第6話 スライムズ2

 相手は電気を使うから電気を通しややすい金属の攻撃はあまり効かないそうでこちらの物理攻撃はできない。こっちの遠距離攻撃は実体のない光攻撃しかないが攻撃している最中にほかのスライムに狙われたら本末転倒、誰かに援護をしてもらうか、一人一体一気に攻撃を始めるかの二択だ。

 楽な方は。


「今から黄色いヤツに攻撃するから援護を頼む」

「わかった。ルイがユっちゃんを援護するから大船に乗ったつもりで背中預けていいよ」


 両脇にアサルトライフルを構えた月希が嬉しそうに志願した。

 さすがサバゲー女チームのウーマンのリーダーだ。頼もしいこと言ってくれる。


 月希の言葉に感動し、一息入れるようにあたりを見回した。周や雹がもう闘っていた。周はカゼライムと格闘技で戦っていた。雹はヒスライムと火花散る熱い戦いをしていた。


 残るのは俺と月希、相手はデンライムとミズライムが残っていた。二体の残り物のスライムに向け月希は二つのアサルトライフルで牽制して時間を稼いでくれてもらっている。

 想像する。今作る光の玉が銃弾のように飛ぶのを。

 無数の直径三センチ程度の玉を作り、弾雨の中にいるデンライムに向け飛ばした。すると光の玉が弾丸に当たって光の爆発を起こした。

 光の爆発に巻き込まれたデンライムは表面がえぐられていた。


 デンライムはえぐられた反撃に電気の塊を飛ばしたがミズライムの水鉄砲攻撃に当たり阻止されて、水鉄砲から流れてきた電気でミズライムが感電してダメージを喰らって痺れて動かなくなった。


 反撃の攻撃が力すべて使い果たしたように見えるデンライムはえぐられた部分を修復を専念するかのように動きが止まった。

 動きが止めたのも運の尽き、俺は回避ができないデンライムに向けて太い一本線のレーザーを発射させた。動きが止まっているデンライムはレーザーを防ぎきることができない。的となったデンライムはただレーザーを受け止めるしかできなかった。


 もろにレーザーにあたったデンライムは体の真中に穴が開いていてうごかなくなっていった。力尽きたようにデンライムのイナズマを思わせるような黄色の体がだんだんと光沢が現れ、黄色から綺麗な光沢の銀色の塊へ鉄球スライムと同じように変わっていった。


「まず一体目は何とか倒した」


 これで感電地帯が増えることはなくなったがまだ敵は後三体いる。

 やっぱり一対一はきつかった。せめて二人以上と戦わないとこっちがやられてしまうと一人で戦っている雹と周を見てそう思った。

 次はミズライムだ。奴は水になれる。水は物理的に触れるが切ったり、殴ったりできない。物理攻撃が効かなそうなスライムズの中での一番の強敵と俺は思っている。


 物は試しだ。ほんとに物理が聞かないのか実験してみようと思う。距離をとっての攻撃からだ。


「月希。ちょっとやってほしいお願いがあるんだがいいか」


 遠距離物理攻撃を得意とする月希に試しに効くか試すようにお願いした。


「別にいいけど。あたってもあいつはケロッとしてるよ」


 両手に構えるアサルトライフルの弾丸を豪雨のように撃ってミズライムの動きを牽制で封じながら器用に話している月希は「そんな事しても意味ないのに」と言いたそうに頷いた。


「それでもいい。とにかくあいつの動きと反応がみたい」

「わかった。ユっちゃんがそんなに言うのなら、めーいっぱい見せてあげる」


 月希はミズライムの体を集中的に狙って二つの銃口から複数の線を引いたように銃弾がまっすぐミズライム目がけて進んでいく。

 銃弾の二つの線がミズライムの体を通って貫通した。だが、確かにミズライムの体に弾丸は貫通したが月希の言う通り、ヤツはなにもなかったようにケロッとしていた。


 デンライムの攻撃の時に感電したのが治ったのか、元気よく水鉄砲攻撃を仕掛けてきた。

 とっさに金の壁作った。 それはミズライムの水鉄砲攻撃が防げるか不安がくるほど小さく、薄いものであった。何故なら水鉄砲を受け止めると徐々に水鉄砲が金の壁に吸収されて消えた。

 何を恐れたかミズライムはそそくさと周りの水たまりを回収に回った。


 それを追うように月希のアサルトライフルの銃弾がしゅんしゅんと音を立てながらミズライムの体を貫通していく。


「もういい。効かないことはもうわかったからあの二人を手伝っておいで」


 無意味なのは分かっているがしつこく銃弾を浴びせるのは映画でテロリストが民の死体を無残な姿になるまで撃ち続けるシーンを思い出すから見るにたえない。月希の攻撃はミズライムには効かないし、一人で戦うのはきついが周や雹の手伝いをしてくるようにお願いした。

 あっちの二人は近戦攻撃がメインだからてこずってるだろうし、協力すれば三体二だ。遠距離メインの月希に援護を任せれば簡単に倒せるはずだ。


「えー。美味しいとこ独り占めするの? 確かにルイの攻撃は効かないけど、ずるいよ。今度何か奢ってよ。ユっちゃん」

「わかったわかった」


 ブーブーと文句お言いながらも素直に聞いて、二人の元へ行ってくれた。

 月希の背中を見ながら二人の方を見ると、二人は連携を取ってヒスライムとカゼライムと互角に戦っていた。そこに援護に来た月希が参戦し、景気よく弾丸をばらまいていた。


 よそ見をしていると水鉄砲が飛んできて余裕でかわす。がその水鉄砲はデンライムの亡骸に当たった。当たった途端、デンライムの亡骸が溶けた。


 そんなことに気付かずに水鉄砲を防ぐために金の壁に隠れてカメハメ破方式で光の玉を生成。


 それを待ってましたと言ったように「キキッ」と鳴いた。

 するとミズライムはドロドロに溶けたデンライムの亡骸を体内に吸い込んだ。


 吸い込んだミズライムの体に変化が現れた。透き通るような水色の体に電気が走ったように見えた。次のミズライムの水鉄砲に電気が含めれていたが、金の壁に当たると電気もろとも水鉄砲は金の壁に吸い込まれるように消えていった。


 金属なのに電気が来ない、なんで。もしかして俺の力は奴らの攻撃を無効化する力があるのか。

 一か八かミズライムの周りにいくつもの金の壁を出したて、それに隠れながらレーザーやら光の玉などでミズライムを攻撃してみた。


 それらを繰り返して数十分が経った。ミズライムはボロボロな姿で体半分が光沢輝く銀色になっていた。


 これはこいつらにとってこの状態は瀕死に近いことを表していることは鉄球スライムやデンライムで理解した。ミズライムは途中でピ○チュウの十万ボルトを真似たような攻撃を仕掛けてきたので周りには避雷針として使った金の棒が数本ある。

 戦っている最中になれて自在に自分の力はできる範囲でできるようになった。今はもう金と光を混ぜたり、組み合わせてみたりとできるようになった。避雷針の中の一つを手に取った。棒の先に光の刃を付けてみて槍っぽくしてみた。


 弱ったミズライムにとどめを刺すために近づく。ミズライムは逃げる気力はなく、襲ってくる気配もない。

 そんな哀れなミズライムに、敵に自分と戦ってくれた敬意を込めて槍を模した棒を突き刺した。


「やっと終わったね」


 どこからか声が聞こえた。その声の主は周や雹の援護を任せた月希だ。


「そっちも終わったみたいだね」

「ええ、ルイが来てすぐにかたずいたわ」


 すぐに終わったのなら手伝ってほしいと言いたかったがもう後の祭り、終わったことは気にしない。

 それが男の性というものだ。今は女だけど。


「私たちさっきはすごかったんです。水泡さん!」


 周が興奮した表情で近づいてきた。

 三人から話を聞かせてもらうと。話は月希が援護にいった時になり。


「あ~あ、せっかく二人っきりで戦えると思って援護して期待してたのに。だけど、ルイの攻撃が効かないのは仕方ないけど、ユっちゃんはもっとルイを頼ってほしいよ」


 月希は幼馴染の水泡雪に頼まれ悪戦苦闘している雹たちを援護に向かう途中アサルトライフルを両脇に挟んでどんな状況でも対処できる体制でそんなことを思っていた。月希は恋する乙女。幼馴染の水淡雪好きでたまらない。だからこんな状況でもライバルを裏切って二人でいたいと思ってしまう。


 ライバルというのは雹を指すが、あともう一人恋のライバルと思われる人物が現れた。それは自分が愛しいと思う幼馴染が助けた間城周、いろいろあって今は戦っている。


 幼馴染の水泡雪は自分の気持ちに気付いていない現実に噛みしめる。

 恋愛意識が鈍い人物を天然のジゴロというのだろうか。いや、絶対に天然のジゴロと言うべきものだろう。


 友達に雪のどこが好きなのか聞かれても困るが強いて言うならば自分の自由気ままな性格を受け入れてくれて幼いころからいつでも笑顔で付き合ってくれるところに惹かれていったのかもしれない。従姉妹の雹も同じで初めて会った時に冷たい性格を優しく受け入れてもらったことが気に入ったらしい。


「雪くんと一緒に戦うなんて、一人だけいい思いなんてさせない」


 雹は月希に嫌味たらしく、羨ましそうに言った。


「雹ちゃん、別にいいじゃん。減るものじゃないんだから」

「私も月希さんが羨ましいと思います」


 周がカゼライムと交戦中にも関わらず余裕なのか、ジト目でこちらを見ていた。

 周は交通事故時に今ミズライムと戦っている水泡雪にトラックから弾かれた時、庇ってもらってそこから惚れてしまったそうだ。


「そんなの幼馴染だから当然なの! 羨ましいことなんてしてないもん」


 月希は誤魔化すように右のアサルトライフルを振ってカゼライムに挨拶がてら撃ち始めた。二つの銃口から出る銃弾は素早く動いているカゼライムを襲って、体を痛々しく貫通していくがすぐに修復されてしまう。


「あーもー。なんで治っちゃうの。そんなのチートだってあり得ないよ」


 地団駄を踏みながらも月希は一生懸命、カゼライムがデンライムと戦っている雪を攻撃しないように牽制とカゼライムに隙を作ってそこを周が攻撃してダメージを増やしたり、銃弾でハチの巣にしたりとてんてこまいなことをしていた。

 攻撃に忙しい月気に対して周は拍子抜けすること聞いてきた。


「あの~。なんで私だけを援護しているのですか?」

「なんでって言われても。雹ちゃんはあんな奴に負けるはずないもん」


 月希は何故、雹の援護をしないかというと信じているからであるが、周が気付いてないだけで月希は雹がピンチになればヒスライムに向け撃っているし、周の波動弾が雹の手助けをしているが、雹はそんな事が無くても十分に戦える。数ヶ月だけの練習で剣道の大会を優勝は伊達じゃない。


「細かいことはきにしない。ちゃっちゃとこいつを倒しちゃおう」


 ゴロン


 何やら、重たく固い物が転がる音がした。また誰かがスライム一体を倒したようだ。

 誰が倒したかもうわかりきっている。その人物は雹である。


 雹の足元には火柱を立てながら真二つになったヒスライムと思われる光沢輝く銀から鈍色に変わっていく塊が転がっていた。その時、周や月希は火柱の中に凛として氷の如く立ち尽くす姿の雹は美しく名前の通り雪月花に二人はつい見とれてしまった。


 そんな美しい雹が突然、両手の日本刀を一線に投げた。日本刀が雪と月希の間を通りすぎる。

 何事かと日本刀の行先を視線で追う。

 そこには二本の日本刀がカゼライムを虫の標本のように串刺して動きを止めるように刺さっていた。


「なによそ見しているの?そんな暇があったら戦いなさい」


 次の攻撃を備えて新たな日本刀を手に出現させ、無表情な顔で二人を睨む。


「すみません。貴方が綺麗に見えたのでつい見惚れてしまって」

「それでこそ雹ちゃんだ」


 周は何回もぺこぺこと頭を下げて詫びていた。その反対に月希は注意されたにもかかわらず「お見事」と拍手をしていた。


「同性にそんなこと言われてもなんも嬉しくない。そんな言葉はまたあの人に言ってもらいたいわ」


 無表情な顔が赤らめた。


「おおっ‼デレた―!雹ちゃんが照れてるー。可愛い!可愛いすぎるよ!」


 月希は小学男児のように雹を照れているか分からない表情をしている雹を面白可笑しくからかって楽しんでいた。


「あなたは少し反省しなさい。早くあいつを倒しましょう」


 日本刀の柄で月希の頭を一つ叩いた。


「そうだね。早く片付けてユっちゃんを手伝いに行かなくちゃ」


「っ‼」


 叩かれた頭を摩っていた月希の言葉に雹と周がぴくと言葉にならない反応を表した。


「そうね。早く片付けないと一人で戦っている雪君が可哀想」

「はい!一人で戦っている雪さんに申し訳ないですし、とどめを指した人が雪さんを手伝えることなんてどうでしょう?」


 周の提案にほかの二人もいい反応を示した。


「おおお!いいねいいね♪それいいね。ルイもユっちゃんを手伝いたい」

「あなたはダメよ」

「雹ちゃん、なんでルイはダメなの?」

「そもそもあなたさっきまで一緒に戦っていたんじゃない。二回も羨ましいことはさせないわ」

「それはそれ、これはこれでいいじゃん。雹ちゃんのイケズー」

「わたしは別にかまいませんよ。ただ単に誰かがとどめをさせばいい話のことですから」


 自分がとどめをさせると言いたそうに自信ありげな周が月希の参加を許可した。


「アマネン!ありがとう。君はいい人だね」

「アッ、アマネン⁉」

「うん。そうだよ。私が考えたアマネンのアダ名だよ♪」


 一回は拒否された雪共同戦争奪戦に参加を認められたことが嬉しいのか月希は周にアダ名を付けた。

 一方付けられた側の周は一応嬉しいがどういった反応をしていいか困っていた。


「じゃっ、参加を認められたことだし、さっさっと片付けますか」

「一対二じゃあ、仕方なく認めざるおえないわね」

「私はとどめをさせる。私はとどめをさせる」


 日本刀で動きを止められている敵に三人の少女たちによる容赦なきカゼライムフルボッコ大会が始まったのである。


 まず、日本刀による斬撃、岩を砕くような鋭い正拳、止むことのない豪雨にも等しい弾雨、三種類の攻撃が動けないカゼライムを襲う。攻撃に耐え続けるカゼライムの体は耐える度に風を思わせる緑色が徐々に鈍い銀色へと変わっていった。


 あと一回で完全に銀色の塊ができると三人の少女の脳によぎる。

 月希はアサルトライフルからスナイパーライフルに変え標準を合わせ最後の攻撃に入って引き金を引く。雹は刀身を光に変え居合いの体制に入る。そして刀身を最大限までの長にした日本刀から光のカマイタチのような斬撃が出た。雪は波動を拳に込め、渾身の一撃を放つ。

 三人の攻撃が同時に当たり、カゼライムの体が見事に弾けとんだ。


 そんな光景を見た三人は誰かがとどめをさせたのか分からなくなった状態で誰が好きな人と一緒に戦えるか口論になった。


 口論の結果、三人が出した答えは一人で戦う雪を暖かく見守ることにした。それは当の本人にとっては残酷な答えだったのだが三人は四人で戦った方が返って戦いにくいと理由を付けて「やめよう」と口をそろえて言った。本心では誰もが二人っきりで戦いたかったが引き分けになったことで言い出しにくかった。


 それで三人が出した答えの中で最も三人が平等的になり、誰が満足し納得した。

 しばらく三人は一人で戦っている雪の奮闘ぶりを生暖かい見守ることとなった。

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