第42話 ネタ晴らして元通り
強盗を運んだ場所は店の裏の駐車場で目立たない場所だ。
女子から離れられてルンルン気分の白城が先にぶっ飛ばされて気絶している強盗の身体を調べる。
「白城くん調べるの!?こういうのは警察に任せた方がいいんじゃないの?警察の中にこういう専門の人がいるはずだからそっちに任せようよ。あと僕のほうで先生に連絡するよ」
「先生に連絡は五分待ってくれ、これはチャンスだ。メテオと完全に交わった俺達以外の寄生された人を調べられるんだ。このチャンスを逃したら、次はいつ来るかわからないから調べるんだよ。そうだろ?白城」
「ああ。この人は寄生されていても多少の自我が残っていた。寄生されて日が浅いかもしれないが体のところどころに金属みたいな光沢が出ている。手遅れだ。時間が経てばこの人も俺達が戦ってきたメテオと同じように人を襲う化け物になっていただろう。未然に防げてよかった」
俺の前で何やらドラマが始まった。
メテオを宿した人を調べられる絶好のチャンスだと言う佐々木と白城。
学園に不信感を抱きながら、普段戦っているメテオをこうして調べられるチャンスに巡りあえたことで好奇心を刺激したのだろう。
「それで何かわかったのか?」
「俺もメテオを宿して日が浅いんだ。見ただけで何かわかったらそれはそれですごいぞ」
強盗の光沢がある部分の肌を調べている白城に聞いてみたら半ギレ気味に返された。
それはそうだ。専門家じゃない限り見ただけで分かったら凄い。雰囲気から察するに白城達はメテオを宿してから浅くても数週間しか経ってないと見た。
その間に先生達から専門的なことを学んでいなければ見ただけではわからないだろう。
つまりそういうことだ。
ただメテオの存在を知っているだけの俺達は寄生されていることしかわからない。お手上げということだ。
俺にとって強盗は廃モールにいたゾンビと同じようにしか見えない。これは普通にメテオに寄生されたゾンビだ。
「もういいかな?先生に連絡するね?」
少し離れた道面が先生に連絡してすぐに戻ってきた。
「先生から警察の担当の方に連絡してくれるって」
「後のことは警察に任せて店の中に戻」
「このままどっか行こう!ユッちゃんもそれでいいだろ!」
「俺はそれでいいけど」
よほど女子がいる空間にいるのが嫌なのだろう白城が佐々木の言葉に被せて力強く言う。
そういうことなので俺達は男子寮に戻ることとなった。
会計は周あたりが払ってくれるだろう。最近臨時収入も得たことだし、俺達が戻らなくても大丈夫だろう。
周の方にメールだけでも連絡いれようと。
『強盗の件は先生に連絡済みなので先生経由で警察の担当に対応してもらうことになったので俺達はこれで』
これでいいか。よし。満腹でドリンクバーでしか頼んでいなかったし、会計は大丈夫だ。きっと。
落ち着きのない月希を置いていくのは心配だが、警察が来たら事情聴取とかいろいろとめんどそうだし、白城達についていこう。
白城達の部屋でゲームをして時間を潰した。
月希から鬼電がかかってきたが無視した。
周から俺達が出て行った後の報告がきていた。
『どうしてどっか行っちゃうんですか!あの後月希さんを止めるの凄く大変でしたよ。雪さん達の後をつていこうとしてましたし、警察の前で銃を出して暴れる一歩手前までいきましたよ。来てくれた警察官は澪さん達の顔見知りだったようで私達のことを察してくれまして事情聴取はありませんでしたが、本当に月希さんを止めるのが大変でしたよ』
つらつらと月希を止めるのが大変だったかと書かれたメールが届いた。
本当に大変だっただなーと他人ごとのような感想を思いながら男子寮からの帰り道でメールを読んでいた。
月希と周はすでにホームに帰ってきている。クローンを通して確認済みだ。
強盗を接触できなかった月希は凄く不機嫌だったのでコンビニでお菓子を買って帰ることにした。
コンビニのプリン一つで月希の機嫌なんてコロッと変わって許してくれるだろう。伊達にあいつの幼馴染をしていないぞ。
俺が帰る前に下準備としてクローンを使って月希のご機嫌を取る。
例えば、
「ルイお姉ちゃん抱っこー」
「小雪ちゃんは仕方ないな。ほらー、高い高い」
「次は膝枕してー」
「もう甘えんぼーなんだから」
月希に抱っことか膝枕をしてもらいたくてして甘えているわけではない。本当に月希のご機嫌を取るためだ。
月希をデレデレにして俺が帰ってきた時にコンビニプリンを月希に渡して、スムーズに自室へ避難できるようにだ。昔月希と遊ぶ約束を忘れて別の友達と遊んだ時の話だが、夕方頃に帰って来た時月希にジャンピングキックをお見舞いされた。あの時のジャンピングキックは凄く痛かったが、それよりも一週間ぐらい月希が口をきいてくれなくて本当にめんどくさかった。
「ただいまー、月希と周。昼間の件は済まなかった。プリンを買ってきたからこれで許してくれ」
とプリンが四個入ったコンビニのレジ袋を月希に押し付けて自室へ逃げ込む。月希の様子をクローンを通して見守る。本体の俺はベッドに身体を預けてカードフォンを弄っている。
プリンを受け取った月希は嬉しそうにクローンを連れてプリンを冷蔵庫にしまう。
「雪くんどうかしたの?」
「まーそれがですね。今日雪さん達と合流してファミレスに寄ったのですけどそこで強盗に逢いまして、それで同じクラスの白城さんでしたっけ、その人が強盗の様子がおかしいからと言って強盗の人をお店の外へぶっ飛ばしたのです。雪さんと雪さんと遊んでいた男子生徒で強盗の様子を見に行ってそのままどこかに別の場所に遊びに行ってしまったんですよ。強盗のほうは後でメールを貰いましたが、返信が返ってこないのですよ。それでお詫びのしるしにデザートを買ってきてくれたんだと思います」
「ふーんそうなのね。いろいろあって大変だったわね。ありがとう」
「どこに行くんですか?」
「雪くんがお疲れのようだから私が癒してくるわ。それに小雪ちゃんについて知らないはずだわ。そこについて話してくるわ」
うわー、雹が来るのかよ。何とかしてくるのを阻止せねば。なんで周は俺の安らぎの空間に侵入しようとする雹を止めないんだ。てか、月希もそうなんだが、雹も他人のプライベート空間に土足で侵入するんだよな。あれをどうにかしてほしいわ。月希が真夜中俺のベッドに入り込んで添い寝するのはたまにあったけど一緒に住むようになってベッドに潜りこんでくることは少なくなった。それはクローンのおかげだ。クローンが俺の代わりに月希と一緒寝てくれるから俺の安眠を与えてくれる。いや、意識がクローンに入っていた時は毎日抱き枕にされていたから安眠できないのは変わっていないか。
雹も潜りこんで俺に抱き着いてくる。無い乳を押し付けて小声で雪くんと連呼するのは怖くて訴えるのができない。
月希を遊んであげていたクローンを動かして雹の服を引っ張って気を引く。
「あらどうしたの?私はこれからあなたの本体にあなたのことを報告しにいくのよ。一緒に行く?」
「話があるの。来てほしいの」
一日しか演じていなかったが、幼女口調が染みついてしまった。俺の部屋に向かおうとしていた雹をリビングに誘導してっと。
まだ昼に食ったラーメンが胃の中に残っているからお腹が空かないし、もう晩御飯いらないや。ネタ晴らしをするつもりだけどどのタイミングで言おうかな?
あーこのまま寝たいわ。俺の横でミケーが丸まって寝ている。可愛いな。このままずるずると放置わけにはいかないか。リビングに三人が集まっているし、さらっとネタ晴らししてゆっくり休むか。
ベッドから身体を起こしてリビングに向かう。
「話って何かしら?」
「「話って言うのは」ハモるようにしゃべろうとするのは凄く難しいな。ドッキリ大成功」
ネタばらしでクローンとハモるようにしゃべろうとしてけど思ったと以上に難しいからやめた。
「ちょっと待ってください。どういうことですか?急にドッキリ大成功と言われても何のことかわかりませんよ。説明してください」
「ふーん。そういうことね」
「え?ヒョウちゃんユッちゃんが何を言っているかわかったの?」
月希と周は俺が何を言っているか理解できなくて困惑している。雹は何か察したようだ。一日ずっとクローンと一緒にいたから何か思い当たる節で察した部分があったのだろう。
しかし、困惑している月希はレアだな。雹の驚く顔を見たかったけど月希の困惑した顔を見れたことだけでもドッキリは成功したと言える。
「彼は自分の意志で自由に自分の本体とクローンの身体を乗り移ることができるようになったのね」
「簡単な話はそうだな。ネタ晴らしとして三人はクローンに自我が目覚めたと思っただろう?あれは俺が頑張って幼女のふりをしていただけだ。そして二つの身体を同時に操れるようになった」
クローンの右手で振って見せる。
「今は二つの身体を動かせるようになったと言っても同時にできることは単純なことでしかできない。それに何か集中しようとすると片方を動かすことができなくなってしまう。そこは普通に暮らしていけば何とかなるだろう思う」
「じゃあ、小雪ちゃんはずっと雪さんだったってことですか?」
「そうだ。周が絵本を読み聞かせていたのはちゃんと聞いていたから安心しろ」
自分で言っておいてなんだが、周に何を安心させればいいのか分からない。とりあえずネタ晴らしは終わったから風呂入って寝よう。
ドッキリのネタ晴らしをしたのだが、周が少し赤くなっていた。俺に絵本を読み聞かせていたことが恥ずかしいのかな?月希は自分が騙されていたことに「一本取られたよ」って言いながら爆笑していたんだがな。そして「今度はルイがお返しする番だね。覚悟してね」と言ってくる。月希は何をお返しに仕掛けてくるのか分からないからなんか怖い。
「え?ユッちゃんどこ行くの?もうすぐ晩御飯だよ?」
「悪いな。こっちの俺は昼を食べ過ぎたから俺は先に風呂に入って寝るわ」
月希にもうすぐ夕飯と呼び止められたが、腹は空いていない。それどころか満腹状態だ。しかも胃の中のラーメンの存在感がヤバい。食ってから時間が経っているのにまだ胃の中で存在を主張しているよ。道面が食えなかった分まで食うんじゃなかったよ。今日はもう何も食えない。風呂入って寝よ。
言い残して残して風呂へ向かった。もちろんクローンはソファーに寝かせてある。
俺が風呂で温まっている間、クローンの方で晩御飯を食べよう。
今日は白城達と遊んで、ドッキリを成功させて充実した休日を過ごせたな。
ただ、明後日の学校はどうしたものか。クローンがずっと幼女のままで先生達に黙っていく人の行かないしな。
男の方の身体で通い続ければバレないか。メテオ討伐の任務もこっちで対応してさえすればいいし、めんどくさい説明をしないでなんだか黙っていれば押し通せる気がしてきたな。
本体の方は湯船で体を温めている間に意識をクローンに移して、夕食を食べようか。
「雪さんどうしたんでしょう。夕飯を食べないなんて体調不良でしょうか?心配です」
「いやな、今日行ったラーメンがすごくてな。まだ腹の中に消化しきれずに残っているんだ。何か食べたら口からラーメンが出そうなんだ。今日はいろいろやって疲れたよ」
「え?雪さん」
「あら、雪くん今度はこっちに乗り移ったのね。雪くんの分のおかず冷蔵庫にしまっておくから夜にお腹が空いた時に食べなさい」
「そうさせてもらうよ。こっちの身体は空かせているからご飯は少し多めにしてくれ」
俺を心配してくれる周に晩御飯を食べない理由を説明しながらテーブルに食器を並べたり雹が作った料理を運ぶ。
俺がクローンに意識を移したのをいち早く気づいた雹が優しいことを言ってくると思ったら、トロンとした口調で「これが夫婦の営み」と小声で意味が分からないことを言っていたのでスルーした。
本体の分を冷蔵庫に入れてくれるのは素直にありがたいのでラーメンを消化して腹が空いた時にでもいただこう。
「本当ですか?具合が悪かったらすぐに言ってくださいね。私が雪さんを看病してあげますから」
「ああ、わかったよ。その時は頼らせてもらうよ」
本当に具合が悪くなったら、雹と月希には頼らない。雹は何をしてくるのか怖くて想像したくなし、月希は月希で破天荒なことをしでかして寝ている場合じゃなくなる。二人は俺の為にしてくれると思うが、はっきり言ってありがた迷惑だ。
一番は病気にならないことだがな。俺の場合は体調不良で倒れる場合は病院に運ばれると思う。自分で言うのもなんだがイレギュラー中のイレギュラーの存在だから何かあった時の為に病院で見てもらえるが、もしかしたら俺達の立ち位置は組織内でも秘匿しているから処分される恐れもあるな。
まあ、一番は元気なことがだな。
「次風呂入るわー。それと事前にシャンプーとかのボトルはこっちの身体でも届くところに置いてあるから入ってこないように」
夕食が食べ終わり、夕食後の後片づけを三人に任せて、次に風呂を入る。今回は事前にシャンプーやボディーソープのボトルはクローンでも手が届きやすい場所に置いてあるからクローン一人でも問題なく入れるので月希と雹に念を押しておく。
服を脱いでいざ、風呂場に入った時に気づいた。本体が入いったままだった。
忘れてた。って言ってももともと俺の身体だし、一緒に入るのは問題ない。今は二つの身体を同時に操れることだし、背中を洗い合うことだってできる。
早速やってみよう。
まず、本体の方を湯船から上がって、膝立にして本体の前にクローンを座り。本体でクローンの頭を洗う。
本体目線だと親戚の女の子をお風呂に入れている気分になる。逆にクローンの目線は何だろう。昔、お父さんとお風呂に入って頭を洗ってもらっていたことを思い出した。
とても懐かしい気分で心地よい。
本体の手でクローンの頭を洗っているからクローンの痒い部分が分かるからこれは実質一人で風呂に入っていると言えるな。
頭を洗い終わって、次は身体なのだが、本体の手でクローンの身体を洗うのはやめた。理由は絵ずらがヤバすぎる。
第三者が見たら高校一年生の男子が小学校低学年の女の子の身体を洗うのは誤解を招きそうのと犯罪臭い。洗うのは俺自身なのは変わらないけど。
俺は断じてロリコンではないので本体の方は再度湯船に入り直して、クローンの身体はクローンの手で洗う。
洗い終わったら、クローンを本体の胸に背中を預けて湯船に浸かる。
意識がうとうとする前に風呂から上がる。雹達がまだ入っていないから今日は早めに上がらないとな。
あまりにも長すぎると雹と月希が突入してきそうだしな。
先兵として先にクローンで上がって着替えて部屋に向かう。月希達の様子を見てリビングでゆっくりしているのを見て、今度は本体の方も上がる。
部屋着に着替えて月希達に声をかける。
「風呂あがったぞ。次入ってい良いぞ」
「え?雪さん小雪ちゃんと入っちゃたのですか?」
「そうだが、まあ、親戚の子供を入れている気分だったぞ」
周が変なことを気にしていたが、そんなことを気にせずに自室に向かった。
その後は寝るまでうつ伏せになり、クローンを背中の上に立たせて足踏みをさせてマッサージをした。
体重が丁度良かった。
次の日起きたら、クローンはロリから元の姿に戻っていた。
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