第5話 深更




「今度こそはと、女を変える度に思ったものだ。

 だが期待はいつも裏切られる。

 どの女も同じでつまらない。飽きてしまう。

 子をなしたなら飢えぬ程度に面倒はみるが通いはしない。

 わずらわしくなり打ち棄てた女もいた。

 罪というなら罪であろう。

 だが、ひと時の愉悦を求めたのはこちらばかりではない。

 此方こなたが罪なら其方そなたもまた罪。

 なぜ此方こちらばかりが責められねばならぬのか」






 母となって三度目の春、桜の木の下で、子守の娘の肩を抱くあなたを見たのです。

 ついにその時が来たのだと思いました。


 我が身は弱り、あなたを受け入れることも難しく、床に伏せってばかりでしたので、それはいたし方ない自然な流れであったかもしれませぬ。


 満開となってもなお白くはかなげな桜の花。


 戻らねば……それでも、子をのこしていくのは身を切られるような思いでありました。




 あなたに可愛がられる娘の声に耳を塞ぎながら、屋敷を離れて桜の下へ。


 この身に流れる血をすべて。


 はらはらと散る花に生身の体は埋もれゆき、やがて光の玉が抜け出てこの命は尽きたのです。


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