第90話新婚旅行?⑦


「あー、やり過ぎた」




別に正義のヒーロー目指したわけじゃないのに、ただちょっと高校生たちに良いとこ見せようとしただけなのに、何故こうなった。




今日帰ることが知れ渡ったらしく、朝からホテルの前に大勢の人が押し寄せてきた。またお菓子をねだられると思ったら、日本を救う俺たちを一目見たいと集まってきたらしい。




(まさか総理の差し金じゃないだろうな)




しかし許せん。何故妻たちの横断幕を掲げる。しかもLOVEってのはなんだ、妻は俺のだ。




サイン下さいて女将さん。




「えっ俺、サインなんか書いたこと無いですよ」




「すみません、政府に請求書を送るので追加で飲まれたお酒分の確認のサインをお願いします」




(……すげー恥ずかしいんですけど。はい実は浮かれていました、すみません)




皆さんから声援を頂き、俺達は総理のもとに向かった。




ちなみに声援の中には、俺たちに愛を叫ぶ者もいたが、大半は「ダンジョンを攻略してくれ」とか、「住んでた地域を奪還して」で、俺たちにそんな力はありませんとしか。ただ、子供たちの「また来てね!」は、嬉しかった。




でも飛び立つと皆、見えなくなるまで手を振ってくれた。島に来て良かった。




内閣府に着くと、魚介類などが山積みされていた。




こちらも大勢で出迎えてくれて、大臣たちも居る。




総理からは対物ライフル用の特殊な弾丸を貰った。まだ生産量が少ないが、普通の弾丸が効かないモンスターにもダメージを与えられる特殊な弾丸らしい。




これからもモンスター対策で色々開発するから、できた物を使ってほしいとのこと。ただ、どうだったか結果を教えてほしいとも。




(これってただのモニターだよね。総理も抜け目無い)




挨拶などを終え、俺たちは総理たちに別れを告げ、島を離れた。




厚木基地は何も残ってなかったけど、横須賀ならと思ったら自衛隊が居るらしいので諦めて、横浜港へ向かうことにした。




結局、幕僚長が作っていたグリフォンたちの鞍は間に合わなかったけど、できたら送ってくれるらしいから楽しみに待つとしよう。




俺たちはグリフォンに乗りのんびり飛んでいくことにした。GPSが使えるから遭難することも無いだろう。




ゼウスは一人で上空から魚影を見つけると飛び込み魚を捕まえてくる。ただサメは食べないから止めて。確かに大物だけど。イルカにも向かっていこうとするから、イルカも食べないからと止めた。




(ゼウスは誉めると調子に乗ることがよく解った。それにしてもゼウスもきれいに魚を捕まえるようになったな。それに最近なんだかグリフォンたちがワンコ化してる気もするし。誉めてアピールが凄い)






色々考えてたりしているうちに横浜のランドマークが見えてきたので、クルーザーを出してお昼を食べることにした。




クルーザーで横浜に近づいていくと、3頭のワイバーンを発見した。1頭はランドマークタワーの上にいて、残り2頭は埠頭でお食事中だ。




ランドマークの奴には届かないが埠頭の2頭には対物ライフルが届くので、皆で新しい弾丸を試してみる。




グリフォンたちには援護を頼み、一斉に撃つ。




「準備は良いか、では3・2・1・撃て」




一斉に発射された弾丸は見事に1頭のワイバーンに命中した。多少はダメージを与えたようだが、2頭のワイバーンを怒らせたみたいで飛び上がろうとしてる。




しかしワイバーンは助走を付けないと飛べないらしく、その間に俺たちはワイバーンに集中砲火を浴びせる。飛び上がろうとしたワイバーンは羽を広げた時にその羽を撃ち抜かれ、墜落した。




「ワイバーンの羽を狙え」




俺たちが2頭のワイバーンを撃っていると、グリフォンたちがもう1頭のワイバーンがこっちに向かっていることを知らせてきた。




俺たちは2頭を放置して、もう1頭のワイバーンを狙う。凄いスピードでこっちに正面から向かってくるワイバーンには中々当たらない。




連射の効かない対物ライフルを諦めグリフォンたちに乗り戦うことを考えた時に、ワイバーンはよろけて墜落した。




誰が当てたかは解らないが、ワイバーンは羽を撃ち抜かれて墜落したようだ。




海に落ちたワイバーンは羽をばたつかせ必死に溺れないようにしている。飛べないワイバーンなど怖くもなんとも無いね。聖剣で稲妻を喰らわせるもまだ生きている。




埠頭の2頭もギャーギャー騒いでいるがひとまず無視して、溺れるワイバーンに攻撃を続ける。ゼウスが頭に攻撃したらどうやらワイバーンは力尽きたようだ。俺はそのワイバーンが海に沈む前にアイテムボックスに収納してから改めて2頭を見る。




グリフォンたちが2頭のワイバーンに向かい飛んでいくので、俺たちもクルーザーで追いかける。




俺たちが中々クルーザーから降りられないでいると、グリフォンたちはすでに2頭のワイバーンを仕留め終わっていた。




俺はまずワイバーンたちを回収してから、コンテナ回収作業を始めた。品川埠頭より大量にあるコンテナを一人で回収するのは過酷な作業だ。




最初のうち彼女たちはグリフォンに乗り警護してくれていたが、飽きたのか、まだ明るいのに夕食の準備と言ってクルーザーに戻っていった。仕方ないのでクルーザーにもグリフォン2頭護衛に付けた。




俺が黙々とコンテナをアインスと回収して回っていると。


グリフォンたちも飽きたのか、アインスとクルーザーの2頭以外で近くへ狩りに出掛けてしまった。




彼女たちも俺に飲物やおやつを届けてくれるが、俺はアイテムボックスがあるからいいと答えたら、美咲に説教された。




「中々二人きりになれないから、交代で届けているの。この意味解るでしょ」




「すみませんでした」




「解ればよろしい」






(スキンシップは嬉しいけど、今の俺には生殺しなんです)




グリフォンたちは倒したモンスターを見せて、誉めろと寄ってくるし、作業が先に進まないよー。




暗くなり始めたのでクルーザーに戻ると、彼女たちは豪華な食事を作っていてくれた。よく煮込んだシチューは美味しかった。




グリフォンたちは甲板で、俺たちは船内の大きなベッドで5人で寝るが、なにもしないで寝るだけ。




(息子よ帰るまで我慢だ。今は自家発電もできないから我慢してくれ)




朝食も食べ2日目も頑張ります。




コンテナを回収していると、ドライがゴブリンの集落を見つけたらしい。ゴブリンは食用にもならないから、彼女たちにお願いした。ただし、安全対策にシルバも連れていかせた。




グリフォンたちに乗り早速向かっていった。




俺はアインスと一緒にコンテナを回収していると、彼女たちが戻ってきた。




「ゴブリンの集落は潰したけど、子供のゴブリンがいて、それを母親が守っていたから、可哀想で見逃してあげちゃった」




「そうかご苦労さん、クルーザーで休んできな」




彼女たちがクルーザーに戻る時、ゼウスにだけ残ってもらった。




「ゼウス、ゴブリンの子供たちの始末をお願いできるか?」




「主、解りました。直ぐに行ってきます」




(彼女たちには優しい気持ちは失わないでほしいが、ゴブリンは全滅させないと、直ぐにまた増えるし、親を殺した人間を憎む危険性があるからな。ここは心を鬼にしてでも全滅させなきゃならない)




それにしても、横浜港は広い。まだ倉庫内も見てないのに、今日一日もコンテナ回収で終わってしまったよ。




クルーザーに戻り、ゼウスに子供を殺したことは内緒で、ゴブリン狩りの話を聞いた。




ゴブリンは簡単に全滅させたが、死体を海に捨てる方がよっぽど大変で時間が掛かったらしい。しかし大丈夫なのかゴブリンの不法投棄って。






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