第17話 四人組

 打ち上げ花火を間近で聞いたような爆音が消え去り、静まり返った森の中に二人の話し声が響いた。


「おい!こっちから強い光が出たからって問答無用でファーストをブチ込むことないだろ?もしかしたら逃げ遅れた民間人がいるかもしれないのに危ないねぇぞ」

「うるさい。避難誘導は完璧だったから村の人はいないはずだ」

「だとしてもよぅ。あそこに村の人達以外の人間がいるかも知れねぇだろ?猟人とか面白ろ半分で森に入るバカとかいたらどうする?」

「もしいたとしても、俺が狙ったのは人の形をしてなかった。だから大丈夫」

「その自信はどこから来るんだよ。ブチ込んだ先に民間人の死体が転がっていたら俺は知らねぇぞ。責任はお前が持ちやがれ」

「いつもごちゃごちゃ。組んでから一ヶ月毎日飽きないの?しつこいよ」

「俺はさぁ、お前の為に考えて言ってるのにな。それなのにお前と来たらチームメイトを置いて民間人がいるかもしれない林にブチ込んむとかトチ狂ってるわ」

「そもそも一ヶ月しか経ってない俺達にこんな仕事任せる先生達が悪い。しかも目標の討伐は俺らでやるようにだってよ」

「それな。この学園って裏はブラックだよな。はぁ~早く街に戻って澪ちゃんと楽しくやりたいよ~」


 どうやら彼らは先生が言っていた別動体のようで森の中で強い光がしたからそのようすを確認にきたようだ。


 その強い光と言うのは俺が猪の視界を奪う為に放った閃光だが、それを理由に攻撃をするのはサイコパスではないだろうか?しかし、こいつらの声聞いたことがあるな。今日の中で出会って少しだけ話ったような。


「それで言われた事しかしなかったお前がいきなりどうしたんだよ?」

「アイツがいたような気がした」

「アイツって誰だよ?」

「ちょっと待ちなさいよ。あんた達、私達チームメイトを置いて何処に行くつもりなのよ。ほら澪も何か言いなさい」

「ハァ、ハァ、みんな早いよ。いくら避難誘導が終わったら、自由に行動していいって言われても急ぎ過ぎだよ」


 やはり、彼らは別動体だ。

 俺らも人数は正確にはわからないがたぶんこの四人だけだと思う。声からして男二人、女二人の四人組は先生の話しによると生徒と言うことらしい。

 そして、今の話では力に目覚めてから一ヶ月みたいな事を言っていた。


「雪君。この人達って先生が言っていた別動体かしら?」

「おそらくは。先生達も詳しい話を聞いてないから確証はないがあっていると思うぞ」

「そうね。確信できない以上あまり関わらない方が良さそうね。自分達の身の安全の為にもね」

「俺の存在が知られるのは先生達も嫌がるだろうし、俺はグロモルモットになりたくない」

「えっ、ユッちゃんその話って先生達の冗談じゃないの?」


 その話が一夜先生の冗談と願いたい。


「俺だって冗談だと思いたいさ。しかしだな俺の状況をよく見ろ。面白可笑しいことに元々男として生まれた俺は今じゃ完璧な女の体だ。体を改造して女の体にしたのではなくこの体はクローンだ。この体にも俺としての記憶がある」

「雪君はこの意識が偽者なのかもしれないと言いたい訳ね。私にとって雪君の意識の存在が偽者だろうと関係ない。そこに雪君がいるのなら私は満足よ」

「茶化すなよ。それで元の体は部屋のベッドで寝てるぞ」

「雹ちゃんはブレないな。あとルイとアマネンでワンちゃん倒しといたよ」

「うぅ、あのダルメシアン気持ち悪かったですよ。なんなんですか!あれは犬とは別の生き物ですよ」


 周が指す方向に弾痕と殴り付けた鉛色の鉄の塊が転がっていた。付け加えて言うなら猪だった鉄の塊もある転がっている。


「そう言えば四人ぐらいこっちに来るけどどうするの?逃げちゃう?」

「人が来てるのですか?ヤバいじゃないですか。私達人に知られてはいけないんですよ」


 周、それは俺の能力と体が二つある状況について知られてはいけないんだ。先生達は念の為に隠して俺達の事を隠しているようだが。


「あの四人をどうしようかしらね。私達がいることを知らないみたいだけど。気付く前にここから移動した方がいいんじゃない」

「私は逃げるのに賛成です。バレちゃって一夜先生に怒られるのは嫌です」

「俺は逃げるのに賛成できないな。ちょっとあの四人のことが気になるからようすを見たい。周が心配している事態にならないように物陰に隠れて話し声を聴くだけさ」

「えぇー!雪さん無謀なことはやめましょうよ」

「私も気になるから雪君に賛成」

「雪月花さんまで」

「見つからないようにするのはいいけど?どこに隠れるつもりなの?」

「3:1で決定なんですね。何か合ったら雪さんが責任とってくださいね」

「そこまで心配しなくても俺を信じて。もうすぐここに来るようだし、とりあえずそこの岩陰に隠れるか」

「えぇ、最低でも四人の目的は知っておきたいわ。そこまで知った後は目的だった巣を探しましょう」

「そうでしたね。私達の目的は巣を探しだしてメテオを倒すのでしたね」


 俺達四人は岩の陰に隠れて近付く四人の話し声に耳を傾けた。


「うわー。村の人を襲っていたのより大きいよ。これを二人で倒したの?」

「違うけど。あっ、それはそうと澪ちゃん、残りの面倒な仕事押し付けてごめんよ。それでどうだった?」

「それでどうだった。じゃないわよ。女の子に嫌な仕事を丸投げしたネクラにチャラ男くんに私達が聞きたいわよ」

「俺が悪くない。だってこいつがいきなり走り出したから後を追ったらいきなりファーストを放ちやがっただぞ」

「はぁ?バカじゃないの?逃げ遅れた人を確認しないでやったの。ほんっとネクラくんのバカじゃないの。人がいたら連帯責任で私達にも迷惑かかるのよ」

「...」

「何よ。言いたいことがあるなら言い返しなさいよ」

「俺もビックリだよな。全部悪いのはこいつだ。話を戻すけど澪ちゃんどうだったの?」


 チャラチャラしたような話し方のヤツがネクラくんを責めるのをフォローしたのか、話が進まないからあえてそう言ったのか定かではないがなんとなくネクラくんの印象が見覚えあるキャラクターだ。

 四人の姿を見たいのは山々だが今、岩陰から覗くと見つかりそうで恐いので我慢をして話を聞き続ける。


「えーとね。民間人の保護を引き継いだ人達は私達全員を女性と思っていたみたいだよ。あと私といろいろ話が噛み合ってなくてさぁ」


 民間人の保護の話が出た。本当に先生の言う別動体のようだ。

 その民間人の保護を引き継いだ人達は多分俺達が来ると思っていたようだ。一夜先生の関係者なのか情報伝達の誤りなのかはわからない。


 一見、一夜先生は抜けてるところがありそうなので引き継いだ人達を警戒していた方が良さそうだ。


「そうか。噛み合ってなかったか」

「なんなのよ。あんた含みがありそうじゃないの?」

「俺さ、先生達に思うところがあったわけでこの山につく前にいろいろ調べていたわけよ」

「で?あんたは先生の話し方に何の疑問を思ったわけ?」

「詳しい話をする前に俺よ、この気になっていることがあるんだけどよ」

「気になること?」

「何よ。それって?」

「ここ一ヶ月、俺らの面倒見てくれたのは学年主任だったよな」

「そうね。ガイダンスとかメテオについてのレクチャー全部学年主任だったわね。それがどうしたらの?」

「今回は副担任の一夜先生だった」

「それがどうしたって言うのよ」

「あっ!ガイダンスでは担任がクエストのブリーフィングの対応するって言っていたよ」

「澪ちゃんビンゴ!それが今回は副担任の一夜先生だったわけ」

「それはただ雅先生が忙しかったから一夜先生に頼んだかもしれないじゃない」

「俺もそう思っていたけど俺とこいつが出動する前にロリっ子先生が美味しそうにジュースを飲んでいたんだ。俺にはとても忙しい風には見えなかった」


 雅先生が美味しそうにジュースを飲むシーンを想像して吹き出しそうになった。確かに雅先生は小学校低学年程ぐらいの見た目なのだがストレートな徒名に雹以外の三人がおもいっきり笑いを堪えてる。


「フハハ。面白過ぎだよ。」

「くくっ、おい。月希静かにしないとバレるから大人しくしろよな」

「だって雅先生のことをロリっ子先生だってだよ。いきなり過ぎて笑ちゃった。ユッちゃんとアマネンも笑ってるじゃん」


 周を見ると俯いて肩を震わせている。周を挟んで反対側の雹と目があった。


 雹は「静かにしなさい」と睨むように目で訴えている。


「「ごめんなさい」」


 雹に平謝りして改めて四人のようすを伺う。

 この四人は副担任が一夜先生と言うことは俺達のクラスメイトだということがわかった。

 さらに何か聞き出せないか粘ってみる。


「そう見えたかもしれないけど一休憩だったかもしれないよ。そうやって一方的に決め付けるのは良くないよ」

「あんたまさか。雅先生に気があるって言うんじゃないでしょうね。このロリコン」

「いや、そうじゃねぇ。先生達は何か隠してる。俺の勘がそう言っている」

「待て!」

「どうしたのよ。ネクラくん、あんたもロリコンなの?」

「誰かに見られてる」

「ちょっとやめてよ。そういうこと言うのよ。なんで不気味なのは顔だけにしてよ。私怖いのとかこういうのダメなのよ」

「やっぱりお前も気づいていたか?」

「えっ?白城くんと佐々木くんは誰かいるってわかっていたの?冗談とかじゃなくて本当に誰かいるってことなの?」


 えっ?白城?いやまさか。珍しい苗字だがあいつなのか?四人の仲に身の覚えがある喋り方がいたな。声もにてるし。

 本当に白城なのか。今の俺が置かれている状況だと確定できない。


 女嫌いのアイツが女とチームを組んでいること事態あり得ない現象なのだ。それなのに白城が女と行動をともにしているのはアイツの心境の変化なのか、組まなければならない理由があるのか定かではない。


 明日は多分隕石が降るな。メテオだけに。


 そんなことよりも話を聞かれてることに気付かれたぞ。ヤバい状況になりそうだ。


「月希、お前のせいで気付かれたぞ。どうするんだ?」

「ルイだけの責任なの?ユッちゃんだって笑ってたじゃん。これはユッちゃん男として責任とってもらうね」

「残念ながら今の俺は女だ。ほんと悲しいことにな」

「雪さん、自分で言っておいて落ち込むのですね」

「いやいや、ユッちゃんは見た目は女。心は男の意味深の名探偵だから安心して責任とっていいよ」

「安心できねぇー!てか、意味わかんねぇよ。好きでこんな体になったわけじゃないが俺は悪くない」


 そもそも俺と月希が原因なのだが、気付かれた今そんなの些細な話だ。それよりもあの四人がどう行動するか俺達の対応が変わってくる。


「だから言ったじゃないですか!逃げましょうって」

「じゃあどうすんだよ。さっさとここから離れるのか。あっちもまだ状況を把握して無さそうだから追って来るかもしれないぞ」

「待って、四人の内二人は私達に気付いてるようだけど一枚岩じゃ無さそうだから二手に別れるかもしれないわ。まだ私達の位置を特定された訳ではないわ」

「だからもう少し様子が見たいってことね。ひょうちゃん。ルイ達には閃光弾もあるわけだし、簡単に振り切るよ」

「閃光弾って俺のことかよ。そう簡単に振り切るって言うけどなどこにそんな自信があるのやら」

「もうなるようになれです」


 俺達は頷きあってもう少し白城(仮)達の様子を見ることにした。


「あぁ、俺達は二人以上に見張られてる。さっきから微かに話し声が聞こえた」

「女」

「そんなことまでわかるの!?」

「そうだな。俺はなんとなく全員若い女と思う」

「あんた達なんでそんなことわかるのよ?キモいわよ」

「酷い言いぐさだな。声がキャピキャピしてたからそう思っただけだ、確証はないがあっているぞ思うぞ。なっ、白城」

「一人男が混ざっていると思う」

「そうか?俺はいないと思うが。なんなら学校終わりにハンバーガー一個かけてみるか?」

「いい」

「それはYESなの、NOなのどっちなんだ?」

「NO」

「そうか。かけていたら勝っていたのにな。滅茶苦茶自信あったのに残念だ」

「あんた達何勝手に話進めてるのよ。ネクラくんあんた主語をちゃんとさせなさいよ。分かりにくいじゃない」

「...」

「わりぃな。こいつはちょっと訳有りでな。女の子の前だと喋れないんだ。そこんとこ理解してくれ」


 訳有りで女の子と喋れないか。時と場合によるが白城は危険な状況下ではきちんと話せる。


 白城との共通点が多い。あのバンドが好きならこの声は白城確定だ。


「で?あんたはそれでなんで会話が成立するのよ。まさかのホモなの?」

「ホモォ!」

「澪ちゃんなんでホモで喜ぶの!おかしいよ。全然違うぞ。こいつと一ヶ月前にあってな」

「一ヶ月前に恋に落ちたのね。白城くんと」

「だからちがーう!なんでそうなるの?澪ちゃんって偏愛主義なの?BLが好きなの?」

「えへへ、ダメかな。白城くんと佐々木くんの構図があっていてすごく妄想しやすいの」

「BLのほうか。俺は人の趣味を細かく言うつもりはないけど人に自分の価値観を押し付けるのは良くないと思うぞ」

「BLのどこがいいのやら。私は男がペタペタするこういうのどうしても気持ち悪いって思ちゃうわ」

「なんで?ガチムチのオジサンとヒョロヒョロの美少年の構図とかすごく興奮するよ」

「私には理解できないわ。じゃなくて、話逸れたわね。それで私達を監視している事態だけどどうすればいいのよ?」

「そうだな。俺達が気付いてることは既に気付いてると思うが一切ここから離れず、監視を続けていることが気になる。案外、学園側の監視なのかもしれないな。一応、気をつけていかないとな」

「えっ?なんでよ?学園側の人達でしょ?メテオでもないのに私達が学園側の人を警戒しなくちゃいけないのよ!」

「よく考えてみ、学園は不明な生物メテオと日夜戦っている。一般人にはこの危険な生物は公開していないのは何故だ?」


 佐々木と呼ばれる声はあたかも学園を信用していないように聞こえる。よほど頭がキレるようだ。


 この四人組の話を聞いているが学園の生徒が確定している中で一年のようだ。


「何故って聞かれても私達はまだわからないよ」

「澪ちゃんそこだよ。ろくな情報を知らせないのに学園側は俺達にメテオと戦わせている。そして学園側は生徒にはまだ公開していない情報があるはずだ」

「だから学園は信用できないって言いたいのね。確かに私達は入試の日いきなりメテオを投入されたわ。これを人体実験の意味を含ませているってことね」

「みんなはそうだっだんだ。私は気がついたらベッドの上だったからあんまり覚えてないけど起きてからはファーストが使えるようになっていたよ。後はみんなと同じだったと思うけど」


 入試の日にメテオを投入されたようだ。何故に投入されたかは知らされていないそうだ。

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