳は楽しい。
湖の近くに住んでいるので、みんな泳ぎは達者である。
少しコツを教えてやれば、更に上達して俺は競争で負ける……しくしく。
泳げないのは一人だけ、鉱山近くに住んでるドリスだ。これは環境なので仕方ない。
なーに、金づちでも俺が一流スイマーにしてやるぜ!
何を隠そう、水泳インストラクターの資格も俺は持っていた。
まずは水に慣れさせることと、楽しませることである。
いきなり教科書通りのトレーニングをさせるのは、モグリのコーチがやることだ。
まずは水際でビーチボールで遊ぶことから始め、腰の高さまできたら浮き輪を使わせる。
人は足が着かない場所では不安になり、暴れてしまうのだ。浮き輪があれば安心する。
水に慣れたら両手をつかんで引いて、バタ足をさせるだけだ。
「これは、楽しいのじゃ!」
ドリスは笑いながら、しっかりと俺の手を握っていた。
うーん、何だか別な意味で喜んでいるような……。
そこにフローラが近寄ってくる。
「海彦、私にも教えなさいよ!」
「いや、フローラは十分泳げるから、教えることなんてねーぞ?」
「いいから!」
フローラは頬をふくらませて、むくれている。
周りを見れば他の女達の表情も険しく、なぜか不機嫌だった。
ドリスにマンツーマンで教えてるだけなんだが……。
突然、大きな悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあー!」
「雅様!」
沖の方で、雅が手を振って
水泳ではよくあることだ。
俺は急いでドリスを浜辺に移動させ、思い切り水に飛び込んだ。
俺は全速力で泳いで雅の所までたどりつく。意識はないようだ。
ぷかりと浮いたままの雅を後から抱きかかえ、背泳ぎで浜辺へと向かう。
砂浜につくと、ミシェルが雅を運ぶのを手伝ってくれた。
敷いたレジャーシートの上に、身体を静かに寝かせる。
「いがいと重かったな」
と言った途端、意識がないはずの雅の眉がつり上がったような気がした。
声をかけて軽く頬をたたいてみるが、意識は戻らない。やれやれ、また人工呼吸か。
例によってキューマスクを顔に被せようとすると、
「えっ!?」
「そんな無粋な物はいりませんから、直接お願いします。海彦様」
雅が両手で俺の
力が強いので、俺は頭を動かすことができない。
「うぐぐぐぐぐ!」
「う…………ん」
ふんばるが、
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