第45話 しっぽ

 金曜日の朝、私の念願は叶っていた。


 起きたら、猫のしっぽがお尻に生えていたのだ。

 私はこれを得ることをずっと大望していたので、もうカーテンレールに飛び移りたいほど歓喜した。

 しみじみ撫でていたかったが、今日は平日。朝食を軽く済ませ急いで支度をし、いつもの電車に乗った。


 スカートにもコートにも、程よい大きさの穴を開け、しっぽはそこから出した。

 ふふ、やはり皆が、こちらに注目している。

「あれ良くできてるねー」「どこで買ったんだろ?」


 会社に到着し、制服に着替えたが、これに穴を開けるわけにはいかないので、仕方なく、しっぽは丸めスカートの中に隠した。


 そんな日に限って私は、大切な書類をうっかりゴミ箱に廃棄してしまったので、夕方焦心でビルのゴミ集積所を探すことに。

 這って探し回る私を同僚は、

「猫みたいね!」

 と笑ったが、これでまた、よりいっそう猫に近づけたのかと喜悦の色を浮かべた私は、無事に書類が見つかると、めいっぱいジャンプして、にゃうと高く鳴いた。

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