第5話 スライムズ
鉄球スライムはめり込んだ壁から抜け出し、飛んで俺達の方に向かってくる。瞬間移動はもう使えないのか使わずに突っ込んできた。
突っ込んできた鉄球スライムが狙ったのは八代さんだった。
八代さんは避けようともせず光に包まれた拳を引いた。
「えい!」
ズン!
八代さんの射程距離内に鉄球スライムが入ってきた刹那、八代さんは力いっぱい鉄球スライムを拳で突いた。八代さんの攻撃で鉄球スライムが勢いよく弾き飛ばされ壁に激突する寸前に鉄球スライムの姿が消えた。
ガッキーン
鉄と鉄が思いっ切り強くぶつかる音が聞こえた。
音のした方へ視線を向けるとそこには鉄球スライムを二本の日本刀で受け止める雹の姿があった。その二本の日本刀の刃は俺の両腕のような刃をしていた。右手に光の刃の日本刀、左手に金の刃の日本刀が交差して鉄球スライムを受け止めていた。
そして雹を援護するように鉄球スライムに向け銃を構えた月希が引き金を引く。
バン!
弾が出ないと思っていた銃口から吐き出される銃音が部屋の中に響いた。
拳銃程度の銃弾が鉄球スライムに当たるが対してそんなダメージがないようだ。
「これがだめならもーっと良い物を浴びせてあげるからね☆」
月希の手からオートマチックの拳銃が消え、代わりにガトリングガンが現れた。
「雹ちゃん! 危ないから避けてね」
雹が鉄球スライムを弾いて、月希がドドドとガトリングの銃口から弾丸の豪雨を鉄球スライムに浴びせた。
止むことのない弾丸の雨に打たれ火花を出しながらも鉄球スライムはその名の通り鉄球みたいに硬く弾を弾いているがスライムの如くぐにょぐにょと動いているがとても弱弱しく見える。
相手がタフなだけで確かにこの攻撃は効いている後は時間の問題だ。
俺も参戦しなくて悪いなと思いだんだん罪悪感を感じ始めてきた。だけど俺はどうやって闘えばいいんだろう。俺は全てが途中半端だ。月希に教えてもらったサバゲーの銃の構え方や地形を考えての闘い方、すべてが半端だ。ここでは役に立たない。
「ユっちゃん!見ていないでユっちゃんも闘ってよ」
「闘えって言われてもどう考えて戦っていいのか分からないだよ」
「分からないんじゃない。考えてないで心で感じるんだよ。心で!」
「そうよ。感じて思った通りに闘えばいいのよ」
月希に続いて雹はガトリングが止まるのを待ちながら鉄球スライムをどう切ろうか迷いながらのままアニメや映画にありそうなセリフを恥ずかしげなく言った。
なにこの展開。まるで格闘映画やアニメみたいで自分が彼女たちの弟子みたい。弟子とは言えなくないけど一応サバゲーについて教えてもらったから。
俺が思うもの。いろいろな武器、闘い方が浮かび上がる。
左手に光を集めた。
レーザーが出ると空想し、集めた光の塊を作り出しレーザー打ち出す念じた力を込めた。すると光の塊から人の腕程の太さの光の一線が放たれた。
スーーーン
一閃の先、月希のガトリングの豪雨を浴びていた鉄球スライムが風穴を開けていた。
すぐに風穴が塞がってしまう。だが、月希のガトリングが止まる瞬間を狙い雹が鉄球スライムを切り掛かり真っ二つにした。
真っ二つになった鉄球スライムはキッキキと鳴いて力尽いた。
すると力尽いた鉄球スライムはだんだんと光沢が綺麗な銀色の塊へとなっていった。
「動かなくなったわね。やったのかしら」
「動かなくなったのはなったけどなんかめちゃ綺麗な金属になったよ」
月希は鉄球スライムの亡骸をガトリングの先でつついた。
「ルイは物足りないからこいつでいろいろな銃器が出せるか試し打ちついでに鬱憤を払わせてもらうね」
動かないことがわかると亡骸を銃の試し打ちの的にするらしく、アサルトライフルやスナイパーライフルなどのいろいろな銃を一つずつ出してぶちかましていた。
亡骸が銃弾で削られていくのを見て無残だなと思い、月希にやるのなら真っ二つになった片方にしてくれと言おうとしたが。
「月希ばかりずるいじゃない。私も日本刀の試し切りがやりたいわ」
無表情に月希を見ていた雹がそう言って日本刀を手にもう片方の亡骸に近づいて月希に独り占めはずるいと文句を言った。
「じゃあ雹ちゃん、半分こしようよ」
「それならいいわ」
月希は雹の意見に呑み真っ二つになった亡骸を二人で分け合うことにした。
二人が自分の武器の試したいと言い出して、そしてだんだん自分も自分の武器がどんなもんか試したくなってきた。ふたりにある意見を言った。
「それなら、四等分にしようか。それなら公平だ。雪月花さんもう一回切れる?」
「えぇ。余裕で切断できるわよ」
早速、雹が金色の刃の日本刀だけを持ち鞘を出して日本刀を鞘にしまう。そして居合いの構えをとり呼吸と力を安定に保ち一閃。
「はあぁぁ‼」
亡骸が綺麗に四等分になった。月希と雹は自分の分を蹴って邪魔がいない場所に移動し我武器の味を試しに行った。
四等分にしたら小さくてやりにくいが試すのに十分。さて俺はどんなことできるかな、例えばアニメみたいに地面から金色の鉄を突き出したりできるかな、やってみないとわかんないし善は急げって言うし試してみますか。
そんなことを思い亡骸を実験台にしようとやりやすい位置に移動しようと近づいたら、鉄球スライムの亡骸をただじっと見つめる約一名がいた。それは八代さんだ。
八代さんは何かに気がついたのか、それとも不自然なことがあったのかもしれない。声をかけてみることにした。
「八代さん?どうかしたの?」
「いえ、これで物足りなく終わったのかなと思いまして、まだ何か残っている気がしてきます。あっ! こんな危険な状態で物足りないなんて私わがままですね。皆さんは命がけで戦ってくれたのに私はただワンパンだけで済ませて」
物足りない彼女は確かに一発の正拳突きしかこうできしていない。だが今は違う敵を倒したからだ。
それに今は月希や雹は凄惨な遊びを楽しんでいる。
「君は十分戦ってくれたよ。正直俺も物足りないって思てたし」
俺も攻撃は一度しかやってない。レーザー光線で鉄球スライムのど真中に大きな穴をあけただけ、彼女と同じで全く動いてない。
「こいつを倒したことだし、後はここから出してもらうだけだから気長に待とう」
「貴方がそういうのなら私はこの物足りない気持ちを我慢します。代わりに私のことを周と呼んでください。読んでくれましたらお礼としてこれをさし上げます」
「じゃあ、周と呼ばしてもらうよ」
八代さん改め周は嬉しそうな表情をして自分の分の鉄球スライムの亡骸を拾い俺に差し出してきた。
別に我慢しなくていいんだけど周がそういうなら。
「ワァッ‼」
周から受け取った亡骸がドロドロに溶けて、その驚きに思わず落としてしまった。
あたりを見回すと俺の分の亡骸もドロドロに溶けており、月希や雹が遊んでいたものも溶けて、俺が落とした場所に目がけて一か所に集まろうとしている。
「なにこれ気持ち悪ーい」
月希がまたドロドロに溶けた亡骸をスナイパーライフルの先でつついてたり、試しにスナイパーライフルでドウと一発撃っていたが生き物らしい動きがなく無反応、ただ磁石に吸い寄せられるように集まっていく。
だんだん意識が重くなっていく。すると隣にいた周が苦しそうにばたっと地面に伏せていた。
「お、おい、周大丈夫か?」
声をかけも返事がない。もうろうとする意識の中で彼女を頑張って揺さぶってみるが起きない。
俺もドロドロに溶けた鉄球スライムの亡骸を避けて周にかぶさるように倒れた。
倒れてから数分が経ち、意識の重みが消えていて、体を起こそうと試みると何かが体にかぶさっていた。それをどかしてみると周だったのでまた揺さぶって起こしてみると俺はあることに気がついた。
「あれっ?もとに戻ってる!」
それは目の前に周の体、そうさっきまでこの体で戦っていて体が目の前にあることだ。そうすると今この体は誰と言うことになるのだが倒れるまでのことを思い出すと倒れ時の流れでは周が動かしていた体、俺のクローンだ。即ち今俺が動かしている体は俺のクローンの体に戻っていた。
と言っても俺は本体の体に戻りたかったけどね。どんな状態でどこにあるのか不明だけどきっとここのどこかにあるよね。
あたりは変わらず鉄の壁に囲まれている部屋床に倒れている三人の少女、周と月希、雹を起こす。
「あへ、ここはどこへすか?」
寝ぼけた眼であたりを見回す周。数分でこんなに寝ぼけられるなんてすごいとしかいいようがないくらい熟睡感を漂わせていた。思わずお前は「お寝坊さんか」って突っ込みをいれたくなってしまう。
「うぅ~」
「私、ちょっと眠っていたようね」
唸ったのは月希で頭を抱えていた。
雹の方は日本刀を杖代わりに立とうとしていて、月希と同じく頭を抱えていた。
月希と雹も俺達と同じく入れ替わりが治っていたみたいだ。
月希は眩暈を振り払うために頭を振っていた。視力が戻ると両手にフルオートの拳銃を出現させて銃撃アクションするかのように構えをとった。
「ユっちゃん何あれ?」
構えをとった月希は拳銃を俺と周が倒れていた場所に向けた。
視線を向けると床の異変に気がついた。それは溶けた亡骸を落としたところの床が音をたてながらひびが入って、ねじれたように気味悪く歪んでいた。
その歪みから四つの影が出てきた。
四つの影は鉄球スライムに似ていたがその形や色が異なっていた。
一つ目は燃えている様な赤い色、ヒスライムと呼ぶことにした。二つ目は水のように透き通るような綺麗な水色、ミズライムとこれも呼ぶことにした。三つめは痺れるようなイナズマを思わせるような黄色、デンライムと呼ぶにした。最後、突風のように素早そうな薄緑、カゼライムとこれも呼ぶことにした。
「また、変なのが現れたわね。どうかたずけようかしら」
「そうだよねー。一難去ってまた一難だね。私の銃口が火を噴くよ」
日本刀を手に静かに睨みつけている雹に続いて月希が拳銃をスライムズに向け構えて戦闘体制をとって弾丸をばらまいた。
恐れを知らないスライムズは弾雨を避けながら俺達を観察し、固まんない様に広がって隙を窺っている。
さっきは練習ができなかったから自分はレーザー以外何ができるかやってみたいし、一人一体ずつ戦えばいいし、ダメなら協力戦だ。
俺も戦闘体制に入るために右を金に、左を光に変えた。
さっきの闘いでコツがつかめたから、腕がすんなりと金と光に変えられた。
まず、一度にどのくらいレーザーを打てるかヒスライム目がけて試してみた。標準は滅茶苦茶で外しまくったが連射で五本は打てた。
そのレーザーのおかげでスライムズを牽制した形になって、さらに警戒強くした。
「あらら、ユっちゃんもう攻撃しちゃったの? さっきのヤツと違う色をしているし、どう攻撃されるかわからないよ」
最初に攻撃しそうな月希に意外な指摘を受けた俺は一理あると思ってしばし様子を見ることにした。
「ルイの言う通り、さっきのとは違うかもしれないし、どんな攻撃を仕掛けてくるかわからない。だからまだ攻撃は早いわ」
凍るような無表情の雹は月気に同意し、まず相手の動きを観察し、判断をしてそれぞれ攻撃と言っていた。
「私もそれがいいと思います。攻撃方法は色でなんとなくわかりますがあえて観察することも大事だと思います」
周も同意した。
周の拳をよく見るとウルバリンの爪に似た金色周かぎづめを左手だけに付けていた。それはとても鋭く切り裂けるような鋭さをしていた。
意見道理に相手を観察。
敵の四体はこちらが攻撃を仕掛けえてこないことがわかると攻撃を始めた。攻撃が来てかわしても防除は取らない方法で敵に触れない様にしてひたすら観察。
大体敵の攻撃、動きのパターンが読めてきた。
ヒスライムは火の塊を飛ばして攻撃と自ら燃えて体当たりしてくる。
ミズライムも水鉄砲のように狙った物を水で飛ばして攻撃、自ら水になって相手を襲うか相手を滑れせて隙を作らせようとする。
デンライムも電気の塊を飛ばて攻撃、電気に包まれて体当たり。
カゼライムは他の三体とは違い、素早く動いてカマイタチを発生させて攻撃を仕掛けてくる。
火と電気の実体のない物に塊っていうのは甚だしくおかしいがそう見えるからしょうがない。
この四体が連携とって攻撃を仕掛けて合わせ技を繰り出してくる可能性もあるが今のところスライムズは個人で攻撃を仕掛けてくる。
まず、倒すべきなのはデンライムだ。理由はミズライムが出す水鉄砲攻撃でできた水だまりにデンライムの攻撃があたると電気が走る水たまりになってしまい感電を防ぐために避ける必要があり行動範囲が狭まってしまい戦いにくくなってしまうと考えた。
これはある意味合わせ技なのかもしれない。だから感電地帯を増やされてしまうと動きにくくなって隙ができる。一刻も早くデンライムを倒す必要があると言える。だが、面白いことにスライムズは互いの攻撃を避けている。もしあたってしまうと自分がダメージを受けてしまうかのようにミズライムの水鉄砲攻撃が偶然ヒスライムの攻撃に当たって爆発した。爆発後の場所を見ると何か細かい物がキラキラ光るものが見えた。
「あれは何だ」と気になるが調べている余裕がない。
避けて観察をしてみると三体のスライムに違和感を覚えた。それはヒスライムやミズライム、デンライムの三体が互いの近くに攻撃が行かない様にしている。
特にミズライムだ。あのスライムも感電地帯ができるのを避けている様に見える。
なにか不利なことでもあるのか。感電地帯で感電するなら近づかなければいい、それになんでミズライムは水鉄砲中心の攻撃なんだ。体当たり攻撃はできないのは見ていてわかったがそれにしても体当たりの他に戦攻撃はいろいろとあるはずだ。
水鉄砲だけなんだ。
それにヒスライムとデンライムだ。
遠距離攻撃が少なすぎる弾数でもあるのかと思わせるように攻撃は十回中九回が体当たりで残りの一回が塊を飛ばす遠距離攻撃。異常なほど慎重過ぎる。
遠距離攻撃の方が有利なのにそうしない。
水にできて、火や電気ができない物なんだ。
隙を見つくたミズライムは水たまりを吸い上げていた。
火と電気は回収ができないで何故水だけが回収ができる?
細かいことは置いといて、あの二体は遠距離攻撃に慎重なるのは分かったし、あのミズライムが感電地帯を作らないのは自分も感電してダメージを受けるので水たまりが回収できない。
水鉄砲を連射できるのは回収ができるから無限に打てるからミズライムは遠距離攻撃が中心で、回収ができないヒスライムやデンライムは近距離攻撃が中心になる。
早速、先にデンライムを倒すとするか。
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