第13話 蔦(つた)

 植物研究家でもあるご主人様の温室には、沢山の植物たちがいたが、家の周りに這いつづける蔦である私のことも、いつも温かい目で見守ってくれ、切らずにいてくれた。


 そんなご主人様が若い頃は、教師をしていて恋人が居たこともあったが、植物のことばかり考えているご主人様に皆愛想を尽かし、しばらくするとここを出ていった。


 それから幾年月が過ぎ、とうとうご主人様が最後の眠りから覚めなくなった時、誰かにご主人様を見つけてもらおうとからだを揺らすも、周りの人たちはただ風で私が揺れていると思い、気が付いてはくれなかった。


 このままではご主人様は、悲しく朽ちていくだけ。

 残された温室の植物たちも、皆うなだれている。


 雷がゴロゴロと轟くある夜、私はご主人様が教師をしていたときに愛用していた指示棒を絡ませ、天へ向けた。

 そこへドンッという轟音をたて、雷が落ちてきた。


 私たちは皆でご主人様を抱き締め、天国へ向かいゆらゆらと燃えていった。

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