第三十一話 情報屋が、最後に辿り着く場所とは?
「お疲れ!」
と、労をねぎらう言葉が響く。―― Sound good!
出陣する前のこの場所へ。
そして許可は取ってある。昼休みは終了したが、俺たちの昼休みはこれから。入口から左奥のテーブルの片隅には、この食堂で一番の人気を誇るコロッケ弁当。
略して『コロ弁』と呼ばれてる。
気絶や眠らせた十人は、無事に生徒会へと送ることができた。目覚めたらカツ丼とスパルタ級の取り調べ。その後、それに見合った処分が待っている。……と、そうあってほしいものだ、本当に。現実は、きっと違うもの。だから終わりなき戦いだ。
まあ、ともかく腹ごしらえだ。と、その前に確認したいことがあった。
この話の燃えるアクションもさることながら、描写不足が否めないのも百も承知で、そうでありながらも気が付いた限りで、二点ほどの補足を要した。
――赤い糸。
音羽の武器だが、もうイメージ済みなら申し訳ない。ミシンなどで使うボビンに巻き付いた糸。それを投げ込んでいた。ボビンが
二点目は俺がターバン付きの黒衣装で、
あの時だよ、ほら、
六人目を追いかけて校舎に入ったあの時、入り口付近の男子用トイレで着替えた。あらかじめ計画し、用意していたのだ。早坂もたぶん同じだろう。渡り廊下で
と、まあ、
言い訳じみた中でも、思いついたのはそれだけだが、まだまだツッコミどころ満載だと思う。例えるなら俺たちの武器も同様だけど、それでも俺たちは、この話を続ける。
やがて食は終わる。
休日の終わりを惜しむような、そんな感じで、
「また、誘ってくれ」
と、早坂が言った。……俺は、今までになかった不思議な感じを覚える。
「あ、ああ」
と、そう答えるのが、やっとだった。
振り返らず歩む、
そんな早坂の後ろ姿を見つつ、
「
と一言、音羽が言った。……その日、それが最後の一言となった。
早坂は、己が情報屋であることを隠したまま、リンちゃんのもとへ帰るだろう。いつまで続くかわからないが……俺には、もうすぐ終盤へと
『それはいつ?
もしかしたら明日なのだろうか?』
と気付けば星たちに、問いかけるようになっていた。
まるで、
まるで流れ星に、お願い事をするように。
そんな感じで学園からの、この
……。
「いつもすまないね……」
「それは言いっこなしだよ、母さん」
この金をどうやって、
いつも六万円、中には十万円もの、高校生にとっては大金だ。
もちろんアルバイトではない。以前に年齢差相がバレて先生に大目玉だ。特に
今は、情報屋一本だ。
――無論、そんなことは言えない。いや、それ以前に、母さんは訊かない。このお金たちを入手した先を……。だから
「鴇、危険なことや、無理してないかい?」
と、母さんは訊いた。
俺の目を、見ていた。ドキッとした。
「大丈夫、心配すんなって」
と、すぐに笑顔。
作ったものだと、バレていても……。母さんは、それ以上は訊かなかった。
――少し、泣きそうになった。
『ごめんよ、母さん。これ以上は話せないんだ。……でもな、もうすぐだ。もうすぐ足を洗うよ。それまで待っててくれよな、もう心配かけないから……』
自分でもわからなかった。
情報屋を
……けれど、近いうちに、
その状況にまで辿り着きそうな、その様な予感がする。
たとえそうなっても俺は、
母さんや、リンちゃんだけは守ってみせる。――と、その決意を
それで、またリンちゃんが狙われた。目撃してしまったそうだ、現場を。それだけではなく、学園の日常であってはならないことを知ってしまったそうだ。
本当は、情報屋稼業で手に負える事件ではなかったが、その切なる依頼を音羽は受けてしまった。そして俺たちは、衝撃的なラストを迎えることとなった。
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