風希ちゃん見いつけた、少女は風希に言いつけた
翌日の真昼、風体の悪い人間と揃って校舎の廊下を歩く風希がいた。波来はその光景を遠目から見た。
不良どもとゲラゲラと笑って歩く彼女は汚い人間に映る。ドッペルゲンガーの風希とは似つかわしくないにもほどがある。
はぁ、とため息を吐きながら重い肩を下ろす。そのとき、横の連絡通路から一人の女の子が走るのを目にして、波来がふと既視感を覚えた。
「これでいい? 風希ちゃん」
たくさんのパンを抱えて、風希と不良どもの前に到着する。
風希と不良がそれぞれパンを手に取り、ハッハッハと笑いながら再び歩みを始めた。
風希のパシリにされているのだろうか。ショートカットの女の子は、大人しそうで清楚潔白な印象が強そうだったが。波来の目にはとても悲哀な感じに見える。
この女の子は明るい顔でいたって普通に風希に接しているのだから。
「早く行くわよ、キッちん」
聞き慣れない言葉を発して、風希たちは廊下を闊歩する。
弁当を食べるために波来は屋上に出た。
風希に告白して嫌な記憶が染みついてるけれど。
そんな苦い思いをしながら弁当を食べる。
ふと、扉を乱雑に開ける音が聞こえた。
見ると、無性に腹を立てた形相をした風希が、こちらに近づいてくる。
ドッペルゲンガーではなく、本物の風希のようだ。
「な、何の用?」
風希が目の前に来る。
「これはいったいどういうことなの?」
一枚の写真を目の前に出してきた。
そこに映っていたのは、昨日公園のベンチで一緒に会話をしていた二人、波来とドッペルゲンガー・風希のツーショットだった。
「これは……」
「この子はいったい誰なの!」
ドッペルゲンガーと言って信じてくれはしないだろう。だが、風希にとっては、ドッペルゲンガーの彼女と波来が一緒に話をしていることは、非常に不愉快な思いをしていることは間違いがなかった。なぜなら目前の彼女がそういう顔をしている。
「それは君だよ」
「私じゃないわよ」
「そうだね確かに本物の君じゃない。だけど、君だよ」
「……」
苦虫を噛みつぶしたような顔で、波来をにらみつける風希。業を煮やした顔で、彼女は歯ぎしりの音を立てる。
「もう二度とこの子と話をしないで! 金輪際!」
「どうして?」
「私が誤解されたくないからよ!」
そりゃごもっともな言葉だが、波来にはどうにも納得ができない。
むっとした顔で、彼女をにらみかえした。
そして風希が、いらいらした歩調で屋上のコンクリートを叩きながら、怒り心頭に発しながらこの場を去った。
やれやれと波来は思う。
そのあと、再び屋上の扉が開く音がした。
風希がまだ言い忘れたことでもあったのだろうかと思って見やると、そこにいたのはショートカットをしたあの清楚な彼女だった。
「君は……」
「ごめんなさい!」
彼女はあのとき地面に落としたカメラを拾い上げてあの場を去った。
そして波来は気づく。あのツーショット写真を撮ったのは、この子だったんだなと。
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