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「そうだよ。魔法って言っても初めて知る時は難解問題みたいものなんだよね……」
「なるほど。結構簡単そうに書いてあるけど、難しく見えてくるみたいだわ」
「何を言っているんだ! どう考えても難しすぎて細かすぎるだろ。……これは無理ゲーだ」
「無理ゲーじゃないよ! ……魔法というのは思いの力なんだよね」
そう言って、実際に右手の掌に小さな炎を生み出す。長塚はその思いの力というのを魔法に変換させているのだろう。
ここに書かれてあるのはそこからの魔法による修行の事である。俺は長塚にここまでの情報はまだ、聞いていなかった。
「おい、これマジでやるのかよ。習得するのに何日かかるのか分からねぇぞ、これ……」
「本当よね。私には時間が無い。時が動いている今しかここから抜け出すことしかできない」
時坂の目つきが変わる。本当に魔法を覚えるつもりらしい。
「もしかすると、魔法に何かヒントを得られるかもしれないじゃない」
「まあ、俺的には転移的みたいな時空移動できる魔法さえ覚えることができれば元の世界に戻れるんだけどな……」
「……あ、いい忘れていたけど、そう言った魔法って相当難しくて長い時間がかかるんだけど、それなりの代償を持っていかれるよ」
「何の代償だ?」
「それは聞かない方が身のためだよ。それは恐ろしくて人間ではなくなるって事……」
そう言って時坂は一冊の古い書物を俺の方に引き渡す。
「何が問題なのかを把握しなければそう言った危険な魔法に手を出してしまう。知るためにはそれを感じ、覚え、全ての五感で感じることが大事なんだよ」
実際にその書物は魔法書であり、禁忌魔法と呼ばれている魔法が書いてあるものだった。その代償も詳しく書かれており、俺は吐きそうになり、目眩して倒れそうになった。
「……これでわかったでしょ?」
「ああ、なんとなくな……」
そう言いながら長塚の方を見ていると、長塚は手を伸ばして俺から本を預かると、棚にしまった。……いやだな、痛みって言うのは。
× × ×
俺と時坂は何とか魔法の第一歩である小さなものを高さは低いが一、二センチほど宙に浮かすことができた。
なんだか、自分が魔法使いにでもなったかのような気分で、力を使った後は、疲労感が思ったよりも増していた。
たったこれだけの事で自分の体力が奪われていること自体に情けなくなった。時坂も同じように疲れてはいるようだが、俺みたいに顔に出さないが、体は正直であり、悲鳴を上げていた。これ以上進めると、やばい。
「ふぅ……。意外と体がきついわね……」
額から流れる汗を拭きとりながら片目をつぶる時坂。長塚がふふふ、と微笑した。
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