第1話 俺って女だったけ?

「んっ?」


 俺は薄っすらと目を開けると目の前に広がるそこは深い深い暗闇だった。


 暗くて何も見えない恐怖を覚えそうな程に。シーンと擬音のようなものが耳に響く。

 何か目を覆って見えなくしている気配も感じない純粋な真っ暗闇な視界。動こうとしても体が思うように動いてくれないまるで金縛りにでも罹っている様に。

 普通の人なら目覚めて体が動かなく自分は存在しているのか疑いたくなるような何見えない暗闇に対して「ここはどこだ。なぜ自分はここにいる」と必然的にパニックを起こすだろう。


 だが俺は脳震盪を起こしている時みたいに意識がフワフワと浮いている様な状態で脳がうまく機能せず、自分の身に何が起きているのか分からない虚ろな状態でパニックしている余裕はなく、今の自分には喜怒哀楽が微塵もなかった。


 だから自分が何やっているのか分からないほど意識がはっきりとしていない。

 今、「自分の顔はとんでもない間抜け面に違いない」っと寝ぼけた頭の片隅に呟いたがこれすらもたまたま浮かび上がったワードか自分自身の心の呟きかは定かではない。

 けれども暗黙の暗みの中で喜怒哀楽がない自分は爽やかな気分だったのは間違いない。

 頭が働かないのか暗すぎてわからないのか東西南北の方向が分からない暗闇を虚ろながら辺りを見回すと微かだが背中に平たい物が触れているような感触がある。


 意識すると体重が後ろに掛かっているみたいに自分はきっと仰向けに倒れていると錯覚した。


 そして虚ろながらも見えない暗闇の中に何かがあるのか気になって好奇心がうずく。


 俺の性格がもともと好奇心旺盛な性格だったように深い暗闇の中に何があるのか知りたくてしょうがなくなってじれったい気持ちになる。


 おぼつかない頭でそんなことを思っているとフワァーと湧き出るように少しだけ自分に関する記憶を思い出した。


 脳に好奇心という刺激が加わったのか理由は分からないけどだいぶ記憶が蘇った。


 まだ体は自由に動かせないが思い出したり、妄想するレベルまで脳が回復したようだ。


 根拠や証拠がない予想だが、ここはきっとアニメや漫画によく出てくる人体実験や人体改造などの非人道的なことを簡単にするための研究施設だろうと見た。


 そうして俺はこれからそういった類いの被験者にされることだろう。


 改造するなら正義のヒーローみたいなスーパーパワーが使えたり、見た目が変わらないサイボーグがいいな。俺の個人的な趣味も含めて。


 超常現象みたいなことが身に降りかかるなんて少しは嬉しいな。


「でも拉致監禁は流石に嫌だな」


 俺はこう見ても人一倍好奇心旺盛で健全な日本男子だ。けれどもいくら好奇心旺盛とは言っても嫌物はいくつもあるし、自分の命は可愛い。


 それが俺。名前は、水泡 雪。


 料理などの家事全般が少しできるが家事以外がオール平凡中の平凡な男子。


 趣味はだらだらと本を読むことともう一つ趣味がある。

 それはオカルト。

 それが大好物にして大好物。

 常にスカイフィッシュの尻尾を追っている。

 将来の夢はアメリカのホラーサスペンスドラマのようなオカルト関係が得意とするハンターになって悪い怪物を倒して人を救うこと。


 まっ、こんな中二病を拗らせた様な浅はかな夢は冗談だけどね。だけど色んな生き物に触りたいし、ポルターガイストみたいな超常現象を体験したい。

 これは将来の夢ではないけど一種の生きている中で超常現象と出くわすことや普通では経験できないありえない体験を目標として夢見ている。なぜそれが夢ではないく目標かというと現実の人間は夢を見て、食って、心を満たせないからだ。

 しかし、その目標はある意味、今現在の状況で普通では経験できないこととしてすぐに達成できている。


 夢や将来でやりたいことはまだ見つけていないし、何をしたいのかわからない。だから風の行くまま、流れる時に任せて過ごしている。


 そして今年から親元から離れ、叔父が仕事の都合で住めなくなったという家を叔父に頼みこんで借りた二階建ての一軒家に住ませてもらっている。


 家の中は家具諸々は叔父の借り物だらけだから掃除は一週間に一度のペースで綺麗にしている。食費とかも仕送りしてもらっているから不自由なく生活を送っている。

 父さん、母さん、本当にありがとう。


 一人暮らしを始めることとなった大きな理由は。

 俺には上と下に二つずつ年の離れた姉と妹がいる。その姉と妹が下らないことでいつも家の中だろうが、他所様の前だろうが関係なく喧嘩喧嘩の毎日。


 疲れを知らない姉と妹はいつも飽きずに喧嘩して騒がしいと言っても切がない姉と妹、それをあきれ果て眺めるだけ俺。

 それが水泡家のいつもの日常だ。


 その騒がしい日常が一番の理由。

 ほかにも理由があるけれど、例えば両親が暮らしている家より学校から近いとかがあるが水泡家のいつもの日常の理由から比べれば学校から近い理由はその他以下に入る。


 一人暮らしが決まった時、父親には姉妹喧嘩から逃げたとか見捨てたとか人聞きの悪い嫌味を言われたが別に家族が嫌いなわけではない。むしろ仕送りしてくれることに対してとても感謝を号泣しながらしている。

 だが、姉妹喧嘩は鬱陶しくていたたまれないから嫌いだ。


 両親は「微笑ましい姉妹関係」と言って喧嘩を止めるのを諦めたころはそう言っていたが、最近では飽き飽きして姉と妹の喧嘩を眺めるを通り越して完全無視。


 昔は両親も最初は俺と共に止めようとしたが喧嘩の理由が分からずのまま一回止めても数秒後にはまた別の理由で喧嘩が始まるの繰り返し。

 無限ループし続ける終わりの見えない喧嘩を止めるのを諦め、今となっては両親と共に喧嘩を無視するか見続ける悲しい傍観者へとかわってしまった。


 日々繰り返される姉と妹の喧嘩に嫌気がさしてきて、ついに高校に入ってから念願の一人暮らしを始められることになった。


 はじめまして、静かなる自由よ。


 今までの喧嘩を思い出そうとすると喧嘩をやめるように言っても聞かなかった姉と妹に対して胸からマグマに似たグツグツ煮だった感情が体内を溶かす勢いで、今まで我慢してきた分の感情が出てきそうだ。


 これでやっと鬱陶しい姉と妹の低レベルな言葉の戦争から解放されると一人暮らしが決まった頃の自分はそう思っていた。


 これほどまでに一人暮らしを望んでいたか誰も俺の気持ちなんか理解しないだろう。


 俺は今までに姉と妹と喧嘩をしたことがない。家族仲良く暮らしたいから無駄な争いを避けるべく、ただくだらない喧嘩に参加せず姉妹喧嘩の光景を眺めるだけの、傍観者として過ごしていた。

 奴らの喧嘩から離れられた自由を、静かなる平和へと解放された人生を満喫して楽しんでやるぜ。


 これから幸せな一人暮らし&高校生活を送らせてもらいます。姉と妹という邪魔者が入って来なければの話だけど。

 あの二人、しばらく経つときっと遊びに来るよ。絶対そう思うよ。


 最近までの俺の日常の記憶を思いだしていた。


 今、監禁状態となっては騒がしかった、あの時の日常は騒がしくはあったが楽しい幸せな日常だったなと思い、あれほど鬱陶しいと思っていた姉妹喧嘩を見られなくなったと笑えないほど寂しく後悔している自分がどこかにいる。

 人は失った物大切さって本当に失ってから気づくんだね。


 だが後悔してもしなくても状況は変わらず、目の前はただの深い暗闇の中。

 何かを思い出すにつれ、頭がぐらぐらと揺らいで視界がぼやけている。

 それから俺は何時間もかけて暗闇の中でじっと静かに意識が回復するのを待った。


 意識が回復するのを待っている間、覚醒してから今思い出した中でいろいろな記憶を整理し、何故こんなことになってしまったのか新しいと思われる思い出せる範囲での記憶を整理してみた。


「!」


 ここにいる理由を探している時、頭に電気が走った様な衝撃的な感覚に陥り、今現在の状況の原因になる壮絶な物を思い出してしまった。


 思い出した途端にだんだんと感覚が回復してきたが体中がまるで自分の体ではない様な不思議な違和感だらけだった。


 違和感だらけなのも無理もない。

 俺は女の子を助ける為にトラックに撥ねられたのだから体に違和感があるのもしょうがない。

 感覚が回復してから猛烈な痛みが体中を駆け回ると思っていたが、体は動かないこと以外は、感覚がまるで鉛のように重く、だが不思議と痛みは一つも感じられなかった。

 一つ推測をたてる。


 痛みが感じられなかったのは上事故から今まで数ヶ月、数年の間植物人間状態で完治したので多少脳が動いているがまだ正常に働いていないからだろうか。それとも完全に脳が回復していないから痛みすら感じないのか。


 どちらにしても久しく脳が目覚めて今そう感じているから体はまだ動いてはくれないだろう。


 暗い上、まだ視界がぼやけていてよく見えないし、完全に動けるようになるまで時間が掛かりそうだ。


 本当にそうだったら、完全に感覚が回復したら体中が痛みそうで怖いけど動けるようになったら見たことがない不思議な物が見えるような気がする。一度、死にかけているから幽霊的な何かがね。


 そしてここは人体実験とかの研究施設ではなく、きっと病院の重傷患者のために安静させる入院部屋だろう。


 俺はここで何ヶ月、いや、何年寝ていたのだろう。俺が起きたし、何日か経ったらリハビリが始まるだろう。


 そう思うとリハビリはきつそうだな。頑張るしかないか。

 今は昼だろうか、夜だろうかどっちだろうか。

 一緒にトラックに轢かれたあの子はどうなったのだろうか。生きているだろうか。

 俺が生きているのなら彼女はきっと無事だろう。俺の記憶では事故の時は彼女の傷は浅かったはずだが、最終的にあの子と共に轢かれたわけだが。


 今頃は達者で学校に行って、笑顔で女子高生ライフをエンジョイしていることだろう。


 なんだか、羨ましいな。

 少し安心したからかなんだか眠くなってきた。


「今のうちに眠ろうかな。誰もいる気配がないし。きっと今は夜だよな、患者はおとなしく安静にしなくちゃいけないよな」


 夜だから今は暗いのか、それとも患者を安静にさせるためあえて見えないほど暗くしている対策か知らない。


 どちらにしても体がうんともすんとも動かないから暗かろうと今は関係ない。

 ナースとか見回りに来るだろうし、誰かが来たら起きればいいし。

 今は体が動くまで体力を回復するのを待つしかない。


「しばらく寝るか」


 目を瞑ると意識が雫の様にゆっくりと闇に落ちるのを感じた。

 しばし、眠りについた。


 次に目覚めた時も目先が真っ暗だったが、さっきと変わったことがひとつだけあった。

 それは少し手足が動くことに気付いた。

 あれから何時間ぐらい寝たのか知らないけど少しばかり体力が回復したようだ。首もちゃんと動かせるのに対して、前に目覚めた時から目が暗闇になれないのはなぜだろう。


 部屋の暗闇の中で一向に目が慣れないことに不服を思いながら体がどこまで動けるのか試した。

 一応、動かせるところは試しに全力で動かしてみたがめちゃくちゃ疲れた。

 試してみて分かったことは十分に体を動かせるまで回復は後もう少しかかること。


 否、体はもう十分回復した。

 だって俺が動けないのは目覚めてからの運動不足で動けないのもあるかもしれないが、理由は大きく単純。ただ単に手足に頑丈な枷を付けられているから動けない。


 そして俺が寝かされているのは病院の安っぽいベッドでなく、人体実験で使われていそうな固いく平たい物に括り付けられて寝かされていた。

 目覚めた時の予想していた通り、よく漫画やアニメでよく見かける光景の様に手足が括り付けられているから道理でピクリとも体が動かない訳だ。

 記憶がないからトラックに跳ねられてから目が覚めた時の間の俺が正気ではなくなって暴れたからこうやって括り付けられて拘束状態でいるとは思いたくない。


 今の状態を簡単に説明するとアニメや特撮の悪党に実験台に括り付けられて改造されそうになっているヒーローそのものになっている画にそっくりである。


 特撮物のとおりだともうそろそろ照明がついて謎の組織の悪党どもの姿が見えるはずなんだが、この先見てはいけない物を見てしまう嫌な予感がしてならない。


 パッ


「‼」


 すると予想道理に照明がついたのだが。

 照明がついたのだが、目の前が予想だにしなかった光景が飛び込んできた。

 それは自分の体がある奇想天外な状態になっていることに気付き、照明がついてと願ったことを今までにないほど後悔し、悶絶するほど絶句した。

 裸なら多少驚きはする程度で済むのだが、それ以上の変化が俺の体にあった。


 体が女へと変わっていたからだ。

 あれれ?俺って本当に男だよね?俺の記憶に間違いがないはず。


 目の前には透けるような純白の己の美しい体に綺麗な立派な双丘の頂点に突起。

 俺の記憶が正しければ、俺の今の状況は女体化と言うやつだ。

 そう、俺の身体は女体化していた。

 テストに出ませんが大切なので二回言いました。


 生まれてきて十五年、男として生まれ。男として育って歩んできた。

 なのに、いったい俺の体に何が起こっている。

 男から女へなるなんてオカマになる道意外に他に何がある。

 このご時世、望んでいれば金が何とかしてくれるが、俺は一つも望んでいなければ金も積んでいないのにどうしてこうなる。


 こうなってしまっては自分の人生と運命を含め、すべてが信じられなくなってしまうのも当然かの様に世界に対する見方が偏って疑心暗鬼の世界が目の前に広がってくる。


 そもそもこの記憶は正常なのか。

 自分の記憶が信じられない。本当はこれは夢だ。夢であって欲しい。


 新宿二丁目の人達もビックリなオカマを通り越して本当に性転換に成功した己の体に絶望し、人生で一番の大量の涙を流した。


「なんで俺は女になっているんだ‼その前になんで裸なんだよ‼」


 本気で泣き叫んでみるが状況が変わらない。ただ無駄に涙が零れて、部屋に反響して自分の声が耳に響いてたわわな胸がたゆんとプリンみたいに揺れるだけ。


 人生どう間違えてどう転んだら男から女に変わるんだよ。

 なんだよ。今まで彼女なんていなかったがお情けの友達程度の女友達というか、親しい知り合いぐらいはいたし、恋人彼女が欲しいとも思っていたが性別を捨ててまで女性と縁を持ちたかったわけではない。


 もう一度言おう。


 性別を捨ててまで女性と縁を持ちたかったわけではない。

 ここも大切なので二回言いました。きっとテストにでますのでご注意を。


 それと決して百合萌えの性癖者でもなければ同性愛者でもない。これらを悪く言うつもりは全然ないがただ自分はそういう趣味ではないと言いたい。

 女を助けて女になるなんてどんな漫画やアニメだよ。

 そういう笑えない冗談は世界中どこ探しても受けないし、流行らないんだよ。遅すぎて時代遅れだよ。


「トラックに轢かれた次は女体化かよ。どうして俺がこんな・・・・・。いや待てよ」


 俺はここで女にされたことの不審な点に気付いた。気付いたというより気付かざるおえなかったと言った方が正しい。

 体を女にされたいろいろと理由を考えるのが妥当というのも。


 いろいろと考えるとは言ったけど俺の可愛そうな知能では一つしか理由が上がらない。


 それは、

 トラックに撥ねられた体のある一部の修復が難しいほどの深手を負い、仕方がなく体を女にするしか方法が無かったと俺はそうと答えにたどり着いた。


 だけどこの際、ここに鏡が無くてほんのちょっと少し惜しいと思った。自分が女になった顔を変わっているのか見てみたかった。

 いや、ここから出ればいくらでも見れるか。


「んっ?目覚めたか?やけに騒がしいと思って来てみたのだが」

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