しろねこさんとくろねこさん

愛猫心

しろねこさんとくろねこさん

彼女たちは僕のことをずっと見ている。

特に、わけもなく、そんなこと、

僕が一番わかっているのに、

何を考えているか、

なんて妄想に耽ってしまう。

僕も同様、彼女たちをずっと見てきた。

僕は、あの綿菓子のような、

埃一つ付いてない純白のねこさんよりも

煤にまみれた、

黒いねこさんの方が好きかな。




黒いもふもふをそっと抱き上げる。

彼女は抵抗なんてしない。

その子を抱いて家に向かう。

陽炎が酷くて、狂気じみた夏の暑さに

頭がおかしくなりそうだ。

実際、目的地には、全くたどり着けない。

一方で、歩けば歩くほど、その腕の中で、

静かに佇む黒い彼女が愛おしく感じる。


僕は、焦った。安堵を求めて、

うろつき回る。

次第に歩調が早くなり、いつのまにか、

僕は走っていた。

あっ、と声を出す。転ぶ。猫が、落ちる。

偶然、僕の目の前を過ぎ去る、運命に、

猫は、ズタズタにされる、

僕は、後悔した。こんな結末なら、

最初から、黒い猫を選ばなけりゃよかった、

なんて、無責任なことを考える。

今にも、泣き出しそうだった。




まあ、いいや、次は白い方を連れて帰ろう。

あの路地裏に向かう。

そこには、また、何事も無かったかのように、二つの影が浮かんでいるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しろねこさんとくろねこさん 愛猫心 @nyanlove

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る