第115話藪ドラゴン
ロッキー山脈の地下施設の中で、一人の男が頭を抱えていた。
「俺はアメリカ大統領なんだぞ、いつまであの老いぼれどもの言うことを聞かなければならないんだ」
「前のぺてん師大統領がアメリカを一番にするだの、強いアメリカを取り戻すなど言って、中東情勢は引っ掻き回し、貿易も無茶苦茶にして、結局あの老害どもの利益しか考えていなかった結果、アメリカは余計にボロボロになったじゃないか」
「そんな俺も、老害どもに逆らえず世界中から軍を引き上げた」
「けれどそれは、アメリカ国民を守るためで、金持ちの安全のためにした訳じゃない、しかも今度は神の杖を使い、中国の核ミサイル施設と近くのダンジョンに向け発射しろだと、中国で上手くいけば国内のダンジョンにも撃ち込むつもりらしいが、ロシアの二の舞じゃないか、街には人間だっているんだぞ」
「あの老害どもは、他国をなんだと思って要るんだ、拒否すれば俺の首なんて簡単にすげ替える気でいやがる、結局軍もCIAも シークレットサービスにも、奴らの子飼いの者がいる、大統領警護なんて言っても所詮、監視役でしかない、本当に神の杖を使わせる気か」
「高度1000キロの宇宙から発射されるタングステンロッドの威力は核ミサイル基地やダンジョンを狙っても、その周囲与える被害は甚大だ、広島長崎に落とした核爆弾の比では無いのだぞ、しかも核ミサイル基地を狙えば放射能汚染も考えられる」
「俺は拒否して殺されるか、汚名を過去に残すしかないのか?」
「いっそのこと、奴らの居る地下施設に落としてやろうか、なんで奴らを見殺しにしてモンスター襲わせなかったのか後悔しか無い」
「しかも奴らは、太平洋艦隊を殲滅したドラゴンより巨大なドラゴンにまで、手を出そうとしている、奴らは日本を舐めている、今の総理は超法規的処置の建前の元、アメリカからの脱却を狙っているのに、軍を引き上げたことで完全にアメリカを当てにしていない」
「下手をすると、ドラゴンをアメリカに向けて来るかもしれない」
こんこん
「大統領、会議のお時間です」
「解った」
その頃、雅也はブルネイでの疲れを癒していた。
「マリア、また捕まえて来たの?」
「結界にへばり付いていたから」
「これで何人目?」
「解らん、ゼウスたちも捕まえてるから、30人は超えてからは知らん」
「全く、ドラゴンコンビのお陰で良い迷惑だよ、他国もスパイを送り込む暇が有ったら、自国のダンジョンを攻略すれば良いのに、ダンジョンマスターのレベルが上がって半径15kmの結界が張れるように成ったから、村の人たちに被害が及ぶことは無いけど」
「雅也、奴らはどうするのだ?」
「勝手に殺せないし、拷問するにしたって素人だしね、クレアに竜気を与えて貰おうとしたけど、普通は竜気なんか与えたら死ぬって、俺には散々与えてきたのに、死ななかったろって平然と言いやがる」
「雅也も大変だったな、まああの傍若無人なドラゴンたちが、大人しくしてるだけでも珍しいぞ」
「ドラゴンコンビは帰らないのかな?」
「ドラゴンコンビに雅也はかなり気に入られてるし、ゲームだ映画だと楽しんでるから、当分は居るんじゃないか?」
「勘弁してくれ、クレアが近づいても平気に成ったが、触れられると、いまだに冷や汗が出ておかしく成りそうだ」
「でも、もう痛みは無いのだろ、ドラゴンが居れば村は安全でしょ」
「安全かもしれないけど、俺の心の安全が欲しいよ、そんなことはさておき、そろそろスパイを自衛隊にでも引き取って貰いますか?」
「自衛隊も良い迷惑だな」
俺は仕方なくスパイたちを見に行くことにした。
「俺はここが安全だと聞いて来ただけなのに、なんで拘束する」
「私は家族と避難するために来ただけだ」
「はい、ダウト、マグナフォンに骨伝導マイク付けた一般市民が居る訳無いでしょ」
「俺はアメリカ人じゃない、日本人だ」
「中国も国内が滅茶滅茶なのに、ご苦労様です、しかし、ここはスパイの万国博覧会ですか」
「‥‥‥」
「しかし、スパイってもっと格好いい人たちかと思えば、なんか普通ですね?」
「‥‥‥」
「あっ、それと皆さんには、明日からグリフォンやスノータイガーのご飯になって頂きます。ごめんね、最近お肉が不足していて、彼ら生きたまま食べるのが好きなんで、最初は痛いけど直ぐに死ぬから許してね、ではご冥福を祈っております」
「そんな脅しが効く訳無いだろう」
「俺には家族が居るんだ」
「待て、話を聞け」
なんか叫んでたけど、俺はその場を立ち去った。家の子たちは最近生でお肉食べないけどね、ドラゴンコンビですら、調理した物しか食べないのに、スパイにしては勉強不足だね。
それから引き取って貰うために、政府に連絡したら、見なかったことに出来ないかと言ってきたよ、でもマリアたちが結界内に入れちゃったから、逃がすと結界内に入れちゃうんだよな。
本当にどうしたものか、困った。
翌日、マリアたちを連れてスパイのもとに訪れると、皆さん真っ青な顔してる。
俺がマリアたちに打ち合わせ通り、どれが食べたいと聞くと、マリアたちは最高の演技でスパイたちを物色。
選ばれたスパイたちは、暴れるがマリアやグリフォンに敵う筈もなく、連れて行かれる。
流石のスパイたちも、こんな状態の国に命を捧げるつもりも無いのか、自分から話し出したよ。
俺に話されても困るんだよな、仕方が無いから、当分はリザードマンたちの村で生活して貰うしかないか、それともドラゴンコンビにロシアのダンジョンにご招待して貰うかな。
しかし、めんどくさい、流石に殺す程憎しみは無いし、俺は殺人鬼じゃないからな。
ドラゴンコンビにお願いしたら、ゲームで忙しいと断られた、ドラゴンてもっと高位な存在じゃなかったのか、ゲームやって酒飲みながら映画見て、単なる穀潰しじゃないか。
仕方が無い、リザードマンたちのところで働いて貰うか、足に鎖でも付けとけば逃げないだろう、後はリザードマンたちに丸投げで良いよな。
リザードマンたちに丸投げした後、家の子たちと新たにダンジョンを出て仲間に加わった子グリフォンたちとじゃれていると、総理から連絡が入った。
話を聞くと、アメリカが、日本に核攻撃をしようとしていた中国の核ミサイル基地を攻撃してやったから、俺と橋渡しをしろと言って来たらしい。
総理も断ったらしいが、アメリカは折れず、ドラゴンの脅威が排除去れなければ、中国に使った兵器でドラゴンを排除すると脅して来たらしい。
むかつくので、ドラゴン連れてロッキー山脈で石釜オーブンにしてやろうかと思ったが、総理が止めるので、横田基地で会うことになった。
こっちからは、俺とマリアと鬼人族とグリフォンで砲艦外交で臨んでやる、別にアメリカは嫌いじゃないけど、迷惑掛けるなら容赦しない。
藪蛇ならぬ藪ドラゴンになるとも知らずに。
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