第123話函館奪還作戦④


奪還作戦も佳境に入り、外周の探索者たちも落ち着いて来た。




俺も余裕ができ探索者たちと話す余裕もできてきた。




話を聞くと外周の探索者たちは普段は、先輩探索者の荷物持ちや倒したモンスターの運搬がメインで、たまに先輩が同行して安全に狩れるモンスターで経験を積んでるらしい。




それでもいつかは、ダンジョンに入りモンスターを狩るんだと嬉しそうに話していた。




そんな彼らにお菓子を配り一服していると、市街地で火柱が上がった。




その少し前、雅也が粗方逃げ出したモンスターを倒し休憩しだしだ頃、秀鬼たちは体長1m位の蟻と戦っていた。




蟻たちは逃げずに、ドラゴンにまで立ち向かい、巣を守ろうとしていた。




蟻は1匹1匹は弱いが兎に角数が多い、倒しても倒しても巣穴からゾロゾロ出てくる。




そんな光景に嫌気が射したのかドラゴンがブレスで一掃しようと秀鬼に持ち掛けた、下水道にブレスを吐いてはいけないと言われていたが、巣穴なら問題無いだろうと思い秀鬼も了承した。




しかし、巣穴にブレスをぶちこむと、マンホールや辺りの建物から火柱が上がった。




ドラゴンのブレスは3000度を超える高温で、巣穴と繋がっていた下水道に入り建物にまで引火したようだ。




巣穴を中心に辺りは火の海とかし、炎に囲まれ身の危険を感じた秀鬼はゼウスに跨がり避難した、ドラゴンは火に強いが、辺りを火の海にして秀鬼も避難したことで心細くなり逃げ出した。




俺は各所から入る無線で対策に迫られ、炎は簡単に消せる範疇を超えていたため、ダンジョンを中心にに集めたモンスターが逃げないように結界を張った。




結局、対策本部と協議した結果、延焼を押さえることもできないし、モンスターを逃がすこともできないので、結界内の全てをドラゴンのブレスで焼き払うことに成った。




俺はドーム状に張った結界上部を煙突状に伸ばし、炎の逃げ場を作ってから、ドラゴンたちにブレスを吐かせた。




一斉に9頭のドラゴンがブレスを放つと、結界を張っていても周囲は高温に成り、下水道を通して酸素供給され下水道が唸りをあげていた。




俺たちはドラゴンを残し、離れた上空から見ているが、まるで地上に太陽が落ちたようで直視出来なかった。




あまりの炎の勢いに煙突部を500m程伸ばしたが、それでも煙突から炎を吹き上げていた。




いまさら、ドラゴンに近づきブレスを止められないまま、結局10分くらいの間なのだが、俺には永遠とも思える時間が続いた。




ドラゴンたちがブレスを止めて戻って来ても、結局3日3晩燃え続けた。




夜に成ると、本州からも炎が確認でき、冬の始まりの季節なのに、遠く離れた青森まで汗ばむ程の気温に人々は驚いた。




火が消えて見えてきた光景は、百万ドルの夜景で有名な函館市の中心部は瓦礫の山と硝子化した更地が広がっていた。




沈没した地盤に、溶岩のように赤い物がグツグツと溜まっていた。




当初の計画より広範囲に成ってしまったが、誰も俺たちを責めなかったが、俺は涙を浮かべながら眺める人たちを見てしまった。




(申し訳ない、新たな街を復興してくれ)




最初にブレスを吐いたドラゴンも、許可を出した秀鬼も悪気が有った訳では無いし、対策本部では函館奪還作戦は成功と結論づけた。




それから、温度も大分下がってから、ダンジョンを上空から監察したが、ダンジョンは無傷なようで入口は大きく口を開けていた。




ただ、ダンジョンからモンスターが出てくるようすは無いので、予定通り周囲を塀で囲い、今後は自衛隊管理の元、探索者が入りモンスターを狩るダンジョンに成るようだ。




函館のダンジョンはレベル27なんで、攻略は難しいだろうが、肉や武器製造のための資源用ダンジョンとして管理される。




結局、俺たちはダンジョン周辺の温度が下がる前に帰ることに成り、作戦に参加した人たちに見送られて帰った。




クレアにドラゴンたちに帰るようにお願いしたが、ドラゴンたちは何でもするから俺と一緒に居たいと言い出し、マリアたちみたいに仲間にすら成って無いから断ったら。




《ドラゴンが仲間に成った》×7




俺はガックリして膝をつくと、ドラゴンたちに条件をつけた。




「村に住むことを許す代わりに条件が有る。


1、人間や村の仲間に危害を加えない。


2、村の中では、体を小さくすること。


3、村では仕事をしてもらう。


4、俺やクレアやダリアの言いことを聞くこと。


5、以上の約束が守れない時は、元居たダンジョンで100年の禁固刑。


解ったか」




ドラゴンたちは激しく頷いた。




(本当に解っているのかよ、もう戦力過剰で要らないんだよ、ダンジョンに同行もブレス吐かれたらこっちが危ないから連れて行けないしな、当分ようす見だな)




名前も付けないといけないかと思っていたが、名前なんか付けたら他のドラゴンが自分にもと押し掛けて来るからとダメだしされた。




(1000頭のドラゴンなんて来たら溜まった物じゃない)




結局、1ヶ月近く村を離れていたが、村との連絡では問題は起きて無いようだから良いけど、早く帰ってのんびりしたい。




ドラゴンたちはクレアとダリアの案内で自分たちで飛んで帰り、俺たちは飛行機で帰ることにした。




帰りの飛行機から函館が見えたが、上空からでも惨状がよく解った。




(皆さん、ごめんなさい、それと復興は影ながら応援します)




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