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一方で、大人びた
「それっていわゆるテレパシーって事でしょ。人の感情を頭の中で呼んでいたんでしょ?」
そう指摘されて面白くなかったのか、長塚は舌打ちをして口を開く。
「なんだ、知っていたんだ。そ、今のはテレパシーという魔法。そして、私を中心として魔力を持たない者でも年和をすることができるの」
そう言って俺の方をちらっと見る。
『少し話してみて……』
長塚の声が俺の頭の中に入ってきた。彼女は口を一切開いていない。俺も、見様見真似で頭の中で会話をしてみる。
『時坂、聞こえているか?』
『聞こえているわよ。でも、驚いたわ。こんな事が現実になるなんて……こんなの小説でしか読んだことが無いから……』
……怖え、時坂の声がマジで聞こえる。
『桐谷君、あなたの考えは全て聞こえているわよ』
と、時坂は俺を睨みつけじっと見つめてくる。これはこれで言葉にしないだけで怖い。
これは自分の考えまでもが伝わるらしい。テストなどの不正の時には大いに役立つ便利な魔法である。
『俺、ちょっと二階の本屋で欲しい本が無いか買ってくるわ』
財布を手に持って、カフェオレは置いたまま店を出た。
× × ×
駅の構内の一階から二階まではたったの十秒でたどり着くぐらいの距離だ。二階のフロアには勉強室と本屋と図書館が一体感となっている。
実際の理由としては、今、あの場に俺がいたとしても気まず感がプンプン臭っている。似ているようで似ていない彼女たちが何を話すのかっていうのも意外と面白いと思ったからである。女の話ってどういうのだろうか。
だが、本を買いに行くというのは本当であり、欲しい本が発売日からちょうど二日後に入荷しているとこの世界で知った知識である。なんとも不便なことだろうか。電子書籍というのではすぐに販売していない。
自分の眼鏡で検索をしても、この時代のネットワークとセキュリティーが合致するのにはまだ、時間がかかりそうであり、アップデートに一ヶ月以上はかかりそうだ。
時間は長い。
本棚の三段目にある左からその本を探し始める。この時代の有名な推理小説を手にすると、レジカウンターに持っていき、支払いを済ませる。
店内はオレンジ色のライトと、黒の紙壁と木造の三色がより良くマッチングしている。居心地よさと静かさを表現しているのだろう。
お金はこの時代の家族に月のお小遣い、一万円を受け取り何とかやりくりをしている。
× × ×
「で、何の本を買ってきたの?」
二階の本屋から帰ってきた俺を待ちかねていたように俺が手に持っていた茶封筒を奪い取った。
そして、俺が開封するよりも先に、袋を開け中身を取り出す。自分で買ったのだから本の題名は分かっているが、買った本人から巻き上げるだろうか。
「なるほど、こんな本を読むんだ……」
長塚は関心しながら鼻で笑う。
「悪いかよ……」
俺は不服そうに冷めたカフェオレを飲みながらいつになれば返してくれるのか、時坂の行動を見守っていた。
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