第44話 研究の成果

 人間は、年を取ると転んで二度と歩けなくなることも多いので、四つ足で歩けるようにと、試行錯誤していた奈良在住のS博士と助手たちが、続けてきた研究をこの度結実させた。

 遺伝子を操作して、手足の長さや頭の大きさ位置を変え、四本足でスムーズに走ったり歩けるようにしたのだ。


 しかし、いきなりそんな形の人間が生まれると、それまでの二足歩行の人間から気味悪がられるので、鹿と酷似させて様子を伺うことにした。

 鹿ニンゲンたちは思った通り、本来の鹿と区別がつかないほど街に馴染んだ。しかし、脳の中身は人間なので、思わぬヤンチャを始めた。

 2歳になると鹿煎餅を食べず玩具にし、3歳になると糞を投げ合って遊んだ。


 それを見つけた鹿たちは、自分たちと違うことに気が付いたようで、S博士のところに直談判しに来た。

「この状況は見逃せません。我々は神なのですから、しかるべきところに出て話し合いを──」


 博士は眉尻を下げ、シカられる覚悟を決めた。

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