第40話 男子寮とホームの中で
「え?」
「あら、ごめんなさい。起こしちゃったかしら?」
意識をクローンの方に戻してみたら、雹がクローンの服を脱がせていた。脱がせている理由は不明だが、周りを見るとリビングで周や月希も着替えをしている。どこかに出かけるのだろう。自室で着替えろよ。俺がいるだろう。って今はクローンの上に幼女のふりをしているのだった。
ということは出かけるために着替えさせられているのか?意識がない子を着替えさせるのは女同士とはいえどうかと思うぞ?最近はいくら女性でも小さい女の子にいたずらすれば警察が動くよ。今朝、二十代の女性が女児のスカートを捲ったとかで逮捕されているニュースで見た。
そうすると白城凄くヤバいじゃんか。クローンの胸とか触ったり、尻を揉んだりしたから通報されて警察のお世話になるじゃん。よく昨日のあの状況から脱出することができたな。
入学して早々に問題になるのは白城も嫌だろうか必死に逃げたに違いない。あんな状況になったのは事故のようなものだし、俺には責任のない話だ。
「どこかにお出かけするの?」
どこに出かけるのか気になったので子供っぽく雹に聞いてみた。
「そうよ。もう一人の貴方のところへ行くのよ」
もう一人の君って俺のこと!?とうことは白城の達の部屋に来るってことかよ。マジかよ。てか来る必要なくないか。俺のプライベートなんだしさ。遊びくらい自由にさせて欲しい。
「ヒョウちゃん!シロシロは男子寮の四階に住んでいるはずだよ。きっとユッちゃんもそこに向かっているか、すでに到着しているはずだよ」
「男子寮ですか?女である私達が行っても大丈夫なのでしょうか?校則違反とかにならないでしょうか?」
「大丈夫だよ。アマネン。ただ遊びに行くだけだし、もしかしてアマネンは何か期待しているのかな?そういう男の子にめちゃくちゃにされたり願望があったり?」
「月希さん何を言い出すんですか?雪さんにならっていいかなって!私にはそういった願望はありません。変なことを言わせないでくださいよ」
「冗談だよ。アマネン本気にしちゃって可愛いなー」
月希が周をイジる。
ガチで来る気満々じゃん。どこで調べたら白城が男子寮に住んでいるって情報が得られるんだよ。
マジでさ。個人情報なのに男子寮セキュリティーガバガバじゃん。白城とか男子寮に住み始めて一か月も経っていないはずなのに何階に住んでいるとか。軽く調べただけでわかるのって普通にヤバくないか?生徒手帳を拾ったら侵入できるしさ、もう少し、セキュリティ対策をしようよ。
もしかして女子寮も同じなのか?そうじゃないことを祈るが、もしそうなら変質者が入り放題だぞ。
「よくわからないけど、待ち合わせしているかもしれないし、その内帰ってくると思う。もしかしたら何か驚かせたいことがあるかもしれないよ?」
俺は雹達が男子寮に来ないようにやんわりと来ないように思わせぶりなことを言う。ドッキリだし、驚かせたいからネタバラしは帰ってからでもいいな。でもホームは毎日騒がしいからいっそのこと、男子寮に住もうかな?男しかいないし、のびのびできそうだ。
ただ不安なことに意識を無くすことが心配なんだよな。今は、本体とクローンを同時に操作できるが、この状態は今だけなのかもしれないから明日になれば片方しか操作できなくなる可能性もある。
白城達に隠さなちゃいけない秘密もできたし、男子寮に移り住んだら先生に怒られそうだ。
入り浸るだけにしよう。
「そうね。約束していたのなら待ち合わせしている可能性もあるわね。だとしたら」
「そうですよ。やっぱり、男子寮に行くのはやめましょうよ。雪さんがどこに行ったのか分からないので今日はお留守番して待ちましょう」
「でもホームの中は退屈だよ。ユッちゃんもいないし、お出かけしたいよ」
「なら二人は出かけてきたら?この子の面倒は私が見ておくから行ってきていいのよ?もしかしたら学園の校門で待ち合わせしているかもしれないわ」
雹が月希と周に自分が留守番をすると提案した。
え?クローンと雹でお留守番ですか?何されるか不安なんだけど、てか三人で出かければいいのにクローンの方はベッドで寝るから心配無用なのに。
「うーん、うんじゃ。ヒョウちゃんがお留守番してくれるなら安心だね」
月希は迷ったようだが、出かけることにしたようだ。
「せっかく着替えたんだし、行こうアマネン」
「私、行くとは言っていないよ。小雪ちゃんにお話を聞かせてあげたいですぅ」
周は月希に引きずられながらホームを後にした。こうしてホームの中は雹と俺のクローンだけになった。
この後、雹に何をされるか恐ろし過ぎて、意識を本体である男の方の俺に移した。現実逃避である。
意識を移したと言っても男の方の俺はカードフォンでジッと動画を見ていた。クローンの方に意識を集中していただけで男の方の俺は頭が痒ければかけるし、簡単な操作はできる。
「男子だけなのにあんまり散らかってないんだな」
「だろ?道面が勝手に掃除に洗濯をしてくれるんだ。良いだろ?アイツはこまめで綺麗好きみたいで自分から率先してくれるんだ。俺の部屋まで掃除されてエロ本を捨てられたがな。今度は捨てられないように電子の方で買わないとな」
ふっと思ったことを言ってみたら、風呂から上がってきた佐々木が自信の頭をガシガシと乱暴に頭を拭きながら言う。
さっきの小柄の奴が掃除をしているのか。ここに住んでいることは男子なのだろうけど、中性って言うより女顔の可愛い奴だったな。私服で町中を歩いていたら女に間違われることがあるだろう。
しかしながら白城はやけに遅いな。月希より出かける準備が遅いと思っていたが、俺の妹並みに準備が遅いぞ。アイツ。
何やっているんだと思って牛乳をラッパ飲みしていた佐々木から白城の部屋を聞き出して突撃。
『ちょっと白城くんこれは何なのさ』
『くっ、それは昨日ことだ。お前や佐々木には関係ない。それは事故で起きたんだ。どこで手に入れた。お願いだ。消してくれ』
『誤解って。白城くん、君さ。節操なさすぎじゃない。こんな小さい女の子に手を出すなんて。それとクラスメイトの女の子にも手を出したって聞いたよ。佐々木君から』
『佐々木め余計なことを。それも誤解だ。頼むそれは消してくれ。消さないと佐々木にあのことを言うぞ』
『あのことと今は無関係でしょ?僕はどういうことをすればこんなことになるのか。説明してもらいたいんだ。ちゃんと僕が納得できる説明してもらえれば消すからって、ふわっ!』
部屋の中から揉めている声が聞こえる。道面に弱みを握られて揺すられているのか。逆に白城も道面の弱みを握っているのか。やるな。気が弱い奴だから相手を脅すようなことはしないと思っていたが、道面に握られている弱みが白城にとってそれほどヤバい物なのかもしれないな。
二つドンと何かが倒れこむような大きな音が聞こえて、ドアに耳を当てて聞いていた俺は白城と道面が心配になり、盗み聞きがバレないように勢いよく突入してみたら白城が道面を押し倒していた。
「あいたた。白城くん早くどいてよ」
「うるさい。お前の足が絡みついて立てないんだ。暴れるな。てか、雪いつからそこに」
「えっ、水泡くん!」
白城が俺の存在に気づいた。
ギギギっと道面の首が動いて、俺と目が合う。
いけない現場を目撃してしまったようだ。
「白城、お前。とうとう男に手を出したのか。女嫌いを克服したと聞いた時は少し嬉しかったんだが、お前はそっちに走ったのか。いいや、俺は責めているわけじゃない。人それぞれフェチがあるのは理解している。お前のフェチがそれだっただけの話だろう。イチャイチャしているところ押しかけてすまない。俺はリビングで待っているよ。二人はえーとその、ごゆっくり。二人の時間を楽しんで」
「水泡くんこれは事故なんだ。これは僕と白城くんそういう関係じゃないんだよ!だから扉を閉めないでよ。本当にこれは事故なんだ信じてー」
「痛い、暴れるな。暴れるとへんなところを触ってしまうぞ。まずは足を広げて俺を立させてくれ」
俺はそっと白城の部屋の扉を閉めた。
うん。人それぞれだ。好きな人、容姿にフェチも白城が好きなものは友達として受け入れる。それが他人が眉を細める物だったとしても許容する。
白城は女子っぽい男子が好きだったとは驚きだ。意外なことじゃないか。女嫌いな白城だ。こういう風に走ることは予想できたことかもしれない。
ただ相手の容姿が女子っぽいのが以外だった。相手の道面も口では嫌がりつつも白城の足に足を絡ませていた。素直になれないお年頃だ。嫌がることを言うのは一種の照れ隠しなのだろうし、俺が現場を見てしまったから戸惑っていて心にもないことを言ってしまったのだろう。俺がこの件でからかって二人の関係が壊れるのは可愛そうだ。
本人達も好き同士で、このことは俺の胸の内に秘めておこう。俺は人の恋路を邪魔するほど能天気ではないからな。
「水泡どうした?気持ち悪いくらいニヤニヤして、正直キモいぞ」
「いや、なんでもない。友達がそっち系に進んだとはいえ、青春をしているんだなって思うと嬉しくてな」
「おう、そうか。変な顔でニヤニヤしているっとモテないぞ。ってお前は女子に囲われていんだったな。どうやったら女子に囲まれられるか教えてもらいたいわ」
俺そんなにニヤニヤしていたか。佐々木に少し引かれた気がするが、いいか。女子に囲まれてもそんなに嬉しくないぞ。姦しいだけだしな。まぁ、退屈はしないと思うが、俺が置かれている状況を考えると羨ましい気持ちなんて消えるだろうよ。
言いたいけど言えない。言ったら俺が人体実験の被験者になりえるから口が裂けても言えない。
「ところでお前白城の部屋に行ってきたんじゃないのか。戻ってきたことはまた寝ていたか?」
「お取込み中としか言えないな。あれは時間がかかるかわからないが、来るまでそっとしておこうぜ」
「なるほど白城は自家発電中だったか。お前はタイミングが悪いな」
「そんなところだ」
佐々木は何やら誤解しているみたいだ。自家発電?何を言っているんだ?まいいか、ルームメイトがイチャイチャしていたなんて言わえないな。佐々木が仲間外れにされたと知って入り浸るこの部屋の雰囲気がルームメイト同士の関係が壊れてギスギスしていたら居心地が悪い。
「水泡くんあれは誤解なんだ」
「わかっている。それ以上言うな。人には言わないから安心しろ」
「それ全然わかってないパターンだよ!」
数分後に顔を真っ赤にした道面に詰め寄られた。
別に面白がって広めないのにな。それに道面みたいな可愛い顔に近寄られるとドキドキするだろう。シャンプーのいい匂いがするし、女子みたい。
ヒステリックに声を上げると回りから怪訝な目で見られるぞ。佐々木になんだこいつらって思われているぞ。きっと。
道面はようやく落ち着いてくれたようで朝食の後片づけをしているのだった。どうも朝食を三人で食べ終えたばかりだったようだ。
朝食を作ったのはなんと佐々木だった。本人曰く実家が定食屋ということで家業を継ぐ継がない問わず両親に一通り叩きこまれたようで佐々木はこの部屋の料理番とのこと。道面は料理ができないらしく佐々木に料理面を任せているようだ。
道面は掃除洗濯担当、佐々木は料理担当、さて白城は何担当なんだ。家事は埋まっている。すげー気になる。
「おう、水泡。で?なんの用だ?朝急に連絡してきて」
「おいおい、冷たいな。小学校からの付き合いだろう。用が無くてもここにいさせてくれよ。暇なんだ。いいだろ?最近すっぽかしてばかりだったしさ。もしかして用事とかあった?」
「いや、最近発売されたゲームをやろうとしていたとこだからないけど。お前って急に強引なところあるよな」
俺が今朝、白城に連絡をしただけで元々は白城と遊ぶ約束はしていない。
用事がないってことは暇ってことだ。今日はなぜがすこぶる調子が良いし。ダラダラゲームをして怠惰に休日を過ごすのもいいかもしれないが、今日の俺は身体を動かす遊びをしたい。白城なら俺の気持ちをわかってくれるはずだ。
「身体を動かすことをしよーぜ」
「身体を動かすってなにすんだよ。テニスコートを借りてテニスでもすんのか?」
「今日は休日だ。テニスコートは空いてないだろ?身体を動かせる遊びならなんでもいい。一緒に考えてくれ」
今日は休日。みんな、休日にはメジャーなスポーツはやりたがるものだ。
公園などのテニスコートは予約で埋まっていることだろう。スポーツをやるなら場所の予約が必要だ。特にメジャーなスポーツはな。休日で空いているのは稀だろう。
マイナーなところがいい。
「なぁ?ボルダリングをしにいかないか?俺、意外な穴場を知っているんだぜ」
考えていたら佐々木からボルダリングをやろうと提案が出た。
ボルダリングとはクライミングスポーツの一種で、最低限の道具で岩や人工の壁面などを登るスポーツである。「岩の塊」「大きい岩」を意味する英語が語源である。元々はロープを使用したフリークライミングの練習的な位置づけだったが、クライミングから確保という要素が取り除かれ、より純粋に岩を登る事に集中できるスポーツだ。
「ボルダリングか。やったことは無いな。面白そうだな」
「だろう?俺の最近のマイブームになってるんだ。道面も行こうぜ。お前も暇になんだろ?みんなで行った方が楽しいから」
「え?僕も。みんなが行くなら行こうかな?」
四人でボルダリングをすることになった。三人は自室へ準備するために戻った。
俺はタオルやジャージを取りに行くためにホームに帰ろうとしたが、ホームには雹が残っているため、諦めた。
俺が今着ているのはジーンズにティーシャツとパーカーとラフな服装だった。場違いな服装だが、動く分には問題ないだろう。タオルはコンビニあたりで買えばいいだろう。
「よし!行くぞ。商店街のど真ん中にあるから驚くなよ?」
佐々木の案内でボルダリングができる店に向かう。
歩いて20分ほど歩いたぐらいに流桜商店街に到着した。
俺は小さい頃からこの商店街に来ているが、ボルダリングができる店は知らない。
俺達は佐々木に案内されるまま商店街の裏路地を進みと、佐々木はビルの前に立ち止まった。
「ここだ。昔はバーだったようだけど、潰れて中が改装されてボルダリングができるようになったんだ。2時間五百円で値段も手頃だ。入ろうぜ」
店の中は値札が付いた野球のバッドやスポーツシューズがショーケースの中に飾られていて一見スポーツ店に見えた。佐々木は店の奥に歩き出したので俺達三人は佐々木の後を追った。
そして佐々木はレジの呼び鈴を鳴らして店員を呼んだ。
「いらっしゃいませ」
奥から厳つくて無口そうな筋肉ダルマのおっさんが出てきた。
「ボルダリング、四人」
「かしこまりました。一人に2時間五百円になりますので会計の時にこちらを出してください」
筋肉ダルマの店員は無表情で淡々と接客を丁寧にこなしていく。それが不気味で恐ろしかった。
差し出されたのは青い札が付いた鍵。これは青い札にマイクロチップが入っており、今から会計時までの時間が分かるようになっているらしい。鍵はロッカーの鍵だそうだ。
壁にはデコボコでカラフルなホールドが取り付けられており、初心者、中級者、上級者と三つのコースに別れている。
俺はパーカーを脱ぎロッカーに財布と共に預けボルダリング用のシューズに履き替えて、ボルダリングが初めてなので慣れているらしい佐々木にいろいろ聞きながら俺は初心者コースに挑んだ。
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