乱歩を思い出すモダンな昭和の本格ミステリーですが、硬派な雰囲気の本に馴染みのない人でも、引き込まれるに違いありません。
タイトルにある人形が鍵となっていますが、それだけではありません。
鮮やかにスッキリとした結末ではなかったですが、そのぶん読み終わったあとも色々考えさせられました。
犯人と被害者の関係は? 何があったのか? なぜ、仏師は西洋人形にこだわるようになったのか?
何よりあの結末は、探偵の思惑通りだったのではないか? いいや、さすがにそれはちょっと……。
でも案外、犯人は真相を明らかにしたかったのかもしれない?
誰かが糸を操っていたような、そんな雰囲気があったのです。誰かが操っていたような、そんな気配にしばらく浸っていられました。
なんてあると、もやもやするんじゃないかと敬遠されそうですが、そんなことはまったくありません。むしろ、なんだか心地いい。
ぜひぜひご一読を。