第十三話 まさかの終わらず? ……ならば、これが第十二話の後編だ!
「ああ、わかった。また明日」
……どうというわけでもなかった。普通に親子の会話。スマホでだ。
掘り下げてみれば、スマホ画面が十九時二十分を表示。その奥に存在する着信履歴には親父の名前『
……二人とも、俺の誕生日を気にしているようだった。明日はバースデーケーキとともに、これまでミズッチと対戦してきた格ゲーの最新版のソフトをプレゼントしてくれるということで、話は落ち着いた。本当は、新たなプラモデルが良かったけども……。
そして画面から目を離し、ほんの少し横を向いたら「のわっ!」と、声を上げる羽目になった。ヌッと近くにミズッチの顔。しかもニンマリとドアップだ。
「何、人のスマホ覗いてんだよ」
「わたしは平気だよ。別に見て減るもんじゃないし」
「俺が平気じゃないの! プライバシーの侵害、立派な犯罪なの」
「まあまあ、お風呂沸いたから、先に入ってね」
……と、こんな調子で会話は展開された。
言わなくても、ここは俺の家だ。そう何度も言ってきたつもりだ。それでも彼女は我が家のように遠慮なく……それはそれとして、
抜かりはないはずだ。ちゃんと着替えは用意している。
それにしても、豚汁を作りながらの風呂を中心とした水回りスペースの準備。もう何年もやっているかのような手際の良さだ。今度、彼女のことを『師匠』と呼び、修行をさせてもらおうかと思うのだが、何となくだけど……それまでに彼女は彼氏と結婚して、寿退社を達成してしまうのではないかと思えてならない。
大きな
「
と、
振り返ったらニッコリ、
「じゃあ、入るね」
と、ミズッチは右手にスポンジを持ちながら、ガラス戸を閉め近づいてくる。
「ば、
心臓バクバクもの。慌てて向き直した。
背を向けてはいるものの、ササッと隠した。……それ以上は訊かないでほしい。思春期にはよくあることだと思って頂けたら幸いだ。
「だって『もち背中流してあげる』って、約束したでしょ?」
と、彼女は言った。
『半端なく有言実行な人』と言えたら、かっこいいけれども、
「俺は『はい』とも『YES』とも言ってないぞ。それにな、何で裸なんだよ?」
……あり得ないと思うけど、水着はもちろん、バスタオルも巻いてなかった。だとしたら、この密室の中で二人とも全裸。ましてや男と女。生徒と先生だ。
それでも俺とは違って、ミズッチは堂々たるもので、おかげで、普通に、バッチリ見えてしまった。彼女が初めて俺の家を訪問した日。その日に想像した何も
とはいうものの、それだけで済むはずもなく、とても密着。
息がかかるほどに、彼女の顔は近づいている。
「そんなの、お風呂入る時はいつも裸って決まってるでしょ。それに、わたしだって『いいえ』も『NO』も言ってないんだよ。……君をお祝いするために一肌脱いだ初めての試みなんだから、観念して洗われちゃいなさいよね」
紅潮しながらも、やはり野生の『タイガー』だ。
恐怖に支配され、それ以上の抵抗も、質問タイムまでも失った。
……されるがままだ。背中だけを流すはずだったのが、まるで小学校の低学年に戻ったみたいに、すべて泡まみれ。それが全身にまで発展を遂げた。
おまけに、この時ばかりは、親父たちがいなくて本当に良かったと思える。
目撃したとする。きっと……問答無用で卒倒だろう。
湯船に浸かる。お湯は
「なあ、ミズッチ」
「……ん?」
「どうしてここまでしたんだ? ……小さなお子様とはわけが違うんだぞ。もし親父たちが帰って来たら、俺はともかく、ミズッチが大変なことになるんだぞ」
……クスッ。
静かだけどハッキリ、笑い声が聞こえた。
だからこそ、これまた定番の、
「笑ってる場合じゃないだろ?」
という一言が出た。……あっ、向かい合わせだ。
「心配してくれるんだ。未来君は、わたしに『先生』を続けてほしいんだ」
えっ? まさかとは思うけど、
「
嫌になるほど、しどろもどろだ。
「……そう思うんだったら、いきなり『壁ドン』なんてしたら
「俺のこと、許してくれるのか?」
「許すも何も未来君のせいじゃなくて……そうそう、大人の都合。わたしの場合は『無断欠席』じゃなくて『無断欠勤』だよ。それでね、ママと喧嘩してお家飛び出しちゃったから帰れなくて困ってたの。今晩だけだから、ねっ、お願い、泊めてほしいの」
はあ? という感じで、開いた口が塞がらなかった……。
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