第7話 この人が副担任?
三人の話を聞いて自分も参加をしたかったと思う俺は寂しさを覚えた。そんな事は後の祭りで気にしてもしょうがない。この後に何が起こるのか分からない。
ここから出してもらえるかもしれないし、二度あることは三度あるということわざのとおり、また新たな敵が現れるかもしれない。
その時その時だ。要するになるようになれということだ。だが個人的にはもう終わってほしい。なんだかんだで戦っている最中もそうだったがかなり疲れていた。早く帰って眠りたいがどうやって帰ればいいのだろう?
その前に今の姿が女性なわけであって叔父から借りたあの家に帰れない。
本体と顔が似ているから「ここに住んでいる人の姉弟です」とか言って入れなくもないがずっと住んでいられない。俺が事故に遭ったとしられたら当然、家族もこの町に来るだろうし、姉弟だと装っているにも短い期間に限る。長くこの体で住んでいたら遠からず、鉢合わせになるだろう。
あの家にいる時、家族にあってしまっても、顔が姉弟レベルで似ていても「彼女です♥」と誤魔化せれないが問題は姉と妹だ。あの姉妹喧嘩真っ盛りのあの姉と妹に会ったら事態は酷くめんどくさくなる。
どんな風にめんどくさくなるかというと、毎日喧嘩している姉妹がもう一人自分たちと似た女の子が現れたとしよう。そこでその女の子が俺が住み始めた家にいた。
もうこれで嫌になるくらいメンドイ。
話を聞けば「姉弟です」とか「彼女です」とか聞いたらその女の子も混ぜられて、俺のことでさらに揉めるだろう。
それを避けるにはあの家に戻らない方がいい。そうすると俺は住処を失うことになる。これでリアルホームレス女子高生の完成である。
その前に自分も含め彼女たち三人が着られるものが今は欲しい。
これでは全裸版のホームレス女子高生だ。
俺が目覚めてからずっと全裸のままだったから恥ずかしいし、彼女たちも俺が元男だから恥ずかしいだろうし、精神が男の俺にとって目に毒だと思う。
「早く着られる物が欲しいし、ここから出たい」
「そうですよね。雪さん、私も出たいですし、服も欲しいです」
「ユっちゃんは満更でもないんじゃない? 中は男なんだし」
「俺は変態じゃない」
「えっ、そうなの?」
月希はそういうと俺の両腕ごと抱き付いてきて、必要以上俺の顔をジーとみている。
「なんで抱き付くんだよ。急に性別を変えられたこっち気持ちを考えてほしいよ」
今更だけど、不思議と興奮はしない。体が女だからかは理由が分からない。
普通、男は女性に抱き付かれて喜んだり、嬉しい気持ちになるはずだがそれがない。
「私は雪君が女だったとしてもいけるわ」
氷結女! お前は何言ってるんだ! 告白なのかこれは告白なのか。しかもユリ宣言にも聞こえるぞ。冗談だろうけど。
「わーお。雹ちゃん大胆!」
抱きしめる力がだんだんと強くなっていく。
うぅ。意識がもうろうとしてきて口から内臓が出る。
「ルイは常日頃抱き付いたりして形で好きって表現しているわね」
「そうだよ。私とユっちゃんはS極とN極の関係だよ。常にくっついていられるんだよ」
「だからもうはなさないよう」と付け加えて、さらに抱きしめる力が二倍強くなった。
もうダメだ。出る出る、臓物が。
そこへ一指し光が差しのべた。
「あのー。月希さんもうそろそろ雪さんを放した方がいいかと」
「えー、なんで私たちは磁石みたいな関係なんだよ。どんなことがあっても二人を引き剥がせないの」
「離れなくてもいいですが、私が言いたいのは抱き付くのをやめてほしいのです」
「えー、なんで? ルイはもっ~とユっちゃんに抱き付いていたいんだよ」
「そ、それは雪さんが白目を剥いているからです」
俺はもう限界で泡を吹きかけていた。そしてやっとの思いで気付いてもらえた。
ギブアップサインをだそうにも腕ごと月希に完全に抱きしめられ抜け出せない、挙句の果てに声をだそうにも喉の奥から出る物を我慢するのに必死で出せなく意識が朦朧としていた。そこで女神 周様が暴君月希から俺をお救いなさった。
「あー、女神様、ありがとう。あの暴君からお救いになさって」
「女神様!?」
俺は周の右手を両手でお礼の気持ちを込めて握った。
周は照れくさそうに、そして嬉しそうに体をもじもじとくねらせる。俺と周の視線が交じり合う。
なんだか恥ずかしくて顔が熱くなってきた。しかし、よく見ると周も顔を赤らめていて可愛らしい女の子だ。
「誰が暴君だー!☆」
そこに月希が俺と周の間に猫みたいに割り込んできて、握っていた手を無理やり引き離して、そのまま俺の両手を強く握った。
「ルイはユっちゃんが自分から他の女の子と手を繋いでるところを見ていると焼もちをやいきゃうの! だから自分から手を繋がないでよ」
妙に頬を赤らめてしおらしく言う月希がとても可愛らし思えて、つい抱きしめたくなる衝動にかられた。
こいつ俺に気があるのかと思いたくなってしまう。しかし、さっき説明したと同じようにそう思ていても恋愛感情がぜんぜん湧かない。
「私はこういう時後ろから抱き付けばいいのかしら」
と背中が凍りそうな声が響く、そして声の主 雹は許可なく俺の背中をゆっくりと羽織り抱きにし体重を乗せてきた。
今、気付いたが俺が動かすこの体、クローンは小柄だということに。
月希はクローンより低くて気がつかなかったが、本体の体は雹よりも身長が五センチちょっと高いのだが、クローンは雹と頭一個分低い。
高い順から言うと雹、俺のクローン、周、月希だ。
雹は昔月希より背が低かったがここまで高くなるとは驚きだ。
今までは顔をやや斜め下方向に向けて話していたが、今度は顔を上げて話さなくては。こんな日が来るとは思ってもみなかった。雹は俺と話しをする時、体を近づけてくるから首がつかれそうだ。
しかし、角度を変えて見てみると気がつかなかったことが見えたり、見慣れている者が違ったりして見えるから新鮮で面白い。
雹は女性とはいえ体重を乗せてくるとクローンの体ではなくてもさすがに重い。
「雪月花さん、だんだん辛くなってきたので離してもらってもいいですか」
「だめよ。だってあなたはルイに抱き付かれても何も言わないじゃない。それを不公平って言うのよ」
「そはこいつが言っても聞かないからしょうがなく抱かれているだけで本心は暑苦しくて離れてほしい。だから離してくれないか」
「いやよ。もっとユキ君の温もりを感じたい。離れてほしかったら私を名前で呼んで」
減るもんじゃないから別にかまわないけど、なんでいきなり名前なんだよ。そんなに親しかったけ? 俺ら。ここは解放してもらうために要求を呑むしかないか。
「はいはい、わかった。呼ぶよ。呼ばしていただきますよ。雹さん」
「よ・び・す・て・でお願い♥」
頭の上にある雹の顔が今までより恐ろしくて怖かった。ということで急遽、本人の前で本人を呼び捨てするようになった。
「雹」
「はい、よろしい」
雹が離れると思いきや抱き付いたまま首筋をペロッと一舐め回して首から脳に電流のような物が流れて体が震えた。
「や、やえ、やめて、話が違う。離れてくれるんじゃ?」
また雹が首筋をなめて体が反応する。
「誰も約束を守るとは言ってもいないわ」
雹が色っぽく首筋を舐め回す。
俺は雹が舐め回すたびに舌と肌が擦れあうことに感じてきた。
「ひょ、雹もうらめー、らめて。おかしくなっちゃうから」
と言っても簡単にやめてくれる女ではない。
そしてほかの二人は雹のテクニシャンな舌技に見惚れていて、誰も俺を助けてはくれそうにない。
そう簡単にあきらめる俺ではない。
隙を見て月希が両手で握っていた俺の手を引き離して体に絡む雹の腕を掴みかか、えっちらおっちらと雹から逃れるために試行錯誤を繰り返した。
それに対抗心を燃やした雹は捕らえた小動物を押さえつける獰猛な肉食動物の如く、俺を自らの地平線のような胸に押さえつけた。
「あらあら、逃しはしないわよ」
抱き付く雹の声や悪戯な笑みが悪寒となって脳を凍り付かせる。
悔しいがいくら頑張って足掻いてもこの人に勝てない。いや、こうなってしまえば絶対に勝てないし、抜け出すこともできない。
どうなっているんだよ。雹は告白めいたことを言ってみたり、抱き付いたりするような奴ではなかったのに、今の雹は理解不能。入れ替わっておかしくなったのか?
どんなことが起きて、今の雹に何らかの心境の変化にせよ、今は無理にでも足掻いて貞操を守るに専念だ。
「百合プレイには興味があったが自分がやるのは勘弁だ。だからこれ以上らめてくれー」
「いやよ。貴方が私に靡くまで離さない。だって貴方、私の熱い視線に気付いてくれないんだもん。ルイだってそうよ」
「月希に好意を持たれていたのは誰だってわかっていたが、お前はただ無表情な顔で俺を睨み付けていただけだろ」
またまた冗談を。
「それでも私は貴方に熱い視線を送っていたつもりよ。好きで好きでたまらないくらい私は貴方が好き。無表情だったのは緊張していただけよ」
雹が初めて俺の前でデレた瞬間だった。
その表情は後から抱き付かれていて見れなかったのがは悔しいが、きっと綺麗で可愛い顔だっただろう。
雹が俺を優しく包み込んだ。
胸にあふれるような気持ちが雹から伝わってくる。俺は男のままだったら涙を流しながら惚れていただろう。ぺっタンな胸でなければ。
「ルイは雹ちゃんに負けないくらいユっちゃんが好き。ユっちゃんが男の子だろうと、女の子だろうと関係ない。この気持ちは絶対に負けない」
月希が横から抱き付いて加わる。
「ひっぐ、えっぐ、う~っ、いい話ですね。私も負けていられません。私も仲間に、いいえ、そんなこと言うのは昔の私、今の私は雪さんが恋をしている恋する女の子です。そして雪さんに励まされた女の子でもあります」
どこがだ。どう見ても酷い雰囲気だろう。
周も加わる。
三人が一人を押しくらまんじゅう状態でだきしめている光景がしばらく続いた。そしてここから出た俺達はユリユリとした学園生活を送ろうとしていた。
「っと、ここでユリハーレムエンドと行きたいことだが、茶番は終わりだ。こっちには予定やらがあるから、そう簡単に終わっちゃ困るってもんよ」
直接頭に声が反響して響くように乱暴な言葉づかいがきこえた。
俺達が入ってきた扉が開いて、扉からさっきの番長口調の女性が入ってきた。
「今後、てめーらにはこの国、日本のために戦ってもらう。戦ってもらわなちゃこちらが困るし、人質を保証としてとってある」
「なによ。人が幸せに浸っていたっていうのに今さら邪魔に来て人質?」
器用に雹が無表情で呆れた態度をとった。
「人質?」
「ああ、そう人質だ。こいつの本体だ」
番長口調の女性は三方から三人の少女に抱き付かれている俺を指した。
「まー、あいにく人質含めクローンも特殊だったから実験体になったけどな。がっはっはっは」
と言ってバカみたいに笑っていた。
「悪趣味な笑い方しやがって、俺の本体とこの体が実験体?ふざけたことを」
「そうだそうだ!ユっちゃんの体に何かしたら、神様が許してもこのルイが許さないからね」
押しくらまんじゅう状態から離れた月希は番長口調の女性に向けアサルトライフルを構えた。
既に何かされてますけど!
「俺を殺したところで人質は返って来ないぞ」と番長口調の女性が月希を煽るような態度で言う。
月希はそれを聞いても構えを崩そうしない。さらにか、月希が殺気立てて本気で怒っている様に見えてきた。やばいマジだ。
俺は今まで能天気でマイペースで温厚なこいつが怒ったところを出会ってから一度も見たことがない。月希の気持ちは本当に俺に好意を抱いていただろうか。さっきの告白だって雹の告白に便乗しての冗談かもしれない。こいつの行動は日常がマイペース過ぎて何が本心で何が冗談か理解できないことがたまにあるが明らかに今はマジだ。
そして今、月希が怒っている姿を見て告白が本当だったのか考えてしまう自分がいる。
「一夜、冗談はここまでにして本題に入りましょうね」
と番長口調の女性の後ろから大人びた小さな女の子が現れた。年は小学三、四年生ぐらいに見えて一夜と呼ばれた番長口調の女性と同じ服装の幼女だった。
「っく、宮守先輩」
「あらら、後輩が悪い冗談が過ぎましてごめんなさいね。この子って本当は悪い子じゃないの。ただ悪戯をして相手の表情を見るのが好きなだけなの。だからあまり怒らないでね海北さん」
優しく一夜という女性をフォローして可愛らしく一礼をした。
アサルトライフルを構えていた月希も流石に小さい子相手に銃口を向けられず銃口を下して宮守という幼女を見ていた。
「「雅先生」」
月希と雹が口をそろえて言う。
俺と周が「えっ?このロリっ子が先生?」と言わんばかりのリアクションで驚いた。
「あなた達には紹介がまだだったね。あなたたちのクラスの担任を勤めることとなった宮守雅みやもり みやびです。あなた達二人のことは資料で拝見したわ。よろしくね」
と俺と周に何気ない笑顔で自己紹介をした担任の宮守先生はこんな小さな見た目なのに二十五を軽く超えている年だというリアルロリ教師に驚きがあった。
「こっちがクラスの副担任の
「「「「えぇぇ~~~!」」」」
月希と雹を含め俺達四人は盛大に驚いた。
月希と雹はこの人が副担任だったことを今知ったらしく、入学式に登校していた月希と雹に話を聞くには副担任の名前は聞いていたが直接見なかったと言う。
宮守先生に比べこっちはこっちで意外な驚きがある
「そんなに驚く事か。一応よろしくと言っておく」
こんな荒っぽい性格の人が教師をやっているなんてにわかに信じられない。しかも名前が妙に可愛いのが癪だ。
「自己紹介はこんなもんでいいかしら。早速本題に入るわね」
と言って宮守先生は世界第二大戦以降の本当の日本の歴史話してくれた。
核爆弾を落とされた日本帝国後の日本政府は未知の生命体 メテオを発見し、戦いを日本国民や世界には秘密にし、多くの日本国民は知らずにメテオとの壮絶な戦いに巻き込まれた。挙句の果て日本政府はバブルを崩壊させ、金融的打撃を世界に与えたのに日本政府は今だにメテオについては機密扱い。
そしてメテオの研究を試行錯誤を繰り返し、ようやくメテオに対抗できるメテオシルバーを発見し、メテオシルバーを体に取り込んだ人間をハンターと呼び、まともに戦えるようになったのは数十年ほど前、戦える者はいろいろいたが、良く戦ってくれたのは若い男女だったらしい。
現在では互角に戦えるようになったが、数では負けているらしく、そこでメテオと戦うための組織を日本中に学校として設立し、戦力増加を目指した。
その中の一つがが流桜学園だそうだ。
聞き漏らしたところがあるが理解できる範囲で判断すると俺達はとんでもない学校に入学してしまったらしい。
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