第91話新婚旅行?⑧


コンテナ回収もやっと終わりが見えてきた。




横浜は空を飛ぶモンスターが多く、狼や猪などの哺乳類系のモンスターは見なかった。地上に居るのは爬虫類系が多かった。




もしかすると、モンスターの世界も住み分けが進んでいるのかもしれない。




コンテナ回収もようやく終わり、今度は皆で倉庫内の捜索を始めると、内部には大きなコウモリやネズミがいて彼女たちには不評だった。それでも彼女たちは資源のためと頑張って戦ってくれた。しかし、食糧などはほとんどダメで保冷倉庫の一部からしか回収できなかった。




それでも横浜から川崎まで回収をして羽田空港まで来た。




羽田空港は陸からの出入り口を閉鎖して、自衛隊と民間人が住んでいる。俺たちには接点もあまり無いので今回は寄らずに、前回お世話になったリザードマンたちが居る天王洲を目指すことにした。




クルーザーでリザードマンを探すが見つからない。どこかに移動してしまったのか、ちょっと残念に思い、リザードマンたちが住んでいたレストランを目指した。




その見つけたレストランは見るも無惨な光景で、建物が倒壊していて、まるで何台もの車が突っ込んだように壁に穴が空き、柱まで折れている。




俺たちは諦めてクルーザーをしまい、グリフォンたちに乗り移動しようとした時に、停泊していた船の陰から2頭のリザードマンが顔を出した。




前回会った時より警戒心が強く、直ぐに逃げる体勢でいることがよく分かる。




「リザードマンさん、覚えてませんか? 前にクルーザーを貰った人間ですよ」




リザードマンたちは顔を見合わせている。




「額に大きな傷のあるリーダーさんは居ませんか?」




「……死んだ」




「いったい何があったんですか」




「人間、襲わないか?」




「襲いませんよ」




リザードマン2頭はジャンプして桟橋に上がる。彼女たちは驚いて刀に手をかけるが、俺が止めさせる。




リザードマンから話を聞くと、ワイバーンに襲われ、逃げた先で別のモンスターに襲われたらしい。モンスターの名前を言うが理解できなかった。




その時にリーダーを始め多くの戦士が死んだらしく、今は東京湾に浮かぶ島で暮らしていることも教えてくれた。




どうやら1頭が俺のことを覚えていたみたいだ。ただ人間は皆同じに見えるようでクルーザーを見て近づいてきたようだ。




リザードマンたちは今新しいリーダーのもとで生活しているが、だいぶ困窮してるらしく、俺に食糧をくれないかと言ってきた。




俺もリザードマンたちとは話もできるし敵対したくないので、援助することにした。




クルーザーを再度だし、リザードマンの住む島に向かった。




リザードマンが住む島はアクアラインの空気口の人工島だった。島に近づくとリザードマンと一緒に頭か3つある白っぽい大きなトカゲが見えてきた。




トカゲたちは俺たちのクルーザーを威嚇するが、リザードマンたちが止めてくれた。




そういえば美咲はリザードマンは平気そうだったのにトカゲは無理みたいだ。楓が美咲を捕まえるが、絶対に上陸しないと船内に逃げていった。




仕方なくゼウスに乗り島に向かおうとすると、アインスの鋭い視線を感じた。俺は誤魔化すようにアインスを呼び、アインスに乗り島に向かった。




島に着いてみると傷ついたリザードマンもおり、案内してくれたリザードマンに許可を取ってから、シルバに治療してもらった。




リザードマンたちはシルバを見て、目を白黒させていた。リザードマンの目は本当は黄色いけどね、例えですから。




シルバが治療していると、リーダーを紹介された。リーダーは俺が今まで対応してくれたリザードマンに比べごつごつした体ではなく、多分女性なんだろうしなやかな体つきだ。名前を名乗られたが、シャーとしか聴こえない。多分人間には発音できないのだろう。




死んだリーダーの奥さんらしく、今は臨時のリーダーらしい。


話を聞くと食糧をあげても一時しのぎにしかならないと思い、色々聞いてみた。リザードマンたちはそもそも海自体が初めてらしい。本当は池や沼で生活したいが、初めての場所で地理が分からないらしく、そのうえ水にも不自由していて困っていたらしい。




村に誘ってもいいかと思うが、村には溜め池しか無く、リザードマンの生活には適さないだろう。




どこかに池や沼って無いかな……立川の公園の池じゃ無理だよな。池ってゴルフ場しか思い付かない。……あったよ、そうだ奥多摩湖なんか良くないか。あそこなら魚もいるし木は豊富だし自然が残っている。




リーダーに提案してみたところ、リザードマンたちは相談し始めた。反対する者も居るみたいだが話は続いている。俺は明日の朝までに決めてくれと伝え、クルーザーに戻ることにした。




さて、もしリザードマンたちが移住するとなったら移動をどうするかが問題だ。クルーザーには乗りきれないし、大きな船じゃ多摩川は登れない。




陸上から行くのは危険過ぎる。かといって泳いでついてきてもらうには、子供たちには難しいだろうしな。電車やバスでも走っていればいいけどな。あっ待てよあるじゃん! 川でも問題無く進める乗り物が! 船で艀を曳けばいいんだ。艀なら運河の輸送用に造られているから浅いところでも問題無いし、関はアイテムボックスに入れて越えれば行ける。




艀と船は放置されているのを見たし、取ってこよう。




探したらエンジン付きの艀を見つけた。移動する前にリザードマンにも操縦を覚えてもらおう。




来てくれるといいなと彼女たちと話したけど、美咲だけが三首トカゲを怖がっているようだ。




(楓はまた美咲にちょっかい出すと自分に返ってくるということを学習してないな。また虫の時に仕返しされるぞ)




そんな馬鹿騒ぎをしながらクルーザーでゆっくり過ごした。






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