第44話 俺達の部隊
昼食を取るために月希達と外へ出たはずなのだが…。
「なんで屋内にいるんだよ」
「また何かあるのかしらね?」
俺達は絶対に玄関を通って校庭の隅に向かっていたはずなのだが、俺達五人は今いる場所は壁にホワイトボートが付いていて、長机が並ぶ静かで無機質な教室にいた。
明らかに屋内だ。外に出たはずなのに屋内にいる。
前にも同じことが起こったから騒ぎはしないが、なんのためここに連れて来られたかと思うとため息が出る。
「ここから元の場所に戻る方法が分からないからここでお昼食べようよ。ほらちょうどいいところに机もあることだし」
「そうですね。待っていれば誰か来るかもしれませんし、ここに連れて来られたってことはメテオを倒す為に遠くへ飛ばされるのは目に見えてますよ。そうなればお昼を食べている暇なんてありませんかと思いますので食べましょう」
周もここに連れて来られてなんとなく察したようで何かを諦めたように誰かが来るまでお昼を食べようと月希の提案に乗った。
この教室には出口が存在しない。どうやって俺達がこの教室に入ったかは学園が所有するテレポート装置による転移で俺達をここに連れてきた。
連れてきた人は一夜先生当りだろ。
俺達が住むホームと同じここの教室は亜空間内に作った教室の一つだろう。
先生は俺達をこんな教室に連れてきて授業でもやるのか。生徒の貴重な昼休みを使って。あーもったいないな。
先生に逆らう気は起きないから先生を待ちながら昼食を食べるとするか。
「そうね。雪くんもボーと立ってないで食べましょう」
「わかった。先生を待つよ。それより相談したいことがあってな」
俺達は一つの長机を囲んで朝食を取り始めた。
弁当は雹の手作りだ。弁当の中身はふりかけを振った白米におかずでポテトサラダとか小さなハンバーグなど普通の手作り弁当だ。他の面々の弁当を見ると俺と変わらない中身だった。
それもそうか。俺達は同棲しているわけだし、五人別々の弁当を作るのは手間がかかりすぎるから五人の弁当の中身が同じなのは当然か。
誰もいない場所でちょうどいいと思った俺は弁当を食べながら月希達に今朝のこと、クーのことを話した。
「朝にそんなことがあったの?クラスメイトの女の子に話しかけられるなんてユッちゃんも隅におけないな」
「話を茶化すな。クローンの方に話しかけられたんだぞ。意見を聞きたいのはそれでこれをどうとらえたらいいんだ?」
「わりー、お前らをここに呼びだしておいて待たせた。根回しに少し時間を食らってな」
弁当を食べ始めて数分ぐらい経過して一夜先生がホワイトボートの前に現れた。
クーの件についての相談は先生が現れたことで一旦中断した。先生の話が終わってからでもいいし、今日の放課後でも夜にでも意見を聞ける。月希達と同棲しているからな。明日の放課後のことだしな。
そして先生はこれから俺達に何をやらせるかが問題だ。
「食べながら聞いてくれて構わない。先日の廃モールの一件を先輩と上司と話し合った結果、お前達の部隊を編成することになった」
「えー!部隊なんて軍に入ったみたいだよ。せんせー。ルイ達は何部隊?メテオ殲滅部隊?それともメテオ殺戮部隊?」
と部隊と聞いて月希が騒ぎ出す。メテオと戦うから部隊名にメテオが付くのは理解できるが、メテオ殲滅部隊?殺戮部隊?なんでそんなに物騒な名前なんだ。
俺達もついに部隊に入らされるのか。この間の一件で化け物を相手にしたから変なところに目をつけられたかもしれないな。それでいいように使われるってわけか。そして部隊に入らされるってことはメンバーは俺達だけじゃないのだろうし、俺達は特殊だから使い捨てられるわけではないと思うが、戦いと無縁な人生を送りたかった。
空を仰ぐ。上を向いても無機質な天井しか見えないけど。
部隊っていうのはよくわからないが、人数は四人だけじゃ少ないと思うから俺達以外にもメンバーがいるのだろう。
きっと他のメンバーも一夜先生達の息がかかった生徒とかなんだろう。
「うるせーな。説明の途中なんだから静かにできないのか。おい、水泡、海北を黙らせろ。続きが話せないだろ」
「俺がですか?こうなった月希は簡単に収まらないですよ?」
「あの、先生。質問はいいですか?」
騒ぎ立てる月希を見てうんざりする先生は月希の隣で弁当を食べる俺に月希を大人しくさせるように命令するのはやめてほしい。やってみるけどテンションが上がった月希は落ち着かせられないぞ。月希の奴は男の俺より力と体力があるから俺が押し負ける。
雹が月希に冷たい視線を送って、質問するために手を挙げた。
おい、雹、お前の従妹だろう?こいつを落ち着かせるのを手伝えよ。
「ん?質問か、いいか。雪月花なんだ?」
「部隊というのはどういうのでしょうか?それとメンバーは私達以外にいるのでしょうか?」
月希のせいで説明が中断したからか一夜先生は雹の質問に聞いた。
「はー、ったく。お前達ときたら。それを含めて話そうとしているところだった。誰かさんが騒がなければな」
一夜先生はさらにうんざりした様子でため息を吐いた。
「私には時間がないから多少端折って話すぞ。部隊を編成する話しだが、お前達だけの部隊だ。まあ、今のところはメンバーはお前達だけだ」
「今のところ?俺達は他の人には秘密になっているのですよね?」
「ああ、お前達の存在は知っての通り。特に水泡は異例な特殊な能力だ。秘匿されているからお前達のことについてはごく一部しか存在を知られていない。ごく一部は感づいているヤツがいるがな」
「私達を秘密にしているなら部隊を作ったら秘密が漏れやすくなるのではないでしょうか?」
「確かに部隊を作るにあたってお前達の存在が漏れ出るリスクがある。お前達学生にバカな大人の仕事を任せることもあるだろう。先日の廃モールの一件みたいに大人の事情で隠し飼育していたメテオが逃げ出した場合の尻拭いを他の学生さんに任せるのは非常に不味いが、優秀な職員を上のポカの為にトカゲのしっぽ切りにさせるわけにはいかない。それで部隊の話につながる」
意味が分からん。一夜先生の上司のミスを帳消しする為にメテオと戦わなくちゃいけないのか?本当に帳消しになるかは知らなが、メテオという危険な宇宙生物を街に解き放つのは一般人が犠牲になるは避けたいという気持ちは分かった。廃モールのゾンビはもしかしたら全員被害者のなれの果てなのかもしれないし、何もわからずメテオに寄生されて組織から送られてくる俺達みたいなメテオと戦う人達に消されるのか。メテオの存在を隠す為に、不憫な一般人が出ないように頑張ろう。
秘密裏な存在を秘密裏に飼育していたメテオが逃げ出したら下っ端に責任を全部押し付ける上も屑だよな。それで逃げ出したメテオを倒さないと状況が分からない上のミスで知らない誰かが責任を被る可能性も出てくるのか。それはそれで嫌だな。本当に大人の世界は汚いな。
俺達はそうならないことを願おう。できるだけ任務の対象のメテオを倒すようにしよう。
「極秘なことは極秘な奴らで片づけてもらおうという話になった。ややこしい話になるが、今の書類上は現在のお前達はメテオシルバーを使えない一般の生徒と変わらない。連絡や指令は私が伝えるだから普段の生活の中でメテオを知っていることは誰にも言うな。いいな。それはお前達を守ることにつながるからだ。職員、先生側はお前達を守ると私は信じているが、自分の益の為にお前達の情報を探る輩がいるかもしれないだからメテオを知っていることは誰にも言うな。私が事情で伝えられない場合は生徒手帳にメッセージを送るので離さずに持っていること」
メテオに関すること人のいる前では話すなと言われた。
学園の中で一般生徒がいる中で、誰がメテオについて知っているかわからないから俺の口から無暗に口から出ることはないだろうけど普段の俺はオカルトサイトを読み漁っていることを知られているからメテオを知らないクラスメイトからはUMAとか海外の怪談話とか思われそうだ。
知っている人は「メテオのことを知っているな。こいつもメテオシルバー使えるのかな?その内任務とかで一緒になることがあるかな?どんなメテオシルバーを使うのか聞いてみよう」とかなるだろうけど学園の外でメテオの言葉をいうと「こいつメテオについて知っているな。流桜の生徒か。高確率で中にメテオシルバーが入っているだろうからメテオシルバーを取り出して実験しよう」となるだろう。
特殊な俺の場合は「無限に金が出るだと。監禁して金量産機になってもらうか」とかになって、出し過ぎて死ぬと動物の餌とかにされて闇に葬り去れそう。
言わない方が自分の為になるのは確定だな。自分の身の安全の為に。
クローンの方も気を付けないとな。2つ目の身体のことも気を付けないといけないのは大変だな。
そしてしみじみ思う。なんでこうなったのか不思議と。
中学までは平凡だったのに高校生に上がったら、ゲームや漫画のような世界に放り込まれたようにクローンの身体に自分の人格を付与できたり、地球外生命体と戦うはめになったことに不思議に思う。
このままいっそのこと人がいない場所に移り住もうと考えたが、中学まで平凡に生きてきた高校生にそういった場所での暮らしはできないと思う。サバイバルの知識もない上に僻地の暮らし方なんてわからない。
このままずるずると生きていくしかないな。金ももらえることだしな。
「それに毎月に部隊運営資金が出る上に、任務の報酬をお前達五人全員に出させるつもりだ。もちろん口止め料として色を付けるのと全部上司の財布から出る」
上司の財布から出るという部分に力が入っていて嬉しそうな気がした。もしかしたら先生は自分達が出さなくちゃいけないと思ったのかそれとも組織に運営資金が出るのを恐れたのかは一夜先生の心境は俺にはわからない。
ただ金が出るのは凄く嬉しい。一回の任務で万単位をもらえるのはでかい上に部隊の運営資金で8万も。
「ほい、今月の運営資金だ。食費に使えよ。何か必要なことがあればって、これは初めてホームに連れてきた時に説明したな。何かあれば言ってくれ。それと報告は適度に頼むぞ」
一夜先生は俺達に茶色い封筒を渡して消えた。
俺達は先生に渡された封筒の中を覗いて見ると8万も入っていた。運営資金が思ったより多いのは口止め料も含まれているからだろう。
「8万!おい8万も入っているぞ!スゲーな」
「諭吉が8人いるよ!これで何か買おうよ!」
「コラ。これは先生が私達の生活費として渡してきた物よ。食料とか日用品を買うのよ」
「よかったです。食費とか自腹ではなくなって」
それぞれ部隊の運営資金を見てそれぞれ述べる。
周が言ってくれたから気が付いたが、運営資金をもらえなかったらこれからの生活は自腹になるはずだったんだよな。危なかった。メテオを倒す任務に出れば、お金になるんだよな。
先生とその上司に感謝だな。
って先生戻ちゃったよ。俺達この部屋に取り残されたよ。どうやって戻ろうって考えても出入り口がないんだよね。
「どうしましょう。私達おいていかれましたよ。このままここで暮らしていくのでしょうか?」
「大丈夫なはずよ。生徒手帳を使ってホームに戻って」
「あれ?もう外にいるよ?」
俺が慌て初めて、雹や周がこの部屋に取り残されていることにハッとした表情になったが、いつの間にか俺達は目立たない校舎の裏にいた。
五人でお昼を食べて、教室に戻ろうとしたらキーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り響いた。
「もう昼休み終わちゃったよ」
「早く教室に戻りましょう」
俺達は急いで教室に戻り、午後の授業を受けて放課後となった。
「水泡、後で職員室に来い!」
と一夜先生に呼ばれた。
「おいおい、水泡。お前入学したばかりで何かやらかしたか?」
「水泡君もしかして夜の学校に忍びこんだの?」
心配そう表情の道面とニヤニヤする佐々木の二人が絡んできた。
白城はホームルームが終わってそうそう部活に向かった。相変わらずサッカーが好きな奴だ。
「道面、俺に何かの勘違いをしているかわからないが言っておくと俺は夜の学校には行ったことは無い。そして一夜先生に呼ばれる心当たりがあるが、それでやらかしたかな?」
と言ったものの一夜先生に呼ばれる心当たりと言ったらメテオ関係しかない。しかし、俺だけ呼ばれることは疑問に思うが、月希達が呼ばていないのだからメテオ関係ではないのだろう。
てか、道面は俺にどんな印象を持っているのか気になる。オカルトは好きだが、学校で肝試しは月希と一緒に小学校に一回はした。先生にバレて以来、学校では肝試しはしてない。
俺だけの用事には心当たりはない。いや、クローンについてか?
この休みの間で簡単の操作だけだが、二つの身体を同時に動かせることができるようになったからそれの件かも。メールである程度状況を書いたが、先生はホームルームの時に俺とクローンが同時に動いているところを見ていると思うが、詳しいことは俺の口から聞きたいのか?クローンの件ならクローンも一緒に連れて行った方がいいのか?
昼休みの時に聞けばいいのにと思ったが、昼休みの時は先生は忙しそうだったことを思い出した。
月希達は俺が先生に呼ばれたことに対してなんとも思ってないそうで、今晩のおかずの話をしていた。今晩のおかずを買いに行くという。それにクローンも連れていくそうだ。クローンは俺だから、彼女達の中で俺も買い物に付き合っていると言える。
それと俺を置いて月希達と一緒に教室から出ていくクローンを見たクーは少し困惑していた。クーには放課後、俺とクローンは遊ぶ約束をしていたから、俺を置いていいのかと思ったのだろう。それか嘘をついて誤魔化されたのかと思ったことだろう。
明日、二人だけで遊ぶことを約束したのだから明日に先送りしたのは目を瞑ってほしい。
なので俺は月希達に構わずに職員室に行くことにした。
「なんにせよ。行ってくるよ」
「長引かないことを祈っているよ」
「話が早く終わるといいね」
佐々木と道面に見送られながら職員室に向かった。
俺、一夜先生に怒られること前提なのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます